白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

大腸内視鏡検査を受けたのだ。

某月某日。

年に一度の健康診断において、特に異常無しとの診断を受けた私は即座に会場である市民会館から職場へと帰還、仕事場へと戻る前に一度トイレで用を足しておこうと思い、事務所の脇にある男性用トイレ(弊社の男性用トイレは何故か仕事場の外に配置されている。女性用トイレは仕事場内にあるのに。なんだその男女差別は)の洋式便座へと腰掛け、排便を終え、備え付けのトイレットペーパーで尻を拭いたところ、大量の血が付着していることに気が付いた。気が付く、という程度ではない。べったりと鮮血が染み込んでいる。立ち上がり、便器の中を確認すると、はっきりと血で真っ赤に染まっている。なんとも宜しくない。

実のところ、トイレで排便をしたつもりが、何故か肛門から血を噴き出していた……という事態は、過去にも何度か経験していた。だが、その度に、「恐らくは痔によるものだろう」「以前から肛門のあたりがグジュグジュになっている感覚があったし」「なんなら痛かったし」「そうだろう、きっとそうに違いない」と医学的根拠も何もないままに決めつけて、見て見ぬふりをして過ごしていたのである。しかし、健康診断を終えたばかりで健康に対する意識が向上していたこと、週末で本日さえ乗り切れられれば明日から休みに入れる状況だったことが作用したのか、この日は「遂に現実に立ち向かわねばならぬ日が来た」という気持ちで奮い立っていた。いいからとっととパンツを履け。

便器内の惨憺たる様を写真に収め、事務所へ直行。「下血しているので病院に行って来てもいいですか」と副社長に直談判し、先程の写真をまざまざと見せつけたところ「これはちょっと出血が多いように見える」「行ってきた方が良いだろう」と判断され、そのまま仕事場へは戻らずに病院に向かうこととなった。理解が早い。とはいえ、闇雲に出発しても埒が明かない。まずは向かうべき病院を決めなくては。しかし、そもそも下血の相談をすべき病院が何処のなんという科になるのか、さっぱり見当もつかない。そこで、引き続き副社長に相談したところ「行きつけの病院に相談したら良いのではないか」との助言を頂戴し、その意見に乗じることにした。行きつけの循環器内科の先生に電話を掛けたところ、自宅の目と鼻の先にある消化器内科を紹介される。日常的に利用していない施設だったためにまったく意識から外れていたが、そういえば近所に病院があったのだ。すっかり忘れていた。時刻は午前十一時を回ったところ。正午を過ぎると午前の診察が終わってしまう。躊躇している暇はない。私はすぐさま車に乗り込み、くだんの消化器内科へと向かった。

しばらくして到着。自動ドアを抜け、中へ飛び込む。副社長から「人気の病院だから混んでいるかもしれない」との情報を得ていたが、入って直ぐに目に入る待合室は閑散としていた。お昼時だったことが功を奏したのかもしれない。受付で診察券と保険証と渡し(数年前にインフルエンザ予防の注射を受けていたのだ)、代わりに渡された問診票を記入する。全ての項目を埋め、問診票を返却すると、すぐさま私の名前が呼ばれた。あまりにも早かったので、一瞬「自分の名前を呼ばれたような気がしたけれど、こんなに早いわけがないから、きっと違う人が呼ばれたのだろう」と勘違いしてしまった。先入観は認識を揺さぶる。

診察室に入ると、中では四十代ぐらいの若い医者とベテラン風の看護師が待ち構えていた。絶妙なバランス感。先程の血濡れた便器の写真を見せながら今の状態について説明すると、「写真で見たところ、かなり鮮やかな血なので、おそらくは痔ではないかと思う。とはいえ、三十代での大腸ガンになる例も有るので、ここは念のために内視鏡検査を受けられてはどうだろうか?」と提案される。私としても、このまま「おそらく」「きっと」「もしかしたら」「多分に」などという言葉だけを拠り所にした曖昧模糊な状態のままでいるのは宜しくないと既に結論付けていたので、その場で「やります」と即決。そこには普段の優柔不断な私はいなかった。第三者から見た、その姿はきっと凛々しく映ったことだろう。尻から血が噴き出しているけれど。

