白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「ぺこぱ単独ライブ「P」」(2021年12月22日)

2021年10月3日に草月ホールで開催された単独ライブを収録。

ぺこぱはシュウペイと松陰寺太勇によって2008年に結成された。結成当初は「先輩×後輩」という名前で活動していたが、2013年に「ぺこぱ」へと改名。2015年にドキュメンタリー系バラエティ番組『爆笑ファクトリーハウス 笑けずり』へと出演、お笑いファンの間で知られる存在となる。2019年正月、『ぐるナイ おもしろ荘 日本で一番早いネタ祭!誰か売れて頂戴!』に出場、優勝。同年年末、『M-1グランプリ』決勝戦に進出、ファイナルステージまで勝ち進んで三位。ちなみに、ぺこぱの単独ライブが開催されるのは、2016年1月に下北空間リバティで行われた『風~KAZE~』以来、およそ五年半ぶりのことになる。

演じられているネタは基本的に、お得意の“ノリツッコまない”漫才。「侍になって人を斬りたい」というシュウペイのために松陰寺が斬られても仕方がないような悪人を模索したり斬り合ったりする漫才コント『サムライ』、やってくる弟子候補たちのやりたい放題ぶりに松陰寺がてんてこ舞い『弟子オーディション』、奥さんと籍を入れているものの式を挙げていない松陰寺に結婚式の雰囲気を味わわせる漫才コント『結婚式』など、ぺこぱの芸風を存分に活かしながらも、しかし適度にユルい空気の漂う、いわゆる単独ライブの雰囲気を楽しむことが出来る。松陰寺の実際の家庭に関するネタ、シュウペイのウィンナーソーセージ愛など、彼らを知っている人間だからこそ楽しめる内輪ネタも散見され、とてもアットホームなライブであるように感じられた。

そんな中、ちょっとだけ気になったのが一本目の漫才『朝の顔』。朝の情報番組のMCをやってみたいというシュウペイのために、松陰寺がスタッフとなって雰囲気を味わわせるという漫才コントである。シュウペイの無茶苦茶な仕事ぶりに松陰寺が振り回されながらも、“ノリツッコまない”スタイルで強引に肯定するのだが、ところどころに作・演出を担当している松陰寺……もとい松井勇太の思想みたいなものが感じ取られて、ちょっとだけ危うさを感じた。それが確固たる信念を感じさせられるものであれば、今後の進展も望めるのかもしれないが、そこそこ浅薄でなんならちょっとデリカシーに欠けるところもあるので、尚更に心配になってしまう。天気予報士のくだりは「それはマジで言っちゃダメなヤツなのではないか?」と思ってしまった。そういう松陰寺のダークサイドは、ラジオか鍵アカで処理してもらいたい。ネタにし辛いレベルの闇はマジでネタにならないぞ。

また、漫才とは別に、ライブでも流された幕間映像も収録されているのだが、二人が運転中に本音で会話する姿を撮影した『本音ドライブ』も、また別の意味で危ない。「人を傷つけない笑い」の代表格とされてきたことに対する鬱憤というか、芸人としてのアウトローな一面を見せつけようという意欲というか、そういうものが大爆発を起こしている。基本的には音声処理されているため、何の話をしているのかは分からないようになってはいるのだが、ここもちょっと心配してしまった。ハラハラさせるぜ。

これら本編に加えて、特典として、アフタートークと幕間映像のメイキング、そしてライブ当日の密着映像などを収録。アフタートークには、松陰寺が敬愛するあの先輩芸人が登場、和気藹々としたトークを展開している。そういえば、この年末年始にかけて、この先輩芸人を見かける機会がさほどなかったような気がする。今年こそ、今年こそは売れてくれるだろうか。

・本編(100分)
「朝の顔」「本音ドライブ①」「サムライ」「本音ドライブ②」「文シュウペイ」「ウインナーの歌」「弟子オーディション」「しゅぺゆき動画トーク集」「心に松陰寺 2021」「呪いのビデオ」「結婚式」

・特典映像(50分)
「アフタートーク
「幕間VTRメイキング&ライブ当日密着」