白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「THE CONTE」(2022年8月7日)

サンドウィッチマン「キャンプ」
空気階段「催眠」
バイきんぐ「飲み会」
ライス「雷」
かもめんたる「I 脳 YOU.」
【オーディション枠】ゼンモンキー「アウトドアショップ」
しずる「教育」
チョコレートプラネット「推理」
東京03「アイデアマン」
ロッチ「罪と罪」
アンガールズ「人生観」
ザ・マミィ「ディープキス」
シソンヌ「天ぷらにする?」
かまいたち「告発」
ゾフィー「オーラの告白」

フジテレビ系列で放送されている漫才特番『THE MANZAI』を明らかに意識したタイトルの番組が始まると知ったときは、「おおっ、TBSもやるやないけ」と感心したのだが、よくよく確認してみると、こちらもフジテレビの特番だと気付き、反射的にズッコケてしまった。「キングオブコント」を開催している放送局でこそ立ち上げられるべき企画だろうに。なにせ出演者を見ると、全組が「キングオブコント」ファイナリストである。パーソナリティも歴代王者の東京03かまいたち。完全に「キングオブコント」が輩出してきた面々を引っ張り込んでいる。TBSとしては「キングオブコントの会」をやっているから良いのである、という了見なのだろうか。

肝心の番組内容はというと、これが実に絶妙。日曜の夜に気を抜きながら楽しむにはちょうど良いバランス感のコントが披露されていた。斬新なネタを求めているお笑いファンには些か退屈に思えるところもあっただろうが、今後もこの番組を定番として継続していくつもりなら、このぐらいの塩梅が良い。そんな中、アグレッシブなネタを見せてくれたのが、バイきんぐとしずる。「人を傷つけない笑い」が提唱されている令和の時代において、破壊衝動を心のままに爆発させたようなコントを披露していた。理屈なんかいらねえ、何もかもぶっ壊せ。対して、本来ならば彼らのように破壊的なコントを得意としていたかまいたちが、なんだかオーソドックスなコメディを演じていたのが、ちょっとだけ残念だった。アレはアレで良いのだけれど、それをかまいたちが演じる必要性とは。

個人的に一番笑ったのはザ・マミィ。酒井が恋人とディープキスをしていると、そこへ林田が駆け込んできて、助けを求めてくる……という、空気の読めなさと起こっている事態の緊張感のバランスが絶妙な、なんともバカバカしい設定のコントで、ずっと笑っていた。あんまりコミュニケーション能力が高くなさそうな酒井が、恋人と熱い口づけを交わしている画だけでも笑えるのに、そこに突っ込んでくる林田のツラの皮の厚さよ。今年のキングオブコント男性ブランコの優勝だと確信していたのだが、これはちょっと分からなくなってきた。面白いネタを見せてくれることに期待を寄せよう。

ひとつ、本当に残念だったのは、ゾフィーのコントがローカル枠に入れられていた点である。はっきり言って、有り得ない。

コントをメインとした番組で、コントを愛する芸人たちがパーソナリティを務めていて、芸人たちによる副音声解説まで詰め込んで……ここまでコントに対する愛を表現している番組の、本当に最後の最後で、どうしてそんな非道なことをやらかしてしまうのか。仮に、これがオーディションで惜しくも合格できなかった次点の芸人のネタを、特別にローカル枠でオンエアするという対処であったならば、まだ納得は出来る。正直、ネタ番組の特番において、若手のオーディションを組み込むことで番組の価値を上げようとする姿勢の傲慢さについては以前から引っ掛かっているのだが、それはそれとして理解は出来る。でも、この番組は、そんなローカル枠に、事前に出演することが告知されていたゾフィーを入れてしまったのである。それはダメだろう……? 告知を見て、ゾフィーのコントを楽しみにしていた視聴者の気持ちを踏みにじるようなことを、どうしてやってしまったのか。まったくもって残念でならない。

この一点については改善してもらいたいが、後はおおむね楽しかった。次回の放送も楽しみにしている。