内視鏡検査とは、いわゆる“胃カメラ”である。先端にカメラのついた内視鏡を肛門から挿入し、消化器官内部を検査する。初めての経験に少なからず心が踊る私。しかし、これが「受けるぞ!」と決意したからといって、そう易々と受けられるものではないらしい。まずは検査を受ける日取りを決めなくてはならない。その病院では、毎週火曜・水曜・土曜に内視鏡検査を行っていて、今日から一週間以内はいつでも受けられる(予約が空いている)とのこと。一応、事情が事情なので、平日に有給を消化して検査を受けたとしてもあーだこーだ愚痴られはしないだろうが、そこはイチ社会人として仕事への影響を考慮し、最も近々の土曜にあたる翌日に受けることにした。思い立ったが吉日である。それでは、ということで別室へ通され、そこで具体的な説明を聞かされることになった。どうやら内視鏡検査を受けるには、幾つかの準備が必要らしい。

以下、説明されたこと。

今日の昼と夜の食事は病院が用意した【大腸検査食】を食べること。

午後七時以降は食事を取らないこと。

食後に薬を飲むこと。

就寝前にも薬を飲むこと(本来なら検査二日前から飲まないといけないらしい)。

当日は午前九時までに来院すること。

 その他諸々の説明を受けた後で、何かが入っているビニール袋を渡される。見ると、お風呂の入浴剤セットぐらいの、ちょっとしたサイズの箱が入っている。先程、説明を受けたばかりの【大腸検査食】である。箱に書かれている文言によると、大腸検査の前日に食事制限する人のために開発された、消化に配慮した食事セット……とのこと。中身は、昼食用のゼリーミール(2パック)とビスコ、夕食用の煮込みハンバーグと白粥の各レトルトパウチ。想像していたよりも豊潤なラインナップに、少しだけ気持ちが盛り上がる。全ての説明を受け、診察料を支払い、処方箋片手に近場の薬局へ。しばらく待たされた後、食後に飲む薬と就寝前に飲む薬を受け取る。効能効果が書かれた説明書によると、どうやら食後に飲む薬は胃腸薬、就寝前に飲む薬は下剤らしい。

先述の通り、この病院から自宅までは目と鼻の先にあるため、一時帰宅することに。午後一時を過ぎるころだったので、早速、病院で受け取った大腸検査食を戴く。昼食用のゼリーミールは某10秒チャージのようなチューブ状の容器に入っていて、口で直に吸い込んで食べられるようになっていた。一気に吸い取ってしまうと確実に後になって物足りなくなるだろうことが容易に想像できたので、ちょっとずつちょっとずつゆっくりと味わう。リンゴ味でなかなか美味しいが、どう考えても昼食には物足りない。あっという間に二本分を飲み干してしまった。続いて、ビスコを食べる。病院で薦められている食事の中に、子ども向けのお菓子が含まれているという状態がなんだか可笑しい。人差し指の第一関節ぐらいの幅のビスコが四枚ほど入っていた。これまた美味しいが、やはり物足りない。薬を飲み、少し横になってから、会社へ戻る。同僚たちに「内視鏡検査を受けることになった」と話し、ちょっとだけ場を盛り上げる。

終業後、寄り道もせずに真っ直ぐ帰宅。午後七時を過ぎると何も食べられなくなってしまうので、うかうかしている余裕はない。帰宅後、すぐさま鍋に水を張り、コンロに火を入れる。沸騰し始めたところで、煮込みハンバーグと白粥がそれぞれ入っているレトルトパウチを放り込む。五分ほど経ったところで取り出し、更に盛り付ける。昼食用のゼリーに比べれば、いくらか食事らしい雰囲気を漂わせているが、これも明らかに量が少ない。小さめのスプーンで大事に食べる。白粥はちょっとずつ掬って、舌の先に貼り付けるようにしながら食べる。かき込むなんてことは出来ない。下手すると一分以内に食べ終えてしまう。煮込みハンバーグはハンバーグや添えつけの野菜を削るようにしながら食べる。食べながら、ふと「今は一時的なものとしてこの程度の食事でも我慢できるが、遠くない将来、身体を壊したときに食事を制限しなければならない状態になってしまったら……」と、やや素晴らしくない未来について想像し、今後も健康で有り続けなくてはと心の中で固く誓う。食えなくなるよりはマシだろうが。

