令和時代のお笑い公論

笑いの粗熱が冷めるまで

矢野顕子からすべてのミュージシャンへ『音楽はおくりもの』


人は一人では生きていけない。とはいえ、誰もが誰かに頼れるような人生を送ってきたわけじゃない。生まれてから死ぬまで一人ぼっちな人間なんて、きっとこの世にはいないだろうけれど、一人で生きるしかない時間は存在する。そんなときに、一人でいることが辛くなってしまったときに、寄り添ってくれるものがいる。それは人それぞれに違っているだろう。それは漫画かもしれない。それはゲームかもしれない。それは映画かもしれない。それそのものは人ではない。でも、それは確かに、誰かの手によって作られた、誰かからのおくりものだ。それは、運命的にもあなたの元へと届けられた、誰かからのおくりものなのだ。矢野顕子の最新作『音楽はおくりもの』は、音楽を必要とする人たちに寄り添う音楽家の覚悟を歌った曲である。優しい歌声とメロディの中でさり気なく紡がれる確固たる意思。「低く 見え隠れしてる 光さえ 見逃さず さがし出す」という部分には、執念すら感じられる。界隈の隅っこで雑文を書き殴っている身としては、襟を正さずにはいられない一曲である。こんなことを軽やかに歌われたら、たまらんぜ。

ダウ90000第2回本公演「旅館じゃないんだからさ」

質問箱でオススメされた、ダウ90000の舞台を配信アーカイブで観たよ。いやー、何処の誰だか知らないけれど、教えてくれてありがとうって感じだな。メチャメチャ面白かったよ。メチャメチャ面白かったし、なんか分かるなーって気持ちになったわ。そういう気持ちになったから、今まさに文章を打ち込んでるんだけどさ。

何が分かるかって、あの映画鑑賞という名の体験を大事にしている感じね。そうなんだよ、映画を観るっていうことは、ただ作品を鑑賞するだけじゃなくて、それを観た瞬間の自分、或いは、その周りの色んなことが記憶の中に刻み込まれていて、それを観るたびにブワーッてフラッシュバックする感じなんだよな。例えば、親に連れて行ってもらった映画館とか、逆に一人で行った映画館とか、何もない日にたまたま観てなかった映画のDVDを家で観たときに窓から挿し込んだ夕陽とか、ちょっと気になるあの子と車で出かけた先で観た映画の後に食べた中華料理とか、そういうのが全部、映画の記憶として刻み込まれてるんだよな。その思い出の愛おしさっていうかさ、儚さっていうかさ、そういうのがグッて凝縮してた感じだ。

物語自体は、いわゆるレンタルビデオで働いている三人の男女と、三人となんらかの関わりを持つ人々が、店内であーだこーだと繰り広げる恋愛模様って感じなんだけれど、なんかこう、一貫して「映画に刻み込まれた記憶」みたいなのがテーマに組み込まれてるのよね。観たはずなのに忘れちゃった映画とか、長期間延滞しちゃったビデオとか、更新されていない会員カードのデータとか、そういうのが物語の重要な鍵になってて、それは登場人物たちの過去の記憶と直結しちゃってるのよね。

ほら、ちょっと前にさ、『かまいたちの知らんけど』の特別編でさ、濱家の思い出が詰まったスーパーマーケットが閉店するっていって、番組でロケに行った回があったじゃない。そういうことなんだよ。そこには思い出が刻み込まれていて、触れた途端に記憶が蘇ってくるんだよ。でも、それはあくまでも記憶の中だけで、過ぎ去った時間はいつまでも残ってはくれないのよねえ。スーパーは閉店しちゃうし、カードは更新しないといけない。それは凄く切ないことだけれど、でも、同時にこれから先の未来に向かうために乗り越えなきゃならないことなんだよな。だからこそ、あのラストカットなんだよ。あのラストはだからこそ特別で、彼女にとって、あの映画体験は特別なものになったんだよ。いやーっ、いい舞台だったな。

なんかコレ書いてたら、吉田拓郎の『流星』を思い出しちゃったよ。

流れる星は今がきれいで ただそれだけに悲しくて

流れる星はかすかに消える 思い出なんか残さないで

こういうことを繰り返しながら生きていくんだろうなあ。

この内容でソフト化されなかったら嘘だと思うので、気になる人はいずれ出るだろうDVDを見てね。そして、この公演もまた、あなたにとっての特別な体験になることを祈ってるぞ!

「キングオブコント2021」雑感。

いつもお世話になっております。すが家しのぶです。

次号の『読む余熱』が「キングオブコント2021特集」ということなんですけど、今回もそちらの方に感想文を寄稿する予定になっております。「M-1グランプリ2020」特集における反響の薄さを反省し、今回は感想文メインの記事となっております。感想文の中身の薄さを日記形式で乗り切ろうという姑息な手段はもう取らないつもりです。……つもりです(こいつまたやるな?)。

というわけで、今回の大会についてもブログではネタの感想を書くことは出来ないのですが、まったく触れないというのも寂しいので、当初は記事の中で公開する予定だった雑感をこちらで公開したいと思います。「こういうのを書いたら、ちょっと文章にまとまりがなくなってしまうかもしれないな」と思って削った部分なので、ネタ感想文を期待されている方には物足りない内容かもしれませんが、まあ、箸休めみたいなものだと思って読んでいただけますと幸いです。

それではサクッと。

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「キングオブコント2021」優勝者決定!

蛙亭(461点)
ジェラードン(462点)
男性ブランコ(472点)
うるとらブギーズ(460点)
ニッポンの社長(463点)
そいつどいつ(456点)
ニューヨーク(453点)
ザ・マミィ(476点)
空気階段(486点)
マヂカルラブリー(455点)

男性ブランコ(472点+463点=935点)
ザ・マミィ(476点+459点=935点)
空気階段(486点+474点=960点)

いつもお世話になっております。すが家しのぶです。有り難いことに、今回の大会について文章を書くお仕事をいただいているので、あまり感想を書けないのですが、とても充実感の残る大会でしたね。どのユニットも面白かったですし、審査員のコメントも痒い所に手が届くものばかりでしたし、本当に最高でした。個人的には男性ブランコの面白さを知ることが出来たのは大きな収穫でしたね。味わいがとんでもない。ああいうコントが評価される大会だったことも嬉しかったです。今は酒を食らって酔っ払っているので何も言えませんが、とりあえず、ありがとう!メガトンパンチマン!