白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

沖縄旅行の記録(初日・10月5日(木))

午前七時起床。事前に購入しておいた菓子パンを朝食にする。少し多めに買い込んでしまったため、朝からお腹がいっぱいになってしまった。昨晩のうちにまとめた荷物を改めてチェックしたり、不必要な家電の電源を引っこ抜いたり、諸々の準備を済ませたところで、午前九時に自宅を出発する。途中、現地で観戦する予定の、サッカーの試合のチケットを発行するためにコンビニへと立ち寄る。落としてしまう危険性を思えば、現地に着いてから入手した方が良いような気もしたが、現物が手元にある安心感は捨てがたい。

午前十時、高松空港に到着。以前に訪れたときには存在していなかった立体駐車場の中に車を停める。荷物を手にして「さあ、行くぞ!」と意気込んでいたところに、乗り込む予定だった飛行機の遅延情報メールが送られてくる。午前十一時三十分発の飛行機が、午前十一時五十五分発に変更になるという。出鼻をくじかれたような感覚である。だからといって、車内でぐずぐず時間を浪費していても仕方がないので、ひとまず空港施設の中へ。お土産物のコーナーを眺めていると、私が愛してやまないタオル製造の会社「コンテックス(株)」による猪熊源一郎作品を使用したデザインのトラベルタオルが売られていたので、沖縄滞在時に会う予定の人物へのお土産として購入する。薄くて、吸水性が高くて、速乾性も高い優れものだ。

午前十一時十五分、保安検査場を通過。搭乗口の椅子に座ってぼんやりしていると、またしても遅延情報メールが。出発の時刻が更に遅れて午前十二時五分になるという。合計三十分以上の遅延を食らい、流石に精神的にくたびれる。とはいえ、何もすることが出来ないので、粛々とキャビンアテンダントに呼び出されるのを待ち続ける。正午に搭乗、予定の時刻に離陸。移動中、電子書籍施川ユウキの『オンノジ』や『鬱ごはん』を読んでいたら、乗り物酔いをしてしまった。到着前から心身ともにズタボロである。

午後二時十分、那覇空港に到着。空港施設内にあるポークたまごおにぎりの専門店【ポーたま】に立ち寄ることを計画していたのだが、店の前に長くて微動だにしない行列が出来ていたので断念。同じフロアの隅の方にある沖縄そばの店【琉風】で遅めの昼食を取る。ベースは和風だがラーメンのような濃厚さもある、懐かしいのに新鮮味のある不思議な味だった。美味しかった。

食後、移動の要であるレンタカーを借りるために、空港のバス停留所から発着している専用のシャトルバスに乗り込む。那覇空港の周辺には、たくさんのレンタカー屋が乱立しているため、様々なお店のシャトルバスがそこかしこに停車している。沖縄観光に車は必須ということなのだろう。バスでの移動中、車内のモニターでレンタカー契約時の保険について説明するVTRが流れていたのだが、その案内役を、沖縄県で活動しているVTuberの根間ういが担当していて、面食らう。それなりに知られた存在なのだろうと認識してはいたのだが、ここまでしっかり企業とコラボするほどの立場にある人物とは思ってもみなかった。窓の外を見ると、根間ういがプリントされたバスまで見つけてしまった。完全なる売れっ子である。

空港を出てから、およそ五分後に店舗へと到着。今回、利用するのはトヨタレンタカー。過去に沖縄旅行の経験がある両親から「契約には意外と時間を要する」と聞いていたので、どれほどのものかと身構えていたのだが、そもそも今回の旅行がANAのパックだったこともあってか、十分ほどでサクッと契約することが出来てしまった。早いに越したことはないが、いささか肩透かしである。借りた車はヤリス。私は車種に微塵も興味が無いので、とにかく小回りの利きそうな車を選んだ。事実、運転にはさほど困らなかったのだが、普段乗っている車よりも視点が低く、シフトレバーやサイドブレーキの位置も違っていたため、慣れるまでにけっこうなストレスを感じることになってしまった。

店の自販機で購入したさんぴん茶(ほぼジャスミンティー)を片手に、まずはベタな沖縄の観光地として【首里城】に向かう。狭くて長い道をカーナビに案内されながら、午後四時に到着。今回、有休を使って旅行に出かけたので、それほど人も来ていないだろうと高を括っていたのだが、到着してみるとたくさんの観光客でごった返していて、駐車場に車を停車してから、しばらく呆然としてしまった。どうやら海外からの観光客が押し寄せていたらしい。混雑から逃れるために平日を狙って訪れたのだが……まんまと目論見が外れてしまった。

守礼門を抜け、首里城の復興現場を覗き、お土産屋でデフォルメされたデザインのシーサーが描かれているエコバッグなどを買っていると、突然の夕立が。機関銃から放たれているかのような激しい雨は、店内にも響き渡るほどに地面へと強く突き刺さる。しばらく空を眺めていたが、止む様子ではなかったので、売店で折り畳み傘を購入し、土砂降りの中をゆっくりと歩きながら駐車場へと戻る。屋内駐車場でなければ大変なことになるところであった。

首里城は現在再建中。作業場の壁面に首里城の絵が描かれている。

午後五時に首里城を出発。どこか海外的なセンスを思わせる看板が乱立する国道58号線を通り抜け、午後六時半、【イオン 北谷店】に到着。マーケットのフロアにて、現地で入手しようと考えていた日用品(ウェットティッシュ、日焼け止めなど)を購入する。午後七時、今回の旅行で宿泊するホテル【ザ・ビーチタワー沖縄】に到着。駐車場に車を停めて、予約していた十二階の角部屋に入る。窓の外に見える景色が売りの部屋なのだが、この時点で既に外は日が暮れて真っ暗なので、カーテンを開けても何も見えない。最高の景色は明日にお預けだ。

持参した荷物と事前にホテルへと送り付けていたキャリーケースを部屋に運び込んだ後で、事前に予約していた近隣の飲食店【レッドロブスター 沖縄北谷店】へと移動する。幸い、雨は上がっていたので、傘を持たずに向かうことが出来た。午後七時十五分、入店。スチームロブスターやガーリックシュリンプなどを一時間ほど飲み食いする。ロブスターは期待していたほど美味しくはなかったが、様々な味付けをほどこされたカキの三種盛り「オイスター★トリオ」や、丸揚げしたエビにスパイシーなソースをからめた「ファイヤーシュリンプ」のような、濃いめの味付けの料理は酒の肴にとても適していた。次回、来店する際には、こちらを中心に注文することになるかもしれない。

食後、店を出た後で、再びイオン北谷店へと立ち寄り、オリオンビールや沖縄ならではの缶チューハイを購入する。部屋に戻り、追加で酒を飲み倒す。午後十一時三十分、風呂。ベッドで横になり、スマホを充電しようと枕元にコンセントを探すも見つからず。そんなわけがないだろうと、起き上がってしっかりと探してみたのだが、それでも見つからない。ベッドの脇に化粧用の小さな机があるのだが、そこにおそらくドライヤー用のコンセントがあった。思わぬ使い勝手の悪さに苦笑する。仕方がないので、ベッドルームの隣にあるリビングルームのコンセントで充電する。スマホ全盛の時代に、なんという使い勝手の悪さだろうか。それとも、敢えてスマホとの距離を開けることで、デジタルデトックスしてもらおうというホテル側の意志の表れだろうか。……流石に、そんなわけがないだろう。

午前一時過ぎ、就寝。