等々と思いながらも、この日はさほど空腹感を覚えることなく、平常通りに就寝。

明けて土曜日。午前七時半ごろに目を覚ます。顔を洗い、髭を剃り、歯を磨く。食事は勿論のこと、父から「水分は取らない方が良い」とアドバイスを受けていたので、水も飲まずに出発の準備を整える。病院で貰ったプリントに「動きやすい格好で起こしください」との忠告が記されていたので、シンプルなジャージに着替える。見た目だけなら、朝から子どもの運動会に張り切っているお父さんのようである。その他、タブレット、本、充電器など、時間潰しの道具を用意し、鞄に詰め込む……が、結果的にこれらはまったく必要無かった。もしも次回があるとすれば、スマホだけを用意するだろう。十分に事足りる。

午前八時半、自宅を徒歩で出発。五分後には病院に到着していた。改めて、その距離の近さを体感する。受付を済ませてしばし待機。待合室のテレビで『チコちゃんに叱られる!』が流れていたので、ぼんやりと横目で眺める。「一本の鉛筆を消費するには何文字書けばいいのか?」という検証を行っていた。しばらくすると、待合室から更に奥の血圧計などが置かれているフロアの方で名前を呼ばれた……気がした。どうも不明瞭だったので、確信を持たないままなんとなく声のしたような気がする方へと向かうと、担当の看護師らしき女性が私のことを探していた。此方で名乗り出ると、そのままフロアの脇のパーテーションで仕切られている空間へと連れられる。そこは居酒屋の店先で席が空くのを待っている人のために用意された席、ぐらいの広さの空間だった。長時間を過ごすには些か窮屈に感じられたが、どうやらここで検査の準備をしなくてはならないようだ。複数の椅子と机が配置され、既に四十代~五十代ぐらいの男女が座っていた。どうやら私と同様に大腸内視鏡検査を受ける方々らしい。

私が椅子に腰掛けると、すぐさま看護師による説明が開始された。机の上にはビニール素材の容器に入れられた2リットル分の下剤と透明の水筒に入れられた1リットル分の白湯。これらの液体を、じっくりと時間をかけて飲まなくてはならない、とのこと。スペースの前にはドアがあり、奥には荷物を入れるためのロッカーが六ケ所、そして洋式トイレの個室が三か所設置されていた。もよおしてきたら、すぐさま中に入れるように、それぞれに専用のトイレが割り当てられている。私のトイレは一番左端にあった。真ん中よりは端の方が良い。三度目の排便時には、必ずトイレの中にあるブザーを押して看護師を呼び出し、便の状態を確認してもらわなくてはならない、とも説明された。検査のためとはいえ、見ず知らずの他人の便を何度も何度も見なくてはならないとは、看護師の仕事も大変である。まったく便の欠片も見えない水のような状態になれば、検査を受けられるのだそうだ。

午前九時半ごろ、下剤を飲み始める。決して不快ではない味が舌の奥へと染み込んでいく。濃い目のスポーツドリンクのような味がする。朝から何も飲まず食わずの身には有り難い味付けだ。ただ、下剤と白湯を飲むペースが明確に指示されているため、何も考えずにグビグビと飲むことは出来ない。時計とにらめっこしながら、じっくりと飲み続ける。まずは下剤を1リットル飲む。病院が用意したコップ一杯が250ミリリットルに相当するので、これで四杯分ほど飲む。無事に飲み終わると、今度は白湯を500ミリリットル飲む。今度は二杯分だ。下剤を白湯で薄めてしまうと効果が薄れるので、迂闊に混ぜて飲まないようにしっかりと切り分けなくてはならない。白湯を飲み終えれば、再び下剤を500ミリリットル。そしてまた白湯を250ミリリットル……と、下剤を白湯を交互に飲み続ける。指定された時間に合わせて飲み続けるためか、だんだんと時間の感覚が分からなくなっていく。意識しているのは常に目前の目標で、蓄積されていく時間のことなんてまったく考えられない。一本一本の電柱を辿るように、じっくりとペースを乱さず、進むのだ。

