白昼夢の視聴覚室

犬も食わない

すべての“コント”を愛する者たちへ示す道筋「偽りなきコントの世界」(岩崎う大)

キングオブコント2013」王者・かもめんたるのブレーンである岩崎う大による“コント”の本である。『甲子園が割れた日』『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』『笑い神 M-1、その純情と狂気』などの書籍を手掛けてきたノンフィクション作家、中村計がう大にインタビューを行い、それを元に執筆・再構成を行っている。

笑いへの目覚め、オーストラリア留学、NSCへの入学、WAGEとしての活動など、芸人・岩崎う大自身に関するエピソードも随所で語られているが、あくまでも主軸となっているのは歴代の「キングオブコント」決勝戦で披露された数々のコントに対する私見東京03の『旅行』がどれほど素晴らしかったか、うるとらブギーズの『催眠術』が如何に革新的だったか、ジャングルポケットの『エレベーター』はネタの内容以外に気になるところがあったが……などなど、作り手ならではの視点による着想・構成・裏方についての数々の感想は、コント愛好家にはたまらないものがあった。これからコントを作ろうと考えている若き芸人にとっての指南書にも成り得るだろう。

ただ、インタビューを元に構成されているため、目次に書かれているような魅力的な話があっさりと処理されていることも多く、それ故に、物足りなさを覚えることも少なくなかった。例えば、シーン4で語られているロッチやにゃんこスターについては、「岩崎う大が彼らのネタについて何を語るのだろう?」という期待が大きかったため、ちょっと肩透かしを食らったような感覚を覚えた。

本文ではまったく触れられなかった芸人も少なくなかったのも残念。例えば、歴代王者のバッファロー吾郎コロコロチキチキペッパーズ、ライスについてはまったく触れていないし、バナナマン、チョコレートプラネット、ザ・ギースなどの実力派についても語られていない。あくまで、岩崎う大の琴線に触れたコントが語られたのであろうことを思うと、仕方がないのかもしれないが……。

とはいえ、私が読後に抱いたこれら二つのネガティブな感情は、本書でのコントについての語りが本当に魅力的であったことの裏返しである。これらを払拭するためにも、第二弾、第三弾の刊行が待たれる。次は、飯塚悟志東京03)や上田航平ゾフィー)、塚本直毅ラブレターズ)などといったコントのクリエイターたちとの対談形式でやるのはどうだろう。よろしくお願いします。マジで。