白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

『うるとらブギーズ単独ライブ「ultra very special boogie」』(2020年3月18日)

2019年12月2日にルミネtheよしもとで開催されたライブの模様を収録。

うるとらブギーズは熊本出身の八木崇と静岡出身の佐々木崇博によって2009年に結成されたお笑いコンビである。東京NSC10期生にあたり、同期には、オリエンタルラジオトレンディエンジェル、はんにゃ、フルーツポンチ、インポッシブルなどがいる。それぞれ別々のコンビとして活動していたが、「ジャルジャルがやるようなネタが理想」と意見が一致し、結成に至った。

コンビ結成十年目を迎えた2019年、日本一のコント王者を決める『キングオブコント』決勝戦に初進出。トップバッターでありながら、ファーストステージで披露した『催眠術』で観客と審査員の心をがっちり鷲掴みにして、十組中二位の高得点を叩き出す。続くファイナルステージでは『サッカー実況解説』を披露し、三組中一位の高得点をマーク。しかし、ファーストステージにおいて、史上最高点(※五人審査制を採用した第八回大会以降)を記録したどぶろっくとの距離は縮められず、総合2位という結果に終わってしまう。地味な彼らが地道に築き上げてきた優勝への架け橋は、大きなイチモツによって塞がれたのであった。

本作には、そんなうるとらブギーズのベストネタが10本収録されている。その中には、相手の話すことを同時に喋ってしまう奇病に悩まされている男が催眠術での治療を願い出る『催眠術』、サッカーの実況アナウンサーと解説者が試合に集中せずについつい雑談に興じてしまう『サッカー実況解説』も含まれている。このような場合、これら二本の勝負ネタが強く目立ってしまい、他のコントがあまり記憶に残らない……という事態になりがちだが、なかなかどうして、いずれのネタもしっかりと面白かった。

視聴前は『催眠術』のイメージが強かったため、他のネタも同様の変化球スタイルを取っているものが多いのではないかという先入観を抱いていたのだが、実際に見てみると、その多くが骨太でストレートなコントだったので、些か驚いてしまった。例えば、時限爆弾を前に優柔不断な二人の刑事がまごまごし続ける『優柔不断』、上京してミュージシャンになりたいという息子の歌がただただ恥ずかしすぎて悶え続ける父親を描いた『息子の上京』、怪人・Mr.ナゾーに拉致された刑事が「なぞなぞに答えられなければ天井が落下、答えられれば解放する」というゲームに巻き込まれるも肝心のマイクの調子が悪い『Mr.ナゾー』のように、いずれも余計な笑いを挟み込まず、あくまでも発想の面白味だけで突っ切っている。そこには一切の無駄がない。この方法論は、まさにコンビ結成のきっかけとなったジャルジャルのスタイルと、見事に一致している。ブレずに愚直に目標を追い求めている証左である。『催眠術』の印象が強くて、視聴をためらっている人ほど、楽しめる作品になっているかもしれない。

それらの中でも、バツグンに面白かったのが『迷子センター』というコント。聞くところによると、2018年の『キングオブコント』準決勝において、うるとらブギーズは『迷子センター』を既に披露していたらしい。とんでもない話である。以前、とある番組で、ゾフィーの上田が「準決勝初進出のコンビはどんなに面白くても様子見される傾向がある」という話をしていたが、彼らもまたその煽りを食らってしまったのだろう。そうとしか思えない。それほどに面白いコントだった。このコントが純度そのままに地上波で披露されなかったことは、コント界において大きな損失である。大袈裟ではない。本気で言っている。

どういうネタなのか、ネタバレになってしまうと面白さが半減してしまうので、ここでは具体的には書けないが、敢えて一言述べるとすれば、「前半のやり取りがフリになって後半の展開に活かされるコントは既に数多く存在するが、その多くは前半のやり取りに新たな角度を加えることで新しい展開や発見に気付かせるように努めているのに対し、『迷子センター』は前半の素材をそのままに後半に持ち込んでいるにも関わらず大爆笑を巻き起こしている。こんな構成は見たことがない」とだけ書いておく。……ほぼほぼ言いたいことを言ってしまっているような気がするが、あまり気にせずに実際の公演の映像を観ていただけると幸いである。

これらの本編に加えて、特典映像として、うるとらブギーズの二人がキングオブコント優勝祈願のためバンジージャンプに挑戦する「KOC優勝祈願! 日本一のバンジージャンプに挑戦!!」、うるとらブギーズが単独ライブの幕間で流す予定のキングオブコントに関する映像の添削を同期であるGAGに依頼する「うるとらブギーズ×GAG」を収録。前者は、何故かバンジージャンプにノリノリの八木に対して、終始嫌がり続けている佐々木の対比が面白いロケ映像になっている。ところが、いざバンジージャンプ台を目の当たりにして、八木の態度が一変。その様がなんともアホらしくて、面白かった。後者は魅力的な設定に対してあまり実の無い映像になっていて、やや薄味。もうちょっと五人のトークを楽しみたかったな……。

・本編【58分】
「催眠術」「プロポーズ」「優柔不断」「夢」「マリリン・モンローゲーム」「息子の主張」「Mr.ナゾー」「OneNight」「サッカー実況解説」「迷子センター」

・特典映像【40分】
「KOC優勝祈願! 日本一のバンジージャンプに挑戦!!」「うるとらブギーズ×GAG