白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「じわじわチャップリン」(2017年2月4日)

「結婚のあいさつ」。一週勝ち抜き。娘との結婚を許してもらいたいとやってきた青年の仕事がYouTuber。「娘との結婚の許しを得に来た若者が軽率」というありがちなシチュエーションに、今の時代を表すキーワードのひとつ「YouTuber」を絡めることで、とても現代性の高いコントに仕上げている。ただ、よくよく見てみると、意外性という意味ではそれほど切り込んでいない。「お金のためにやっていない」「結婚のお願いをネット配信」「最初は批判的だった彼女の父親がだんだんとノリノリに」などの展開には、むしろセオリー通りの手堅さを感じさせられる。だが、今の時代にこのコントを作り上げた、対応力の早さは評価されるべきだろう。「カメラを振るな!」は笑ったな……。

 

  • ばーん【23】

「はじめてのおつかい」。結婚して子どもを「はじめてのおつかい」に出すことが夢だという高田の話を聞いて、高坂が感情を爆発させる。カンニングスパローズのように、売れない若手芸人であることを逆手に取った漫才。この手法では、既にアルコ&ピースが『忍者』で「見せ方に捻りを加えれば面白くなる可能性を秘めている」という新たな道筋を開拓しているのに、どうして売れない芸人ドキュメンタリー止まりで満足している漫才師が後を絶たないのか、不思議でならない。今回のばーんの漫才に至っては、そもそもきっかけとなる「結婚して子ども作って「はじめてのおつかい」に出したい」という設定に対するツッコミがおかしいのだ。そこは「なんで、スタジオで子どもを見守る側じゃなくて、子どもを出させる側になりたいんだよ!」だろ! 高坂が津軽弁で喋り始めたあたりから盛り返していたが(「煮ても焼いても開かねえな~」「全盛期のサモ・ハン・キンポー」には笑った)、それでもU字工事ロケット団、カミナリが出現した現在の状況を思うと、些か弱い。もっと本意気の感情を漫才に込めて、向き合ってもらいたい。

 

【ふきだまりコーナー】

インポッシブル、えんにち、ワールドヲーター、オジンオズボーン、カミナリ、サンシャイン池崎、下村尚輝、すゑひろがりず、てんしとあくま、なすなかにしハリウッドザコシショウ、ペコリーノ、プラス・マイナスが登場。「春を感じられるギャグ」というテーマの元、カミナリ、ハリウッドザコシショウ(タイガーステップ)がギャグを披露した。

 

  • センサールマン【26】

「3匹の子ぶた」。二週勝ち抜き。童話「3匹の子ぶた」におけるオオカミの訪問を『渡辺篤史の建もの探訪』風に描写する。過去二回の放送で披露した漫才のように、従来の童話に「競馬実況」「怪談話」などのような別の要素を当てはめるスタイルではなく、童話の世界に持ち込まれた別の要素をむしろ軸としたネタで、これまでで一番バカバカしいネタに仕上がっていたように思う。「ブタ臭いな~」「豚小屋そのものです」「こらしめるための罠なんですね」など、童話の世界に上手く切り込んだワードも炸裂していた。ただ、童話をモチーフにしていることを前提としているネタなのに、「3匹の子ぶた」におけるのメインイベントの一つである「オオカミの息でわらの家、木の家を吹き飛ばす」シーンがカットされていたことに少なからず違和感を覚えてしまった。小さなことではなあるが、この違和感が案外バカに出来ないのである。もう少し元ネタに忠実なシーンを加えていれば、また違った結果になっていたかもしれない。あと、ここはもう勢いで行ってやろうってつもりだったんだろうけど、やっぱりオオカミが罠に自ら掛かりに行くシーンは、ちょっと無理があるよなあ……(笑)

 

  • イヌコネクション42

「ケンカ」。二週勝ち抜き。二人のヤンキーが山の中で決闘を始めようとするが、たびたび虫が服に付いてくるので話が進まない。ケンカをしている二人が妙にほのぼのとしたやりとりを繰り広げる……という設定のコントは、過去にも幾つか存在している(個人的にはホーム・チームのイメージが強いけど、天竺鼠の『定食屋』の方が有名か)。そして、イヌコネクションのこのコントも、その流れの中にあるものだと思う。ただ、このコントがスゴいのは、ケンカの緊張感を緩和するものが「虫」に限定されているところ。それ以外に展開がない。これがスゴい。こんなに条件を絞っているのに、しっかり面白いコントに成っている。背を向けた杉浦に対する戸川のリアクション、「刺すヤツ?」という確認、「開いてきた!」という不穏なワードに対してほのぼのとしたオチまで、とても面白かった。正直、全体の整合性はあんまり取れていなかった気もするが(「ありがとう」って言った直後にブン殴りに行くのは変だろう!)、そのことに目をつぶっても、良いコントだった。三週連続勝ち抜きでチャンピオン大会出場決定!

 

【今週のふきだまり芸人】

えんにち「道案内をする矢沢永吉

プラス・マイナス「楽屋挨拶シリーズ+体型ものまね」

 

次回の出場者は、うしろシティ(二週勝ち抜き)、オジンオズボーン、てんしとあくま、ハリウッドザコシショウ