白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

笑いを生み出すということ

いつもお世話になっております。すが家しのぶです。

最近は『佐久間宣行のNOBROCK TV』を毎週欠かさず見ております。

『佐久間宣行のNOBROCK TV』は、元テレビ東京局員のテレビプロデューサー・佐久間宣行が企画・出演・プロデュースを行うYouTubeチャンネルです。毎週水曜・土曜の午後七時に新作が配信されています。個人的に好きな回は、レポーターのウエストランド・井口に本職のトルコアイス屋がどれだけアイスを渡さずにいられるかを競い合う「トルコアイス渡さない選手権」です。M-1をきっかけに売れ始めているウエストランド・井口という芸人の魅力が余すことなく引き出されていました。

先日、この『佐久間宣行のNOBROCK TV』において、興味深い企画が配信されました。タイトルは「お笑い知識ゼロ人間に笑いが説明できるか選手権」(7月31日配信開始)。お笑い知識がゼロのスポンサーに、芸人が自らのネタの面白さを説明できるのかを検証するドッキリ企画です。今回、ターゲットとなったのは、「安心してください、はいてますよ!」のネタで知られるとにかく明るい安村。ここでもやはり「安心してください、はいてますよ!」のネタを披露するのですが、スポンサーからの問い掛け(佐久間と仕掛け人であるさらば青春の光・森田が指示)に対し、上手く回答することが出来ず、同じような内容の説明を何度も何度も繰り返すというみっともない姿をさらけ出しておりました。

ドッキリに振り回されている安村の姿そのものもとても面白いのですが、それ以上に興味深いと思ったのは、企画そのものの持つ批評性です。近年、芸人が他の芸人のネタの魅力について語る機会が増えてきましたが(余談ですが、先日の『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』にゲストとして出演した放送作家のオークラが、この流れを作ったのは『ゴッドタン』の企画の流れでコント愛を熱弁していた東京03・飯塚だったのではないかという説を語られていて、なるほどなあと)、それと同時に、「芸人が語ることが正解である」という認識が強まってきました。一般の人間がどれだけ試行錯誤してネタについて語ったとしても、それは結局のところ舞台に上がった経験のないシロートの意見でしかなくて、プロフェッショナルである芸人の言葉の方が実体験に基づいているからこそ説得力がある……という理屈ですね。

「お笑い知識ゼロ人間に笑いが説明できるか選手権」は、そんな風潮に一石を投じる企画であるように思えました。実際に舞台に上がってネタを演じている側の芸人であっても、その面白さを論理的に理解しておらず、容易に他人に解説できるわけではないことを、この企画はまざまざと証明してみせたのであります。

とはいえ、それは決して悪いことではありません。むしろ、芸人という稼業の面白さが、そこに表れています。笑いの方程式が明確に組み立てられていなくても、「これは面白いのではないか?」というあやふやな状態のものをカタチにして、パフォーマンスとして披露し、観客を笑わせることさえ出来れば、それで成立するということですから。観客からのリアクションを重要視する仕事だからこそ出来ることなのではないでしょうか。……もっとも、大事な大事なスポンサーとはいえ、シロートに自身のネタの面白さをきちんと説明することをただただ嫌がって、ウヤムヤにしようとしていただけの可能性もありますけれど。

ちなみに、「お笑い知識ゼロ人間に笑いが説明できるか選手権」は前後編に分かれており、後編では納言と東京ホテイソンはターゲットになっているようです。ネタの構成に力を入れている東京ホテイソンがどんな回答をするのか、今から楽しみです。