白昼夢の視聴覚室

犬も食わない

その後のM-1チャンピオンと賞レースの話。

今年のM-1グランプリに昨年王者の令和ロマンが出場するらしい。

M-1歴代王者が優勝後に再び出場している前例がないわけではない。過去には、03年優勝のフットボールアワー、08年優勝のNON STYLE、09年優勝のパンクブーブー、以上の三組が優勝後に再びM-1の舞台へと戻ってきている。とはいえ、フットボールアワーの参戦は優勝から三年後の2006年大会でのことだったし、優勝の翌年に出場しているNON STYLEパンクブーブーはどちらも敗者復活戦を勝ち上がってからの決勝進出だったため、もしも令和ロマンが今大会においてストレートで決勝進出を果たした場合、その時点で史上初の快挙といえるだろう。ちなみに、歴代王者のうち、今現在もM-1への出場資格を持っているのは、2012年結成の錦鯉と2013年結成の霜降り明星のみ。今回の令和ロマン参戦を受けて、彼らが動き出すことをちょっとだけ期待しているのは、きっと私だけではないだろう。

なお、NON STYLEパンクブーブーは、M-1の後継的な位置づけにある賞レース『THE MANZAI』にも出場。パンクブーブーは2011年に優勝、NON STYLEは2012年・2013年に決勝進出を果たしている。大衆性の高い技巧的な漫才を得意とする彼らの出場に対して、当時のお笑いファンが大いに怒っていた記憶がある。自分の推している芸人が世に出られるきっかけを奪われるかもしれないのだから、そりゃ怒るよなあ。『THE MANZAI』に限った話でいえば、2012年大会に01年優勝の中川家、10年優勝の笑い飯も出場。中川家は敗者復活戦、笑い飯は決勝戦へと進出している。決勝当日、テレビを見ながら、「あの中川家が敗者復活戦行きなの!?」と驚いたものだ。まあ、きっと、想像でしかないけれど、ふざけたことをやったんだろうなあ。

漫才以外の賞レースに目を向けると、07年優勝のサンドウィッチマンが『キングオブコント2009』に出場して準優勝、20年優勝のマヂカルラブリーが『キングオブコント2021』に出場して決勝9位という成績を収めている。この他、『キングオブコント2009』にNON STYLE、『キングオブコント2021』に霜降り明星が出場、準決勝敗退に終わっている。2021年大会のマヂカルラブリー霜降り明星のコントバトルは大きな話題になったよなあ。また参加してくれないかなあ。あと、ここ数年ほど、15年優勝のトレンディエンジェルが出場し続けているのだが、いつも準々決勝で敗退している。どんなネタをやっているのだろう。

R-1グランプリ』においては、2007年大会と2012年大会で徳井義実チュートリアル)、2015年大会でNON STYLE石田、2018年大会・2019年大会で粗品霜降り明星)が決勝進出を果たしている。粗品に関しては2019年大会で優勝。また、2012年大会から2014年大会にかけて笑い飯哲夫、2018年大会で銀シャリ鰻、2024年大会でウエストランド井口が準決勝敗退となっている。R-1は割と出場のハードルが低く見積もられているのか、けっこうM-1王者もフランクに参加している。もっとも、コンビでの芸とピンでの芸で、少なからず方向性が変わることも関係しているのだろう。

それにしても、優勝コンビが他の賞レースに出場すると「大会としての権威が薄まる!」みたいなことを言い出す人があっちこっちで噴出していた前期M-1の頃に比べて、今はすっかり落ち着いたものである(一部で物議を醸している、とはいえ)。若手芸人が賞レース以外にも世の中に出ていく方法を選べるようになったことが大きいのだろう。どんどん時代は移り変わっていく。どんどん記録が塗り替えられていく。令和ロマンの出場を受けて、今年のM-1でどんなうねりが生じてしまうのか、今から楽しみだなあ。