白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

『ほんとのきもち』だけは見失わないように

分かってしまう。どうしようもないほどに、分かってしまう。高橋優の『ほんとのきもち』を聴くたびに「これは私のことではあるまいか」と思ってしまう。当然のことながら、そんなわけがないのだけれど、それぐらいに共感してしまう。今までの生活の中で目にしてきた、ちょっとした違和感たちを見過ごしてきた記憶が蘇ってくる。その瞬間は確かに疑問を抱いたはずなのだ。でも、それを気にしていたら、生活はままならない。色んなことを見過ごさなきゃならない。これまでも、これからも、生きていくために。

それなのに、インターネットの利用が当たり前になった昨今、私はむしろ色んなことに首を突っ込んでいる。それほどに世の中には色々な問題が積み重なっているし、それを知ることの出来る環境があるからだ。でも、その結果、私は何を知ったのだろうか。何を理解したのだろうか。何かを学んだのだろうか。本当は分かっていないのに、分かったようなフリをしているだけなのではないか。私の中にあるはずの『ほんとのきもち』は……。

ことの真相は何も知っているようで知り得ない
それでもどうにか歩いていかなくちゃならない
疑ってばかりいられない でも信じれるものも少ない
ただ一つ確かなのは今このとき 「誰が好き?」「誰が好き?」

この曲が発表されたのは今から十一年前。それから時代は大きく変わってしまったけれど、だからこそ改めて聴いた方が良いような気がする。