映像ソフトがVHS(ビデオテープ)からDVD(ディスク)へと移り変わろうとしていた時代のことである。芸術家肌のコント師として注目され始めていたラーメンズが、自身初となるベスト盤をリリースした。タイトルは『Rahmens 0001 select』(2002年8月発売)。過去に開催された単独公演の中から、観客投票によって選ばれた10本のコントが収録されているものだった。興味深いのは、本作がラーメンズにとって初めてのDVDによる映像作品(『爆笑オンエアバトル ラーメンズ』のような番組のソフト化は除く)であり、本作のリリースからたった一ヶ月後、既にVHSとして販売されていた彼らの近年の単独公演をパッケージしたDVD-BOXがリリースされた点だ。つまり、この『Rahmens 0001 select』は単なるベスト盤ではなく、彼らについてあまり詳しくないVHS版未所有のお笑いファンでもDVD-BOXの内容に興味を持たせるための一種の釣り餌だったのである。この戦略にまんまと引っ掛かってしまった人間がいる。私である。明けて2003年の春、大学生になったばかりのウブな私は、偶然にも進学先のDVDショップで本作を発見し、これを興味本位で購入。速攻でラーメンズのコントにどっぷりとハマッてしまい、まんまと数日後には同じ店にDVD-BOXを買い求めてしまったのであった。サブスクリプション全盛とはいえ、少しずつ映像ソフトのメインがDVDからBlu-rayへと移り変わろうとしている昨今、たまに当時のことを思い出す。今、あの時のラーメンズと同じ戦略を、どの芸人が打って出たら成功するのだろう。シソンヌとかやってくれないかな(←シソンヌのBlu-rayのベスト盤が欲しいだけ)。