白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「bananaman live 腹黒の生意気」(2017年2月2日)

bananaman live 腹黒の生意気 [DVD]

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2016年8月12日から14日にかけて俳優座劇場で開催された単独ライブを収録。

もはやコント師としての全盛期を過ぎてしまった感はあるものの、その自然な会話から生み出されるバカバカしい笑いは流石の一言。英会話教室のコスプレパーティに誘われた日村が設楽にどんなコスプレをすればいいのかを社食で相談する『cucko costume party』は、そんなバナナマンの実力が存分に発揮されたコントだ。「ジェイソン」「スーパーマン」「ジェームス・ディーン」などといった設楽の提案を日村が次々にホームラン級の笑いへと昇華していく様は、まさしく圧巻である。

一方、お馴染みの『赤えんぴつ』では、いつものクレイジーなやりとりが繰り広げられている。設楽はいつもと同じようにヤバい発言を繰り返し、日村はいつもと同じように設楽を突き飛ばし、そして日村のタンクトップはいつもと同じようにビリビリに引き裂かれる。……こんなにもクレイジーな内容なのに、このやりとりがもはや様式美となっているところが、最もこのコントのどうかしている部分のような気がしないでもない。

この他のネタは、ちょっとこれまでのバナナマンではあんまり見たことがないタイプのコントが並んでいる印象を受けた。

例えば、カラオケで日村が設楽にある相談を持ち掛けようとすると、設楽が予約してあったWhiteberryの『夏祭り』が始まってしまう『karaoke』。バナナマンのコントで版権曲が使用されているというだけでもかなり珍しいのだが、コントの軸となっている部分があまりにもオーソドックスで、それ故に演者としてのバナナマンが不思議な浮き上がり方をしている。日村演じるファッションデザイナーと設楽演じる助手がファッションショーのモデルを選出する様子を描いたコント『panic Attack』も、バナナマンのコントにしてはロジックがシンプル過ぎて、逆に違和感を覚える。

だが、最も驚かされたのは、オープニングコントでありライブタイトルにもなっている『Haraguro no Namaiki』だ。生意気な後輩社員の設楽が腹黒な先輩社員の日村にちょっかいを出すという内容なのだが、日村の腹黒ぶりを説明する演出がちょっと変わっている。ここで説明してもいいのだが、そうするとコント自体の面白味が薄れてしまうので、これは実際に確認してもらいたい。とにかく、何か、変なのだ。

……もしかすると、バナナマンはまた新たなる進化を遂げようとしているのかもしれない。本作に広く漂う違和感は、その前兆なのかもしれない。まあ、単なる憶測にすぎないが、バナナマンはこれまでもそういう進化を見せてきたコンビなので、ちょっとだけ期待しておきたい。

最後の長尺コント『The pitiful two in the Philippines』は、フィリピン女性に振り回される二人の男の滑稽な姿を描いたもの。夏を上手く再現した舞台演出には目を見張ったが、肝心の内容はべたべたで面白味に欠ける。それでも会話自体に面白味があれば難なく楽しめるのであろうが、ストーリー展開を重視しているためか、あまり遊びどころが作られていないのも厳しい。今回もオークラ脚本なのだろうか。こういう小市民的な設定は、同じく彼が長尺コントの脚本を担当している東京03ならば、もうちょっと上手く笑いに昇華できるのかもしれないが(東京03は普段から小市民的な設定のコントを得意としているからだ)、今のバナナマンのベクトルには向いていないように思う。金と女とダメ男たちの友情……というテーマも食傷気味。バナナマンが経年変化を繰り返して現在の状態へと辿り着いたように、オークラもまた変わらなくてはならない時期が来ているのではないだろうか。……それとも、この変わらなさに、いつか愛おしさを覚える日が来るのだろうか。よく分からんな。

特典映像は幕間に使われた映像。オリジナルゲームに興じる二人の音声を収録した「ゲーム」、日村がテレビではあんまり出来ないような挑戦をする映像コーナー「クシャミでカップ焼きそばは眉間につくのか?」、日村が頻繁に着用しているパーカーのヒモが長すぎる問題を取り上げる「パーカー」……などの映像が収録されている。基本的には、過去の単独でも見たような企画のバージョン違いなのだが、ある映像だけはとあるコントと密接な関わりが……これ以上は書けないので、各自でご確認を。

■本編【115分】

「Haraguro no Namaiki」「オープニング」「cukoo costume party」「ゲーム」「karaoke」「クシャミでカップ焼きそばは眉間につくのか?」「panic Attack」「パーカー」「赤えんぴつ」「仮装体操」「The pitiful two in the Philippines」