下剤を飲み始めて三十分ほど経過したところで、一度目のトライ。まだまだ普通の便が排出されているのを見届ける。戻って、また下剤を飲み始める。すると、すぐさま二度目のトライへ。この時点で、既に便が水のようになり始める。だが、まだ固形の存在も確認できる。戻って、更に下剤を飲み続ける。またもすぐさま便意の気配を感じるが、三度目のトライからは看護師を呼ぶことになるので、少しだけ我慢する。どうせなら、余計な手を煩わせずに、早々に合格に近いラインを叩き出したい。が、健闘も空しく、そそくさと三度目のトライ。もう便の姿は見えず、便器の中は黄色い液体で満たされている。正解の状態が想像できないので、「これでもう行けるのでは?」と己惚れるも、看護師からの合格は得られず。便で己惚れる、という謎の感覚に陥っている。狂ったのかもしれない。

その後の記憶は明確ではない。なにせ「下剤を飲む→白湯を飲む→便を出す→看護師チェック」の繰り返しなので、記憶の取っ掛かりとなる要素がまったくないのである。今や、覚えているのは、退屈しのぎのために配置されたであろう小さなテレビで『メレンゲの気持ち』が放送されていて、あの「まいうーの伝道師」こと石塚英彦がけっこうマジメなロケをやっている姿が映し出されていたことに驚いたことぐらいである。あの石塚に冗談を言わせないロケなんて、羽をもがれた鳥のようなものなのに……。気が付くと、時計の針は午後一時を回っていた。いつの間にか一緒に下剤を飲み始めた筈の男女は既に合格を貰っており、開始三十分後ぐらいに遅れてやってきた妙齢の女性も合格していた。残されたのは私だけという、最も恐れていた事態である。……よもや、三十代も半ばという年齢で、給食を食べきれないまま昼休みに突入してしまった小学生のような経験を味わうことになろうとは。しかし、午後一時半を過ぎるころ、やっと私も合格を頂く。確か、九回目のトライであったように思う。

検査の用意が無事に整ったところで、検査着に着替える。検査着は先程のロッカーの中に準備されている。上は浴衣の仕様で、腰のあたりをヒモで結べるようになっている。その様はカプセルホテルの館内着を思わせ、ちょっとだけ懐かしい気持ちにさせられた。新型コロナの件で、行けなくなってしまって久しいが……。その下に、お尻のあたりに穴が空いているパンツを履く。私のような大柄な人間でも容易に履くことが出来る、真の意味でのフリーサイズである。検査着に着替えたら、別室に移動して点滴を受ける。点滴の理由について何かしらかの説明を受けたような気もするが、当時は何度もトイレに行った疲労感からか説明の内容をまるで覚えていない。後になって調べたところ、どうやら脱水予防のための点滴らしい。点滴の針が刺さった状態で、先程のスペースへ戻ると、先の三人が待機している。こうして、ようやく全員の検査の準備が整ったのであった。

まず、妙齢の女性が呼び出される。看護師に連れられて、処置室の中へ。扉の隙間から見えた処置室の中は、なんだか寒々しい空気に包まれていた。不穏である。数十分後、中から女性が出てきたので、その姿を横目に見る。ストレッチャーに寝かされている。何があったというのか。歩行もままならぬほどに体力を消耗するような行為が中で行われていたのか。途端に戦慄が走る。少しの間を置いて、次の人間の名前が呼び出される。私の名前だ。思わず「え?」と驚きの声をあげてしまう。どうやら便の合格順と検査の順番は無関係らしい。一度、排便を済ませ、大腸をより綺麗な状態にしたところで、処置室へ。

和気藹々とした雰囲気に包まれていた待合室に対して、処置室の中はやはり寒々しい空気に包まれていた。血の色が焼き付いた目のちらつきを抑えるための緑色の壁が、場の緊張感を異常に高めている。否、緊張感が高まっているのは私だけで、医者も看護師もごくごく当たり前の作業として進行するだけなのだろうが。まずは処置台の上に仰向けになって寝かされる。そのまま横へ身体を向けて、両膝をグッと曲げる。気分はなんだか胎児の様で、不思議と心が落ち着く。これから他人に肛門をまさぐられるというのに。そんな最中、看護師に「痛み止めの注射を打ちます」と言われ、途端に緊張が走る……が、その注射は点滴の管に打ち込まれるものだったので、安心する。点滴を受けていれば、このように注射を打つことが出来るのか……と、感心した束の間、三本もの注射が打ち込まれたので再び狼狽える。痛み止めの注射を三本も打ち込まなくてはならないような大作業なのか。

