令和時代のお笑い公論

心が腐る、その前に。

さらば青春の光 単独ライブ『真っ二つ』(2018年9月5日)

2018年4月から9月にかけて、東京・大阪・愛知でのツアーが組まれた単独ライブより、4月15日にCBGKシブゲキ!!で行われた千秋楽公演の模様を収録。構成に渡辺佑欣と廣川祐樹、演出に家城啓之

単独ライブの中止、事務所からの独立、人妻との不倫騒動……さらば青春の光について考えようとするたびに、それらのスキャンダラスなエピソードがリフレインの様に蘇る。致し方のないことだ。どれほど優れた作品を世に送り出した人間であったとしても、大衆は過去の醜聞を忘れはしない。何故ならば、そこに人間を感じるからだ。作り上げられた虚構の向こうに垣間見える、人間としての本質を捉えられるからだ。だが、人の噂も七十五日という言葉の通り、それらは過去の出来事として記憶の彼方へと流れていく。東京03のコントについて語るときに、いつまでもオールスター感謝祭での惨事を持ち出している場合ではないのである。全ては過去の経験となって、生き様へと色濃く反映される。さらば青春の光も、もう間もなく、その段階に突入しようとしている。『真っ二つ』は、そう予感させるに足る傑作だった。

本作は、オープニングコントを含めた八本のコントと、一本の漫才で構成されている。いずれも珠玉の出来である。何度も食い逃げされているラーメン屋の責任が逆に追及される『犯罪の温床』、ガラス戸越しに見える伝統工芸の後継者を志願してやってきた人物が明らかに……『後継者』、火事の現場で活躍している青年の真意とは?『ヒーロー』など、何処を切り取っても捨てるところが見当たらない。余談だが、『ヒーロー』は「キングオブコント2018」の最終決戦に進出した際、披露される予定だったコントだそうだ。丁寧に段階を踏んでいく手法のコントを、如何にして制限時間内に収めようとしていたのか……なんとも気になるところである。

興味深いのは、これらのコントの中に現代的な視点がさりげなく組み込まれている点である。例えば、授業中に呼び出しを受けた生徒に対してお調子者のクラスメートが「万引きバレたんちゃうん!?」と根拠のない無責任な決めつけを言いふらす『ちゃうん!?』は、事件が起きるたびに訳知り顔で根拠のない情報をSNSに垂れ流すことで注目を集めようとしているオピニオンリーダー気取りを彷彿とさせるし、美しい絵画に心を奪われている客に某大手家電量販店の店員のような商人然とした立ち振る舞いで接する『画廊にて』は、当初は2chの書き込みを読み物として大衆向けの娯楽に昇華していた筈がアフィリエイトを目的にアクセス数を稼ぐための煽り記事しか書かなくなってしまったコピペブログのようである。クレーム対策として、とんでもない状態になっているカフェを描いた『カフェリベルタ』のオチなども、自分を棚に上げて他人を追求するネットユーザーの姿そのものに見える。……いや、それは単純に、それぞれがまったく違った行程を経て、人間のみっともなさを突き詰めていったカタチなのかもしれない。

そして、オーラスのコント『十年定食』。これが実に素晴らしかった。その内容は、バラエティ番組を睨み付けるように見つめながら「絶対に売れてやる……!」と息巻いている若手芸人の青年(東ブクロ)と「売れるまではタダで食わせてやる」と約束した定食屋の親父(森田)が、それから十年後のある日、彼に思わぬ話を切り出す……というもの。ありがちな設定、ありがちな展開、ありがちな状況だが、これがまったく思いもよらなかった展開を巻き起こす。これがまた最高に笑えるのだが、一方で、昨今の貧困問題に対してメスを入れているというようにも受け取れる……というのは、流石に深読みが過ぎるというものか。人の気持ちを軽やかに弄ぶ東ブクロのノーデリカシーぶりと、そんな東ブクロに翻弄される哀しみすらも笑いに変える森田のコメディアンぶりが存分に発揮された名作である。是非ともご覧いただきたい。

なお、さらば青春の光は2019年3月から4月にかけて、東京・愛知・大阪の三か所で単独ライブ『大三元』を開催する予定である。『真っ二つ』のおよそ二倍のキャパで臨んでいるとのことで、今後の更なる進展に期待せずにはいられない。

◆本編【105分】

「オープニングコント」「犯罪の温床」「後継者」「ちゃうん!?」「カフェリベルタ」「画廊にて」「漫才(怪談)」「ヒーロー」「十年定食」「エンディングトーク