白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

沖縄旅行の記録(三日目・10月7日(土))

午前八時、起床。

身支度を済ませて、朝食ビュッフェの会場へ。今日はレンタカーを運転しない予定だったので、思い切って朝からオリオンビールを飲むことを決意する。朝からビールを飲むということは、その一日を捨てるということと同義である。ビールの苦みは、いわば背徳感の味だ。ジョッキで二杯ほど頂戴する。

※ビールの存在によって「おかず」から「つまみ」にメタモルフォーゼ

食後、部屋に戻る途中で、受付カウンターに立ち寄って宅配用の段ボール箱を購入する。昨夜、様々な店を巡って買い集めた土産物を、自宅に配送するためである。部屋に戻り、大量のちんすこうと紅芋タルトを、段ボール箱へと詰め込んでいく。もっとも大きいサイズの箱を購入したのだが、早くも全体の八割ほどが埋まってしまった。

午前十時四十分、事前に受付に連絡して待機してもらっていたタクシーに乗り込み、ホテルを出発。午前十一時、【タピック県総ひやごんスタジアム】に到着。香川県全県をホームタウンとするサッカーチーム「カマタマーレ讃岐」と、沖縄県那覇市をホームタウンとするサッカーチーム「FC琉球」の試合を、観戦するためにやってきた次第である。今回はドリンク飲み放題の指定席チケットを獲得していたので、ここでもビールやハイボールをしたたかに飲む。スタジアムの入り口付近に並び立つ屋台で購入したカレーを食べながら頂戴するビールがまた格別だ。

午前十二時五十分、スタジアムの中に入って指定された席に座る。のんびりと試合開始を待ち構えていると、少しずつ体調が悪くなっていることに気付く。どうやら原因は日差しである。今回の指定席は太陽光を遮るものが何もない席だったため、沖縄の強い日差しを真正面から受け止めることになり、露出していた顔と腕を日焼けしてしまったのである。結果、熱中症のような状態に。すぐさまソフトドリンクで水分を補給したものの、すっかり体調はグロッキー。もはやサッカーの試合どころではなかったのだが、FC琉球のマスコットである「ジンベーニョ」と沖縄のチアダンスチーム「琉球ボンバーズ」によるパフォーマンスを、下心を剥き出しにした目線で眺めることで、なんとか気を紛らわせる。性欲はすべてを超越する。

※女豹ならぬシーサーのポーズ。かわいい。

午後一時三十分、キックオフ。しばらくして太陽を隠す雲が発生し、体力も少し回復し始めたので、無理をしない程度に拍手でチームを応援……するも、結果はゼロ対イチで敗退。次の試合に期待である。スタジアムの外に出ると、先ほどの琉球ボンバーズがFC琉球のサポーターを見送っていたので、少し離れたところからこっそり様子をうかがう。メンバーと肩を組んで写真を撮影している中年男性に対してちょっとした嫉妬心を抱きながらも、そんな陽気な立ち回りを取ることのできない自らの自意識をしみじみと噛み締める。

気付けばサポーターの大半が帰路についていたので、自分もホテルへと戻ることに。スタジアムがある総合運動公園の入り口まで徒歩で移動し、国道沿いへと出ていく。行きのタクシーで、運転手に「スタジアムの外の道路に出たら、すぐにタクシーが捕まる」とアドバイスされていたので、しばらくタクシーが通るのを待つ。ところが、これがどうにもこうにも、まったく通る気配がない。そのうち、先ほどの雲が雨を降らし始めたので、しびれを切らして近郊のタクシー会社に電話を入れてみるのだが、こちらはこちらで電話がまったく繋がらない。ホテルまではとても歩いて帰ることの出来る距離ではない。絶望的状況下である。それでも諦めることなく、ネットで検索して引っかかったタクシー会社に電話を掛け続けていると、とあるタクシー会社にようやく繋がる。およそ五分後、タクシーが無事に到着。運転手に「二十分ほどタクシーを探していた」という話をすると、「運が良かったね!」と返答されてしまった。もしかして、沖縄県のタクシー事情はなかなかシビアなのだろうか。

午後五時、ホテルに帰還。少し休憩した後に、ホテルから歩いて十分ほどのところにある【アメリカンビレッジ】へ赴き、様々な店を散策して回る。アメリカの雰囲気を模しているという個性豊かな建物群は、眺めているだけでも楽しい。この頃には、すっかり体調も回復して、気分もご陽気である。ふと、那覇空港で買いそびれた【ポーたま】の店舗があったことを思い出し、買いに行く。六人ほど並んでいたが、ご陽気な酔っ払いはそんなことなど気にしない。少しく並び、「エビマヨネーズ」と「明太子マヨネーズ」を購入する。

午後七時、ホテルに戻って、夕食にしゃぶしゃぶを食べる。……つまり、ホテルに夕食が用意されていたにもかかわらず、ポーたまを買った次第である。計画性がまるで無い。しゃぶしゃぶはビュッフェ形式で、自分の取りたい具材を適当に集めることが出来るのだが、それとは別に用意されていた一品ものの料理が美味しくて、そればかり食べてしまった。酔っぱらっていたので、何を食べたのかは覚えていないが。夕食後、またしても【イオン北谷】へ。入浴時に身体を洗うためのボディタオルが欲しかったので、購入する。汚れた身体は石鹸のついたタオルでゴシゴシ洗ってナンボである。

午後九時、ホテルに戻って、ホテル内にあるマッサージ店【夢語】で施術を受ける。足、腰、背中、首などを、掌底でもってグイグイ押され、気持ちいいのかなんなのかよく分からなかったが、気が付けば眠っていたので、きっと気持ちよかったのだろう。施術は一時間ほどで終了。部屋に戻り、ポーたまを食べてから(我ながら、よく食べる)、風呂に入る。

午前零時半、就寝。