「それでは、まずは触診で状態を確認しますからね」。そういうと、医者が肛門に指を突っ込み始めた。広げられる肛門に、侵入する指。さようなら未体験の私、こんにちは新感覚の私。とはいえ想像していたような違和感はない。排便時の肛門が膨らむような感覚が続くだけで、痛みも辛さも感じない。そのまま肛門から内視鏡が入れられる。どのような機器がどのような仕組みで入ってきているのか、医者に背中を向けている状態なので、まるで確認することが出来ない。ただ、延々と排便時の感覚だけが、肛門のあたりに残り続けている。

どれほどの時間が経過したのだろうか。気が付くと検査は終了していた。医者が「ポリープが二か所ほど見つかったので、除去しておきました」と話しているのを聞きながら、処置室の外へ歩み出る。そのままベッドルームへと誘われ、点滴が終わるまで横になる。その横で、看護師がなんやかんやと話していた気がするが、どのような話をしていたのかはまったく覚えていない。ただ、彼女の手に、なんとなく見覚えのあるビニール袋が提げられているのが見えた。それはまさしく大腸検査食と同じ形状の箱であった。え? まだメシ食っちゃダメなの?

点滴を終え、ロッカールームで服を着替える。荷物をまとめて外に出ると、先程のフロアにまだ中年男性が一人残されていたので、軽くお辞儀をする。健闘を祈る。受付で検査代とポリープ除去の手術台を支払い(29,000円ほど)、病院の外へ……出ようと思うも、一度立ち止まり、先程渡された食事の説明を改めて看護師から伺う。当日の昼と夜、それから翌朝の食事は、お腹に負担をかけない専用の食事を取る必要があるとのこと。また、翌日の食事についても、油分や繊維質を多く含んだ食事を避け、あくまでも胃腸に優しい食事を取るように、と伝えられた。これで節制生活から解放されると思い込んでいた私は、すっかり意気消沈して、とぼとぼと自宅へ向かったのであった。

午後三時、帰宅。遅すぎる昼食として、先程の病院で貰った食事を取る。第一食はコラーゲンスープ。やはりレトルトパウチに包まれたスープを温めて、ゆっくりと時間を掛けて頂戴する。味はイマイチ。お世辞にも美味いとはいえない。食後、空腹と疲労感で何もやりたくなかったので、ベッドの上で横になる。いつの間にか眠ってしまっていたようで、気が付くと、外はすっかり暗闇に包まれていた。午後九時、第二食の白粥を食べる。前日、煮込みハンバーグと一緒に食べた、あの白粥である。おかず不在なので、より物足りない。ポリープ除去の手術を行っているので、風呂に入ることも出来ない。何も満たされないまま、しかし夜更かし癖はそのままに、『オードリーのオールナイトニッポン』を聴きながら就寝。

明けて日曜日。午前九時半ごろに目覚める。第三食である鯛粥を食べる。名前は美味しそうだが、塩気がまるで感じられない。魚の存在を舌で感じることは出来るが、味がしない。もうちょっと頑張ってくれてもいいのではないかと思う。午前十時半、とある用事で外出。空腹と体力低下で体調が宜しくない。午後一時、用事を終える。家へ帰る途中、うどん屋へ立ち寄って、かけうどん(中)を食べる。うどんは消化的に有効らしい。無論、天麩羅や揚げ玉の類は加えず、ネギを振りかけただけのシンプルなうどんだ。久々のしっかりとした塩分が有り難かった。帰宅後、また横になって、夕方まで眠り続ける。午後六時、目覚める。夕飯にカップうどんを食べる。油揚げが入っていたが、翌日の夜ならば許してもらえるだろう……と、勝手に決めつけてしまうことにした。

此方からは以上です。ちなみに、ポリープの検査結果は月末に明かされるらしいぞ。こうご期待。何を。