白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

すが家しのぶ収集物目録(2003年)

1/8 バナナマン「private stock」
2/1 シティボーイズミックスPRESENTS「パパ・センプリチータ
3/19 爆笑オンエアバトル アメリカザリガニ
3/19 爆笑オンエアバトル ホーム・チーム
3/26 「HITOSHI MATSUMOTO VISUALBUM“完成”」
3/26 バナナマン「ペポカボチャ」
4/16 「さまぁ~ず / バカルディライブ DVDボックス」
4/23 爆笑オンエアバトル テツandトモ
5/21 バナナマンラーメンズおぎやはぎ「ライヴ!!君の席-SPECIAL SIX SEATS-」
5/28 品川庄司「MANZAIドライブ2」
5/28 千原浩史「囚」
6/18 いつもここから「BEST SOLO LIVE」
6/25 ハリガネロック in 渋公爆発ロック」
7/16 東京腸捻転 ~10th anniversary SPECIAL!!~」
7/23 シティボーイズ DVD-BOX 1
7/23 シティボーイズ DVD-BOX 2
7/30 中川家 芸能生活10周年記念イベント「兄弟喧嘩」
7/30 2丁拳銃百式
8/20 爆笑オンエアバトルLight ダンディ坂野
8/27 おぎやはぎ×バナナマン in“epoch short film square”~錆鉄ニュータウン~」
8/27 2丁拳銃「銃歌 ~チャカ~」
9/18 爆笑オンエアバトル ドランクドラゴン
10/16 爆笑オンエアバトル おぎやはぎ
10/16 ホーム・チームLIVE「2~START~」
10/29 インパルス「おちゃらけソーセージ」
12/17 bananaman live Sugar Spot with Summer Holiday “バナナマンの夏休み”
12/17 シティボーイズミックスPRESENTS「NOTA ~恙無き限界ワルツ~」
12/26 アンジャッシュコントライブ「THIRD EYE ~開~」
12/26 「バカバク×ブートレグ Vol.1」

どうも、すが家しのぶです。

2003年にもなりますと、ちょっとラインナップが賑やかになってきましたね。『M-1グランプリ』の認知度も高まる中で、テツandトモダンディ坂野がブレイクし、若手芸人に注目が集まり始めた年といえるでしょう。ゼロ年代を代表するネタ番組エンタの神様』や、『ゴッドタン』の前身番組『大人のコンソメ』がレギュラー放送を開始したのも、この年です。「フェーズが変わった」っていうヤツだな。

しかし、2003年といえば、なんといってもバナナマンの最高傑作『ペポカボチャ』がリリースされた年! 2002年に行われたライブの模様を収録した作品なのですが、とにもかくにも傑作揃い。大小の差はあれど、どのコントもネタの精度が高く、魅力的な脚本と優れた演技力を兼ね備えた、バナナマンでなければ成立できないライブとなっております。『secretive person』は日本コント史に残る大名作!

そんなバナナマンにとって、ほぼほぼ事務所の先輩にあたるさまぁ~ずのDVDボックスがリリースされたのもこの年(さまぁ~ずはホリプロ所属、バナナマンホリプロコム所属)。バカルディ時代の公演『サラダで白飯くえねーよ!』(97年)・『なまたまごかけ御飯』(98年)・『少年と犬と公園と私』(99年)、さまぁ~ずに改名して以降の公演『冬なのにさまぁ~ずライブ』(00年)・『さまぁ~ずライブ2』(01年)・『さまあ~ずライブ3』(02年)を一挙にDVD化してまとめています。2003年のさまぁ~ずは、ネタ本『さまぁ~ずの悲しいダジャレ』が大ヒット。三村ツッコミのイメージから更に一歩踏み込んだブレイクを果たした年でありました。

そんな二組にとって、東京コント界の大先輩にあたるシティボーイズの過去公演を収録したDVDボックスが発売されたのも、2003年。第一巻には『鍵のないトイレ』(92年)・『愚者の代弁者、西へ』(93年)・『ゴム脳市場』(94年)、第二巻には『愚者の代弁者、うっかり東へ』(95年)・『丈夫な足場』(96年)・『NOT FOUND』(97年)をそれぞれ収録。いずれの公演も三木聡が演出を担当しており、とんでもなくレベルの高いコントを繰り広げています。三人のカウボーイと二人の阿波踊りが荒野を彷徨う『カウボーイ迷う』が大好きだったなあ。

爆笑オンエアバトル」公式ビデオの第二シリーズ・第三シリーズがリリースされたのもこの年。二年ぶりのリリースでしたが、一年で六枚も発売されているところに、当時のお笑いへの世間からの注目ぶりを感じずにはいられません。個人的には、アメリカザリガニホーム・チームの当時のパフォーマンスがパッケージされているのが嬉しいところ。ホーム・チームの『交通事故』が今でも観られる有り難さ。

あと、忘れてはならないのが、吉本芸人のDVDをリリースするレーベル“YOSHIMOTO WORKS”が発進した年だというところ。『品川庄司「MANZAIドライブ2」』『千原浩史「囚」』を皮切りに、ハリガネロック中川家2丁拳銃、インパルスなどのDVDがリリースされました。20年前ということもあって、なにやら渋いメンバーに見えるかもしれませんが、このあたりは当時は中堅どころでしたからね。この他、私が購入していないところでは、ココリコ、フットボールアワー、ライセンス、ロバートのDVDもリリースされていました。M-1の公式ビデオが発売されたのもこの年です。……購入枚数はそれほどでもないのに、書くことが多いな!

2004年に続きます。

すが家しのぶ収集物目録(2002年)

2/21 「BANANAMAN LIVE 激ミルク」
2/21 「BANANAMAN LIVE monkey time」
6/19 「You Are The Top ~今宵の君」
6/21 ハリガネロックチュートリアルランディーズ in ZAIMAN
6/26 品川庄司「MANZAIドライブ」
8/21 ラーメンズ「Rahmens 0001 select」
9/19 ラーメンズ DVD-BOX
10/23 笑ビ! 「アンジャッシュ~クラダシ~」
11/21 メッセンジャーシャンプーハットブラックマヨネーズビッキーズ・ロザン in ZAIMAN
11/22 笑ビ! 「ドランクドラゴン~カンフー~」
12/18 アメリカザリガニDVD「泥沼劇場 西日」
12/22 笑ビ! 「エレキコミック ~ノーセンス~」

どうも、すが家しのぶです。

テレビ番組系のリリースが多かった2001年に比べて、2002年はちょっと若手芸人の単独作品が増えてきましたね。注目どころは、やはりバナナマンラーメンズでしょうか。

バナナマンの『激ミルク』と『monkey time』は、ともに2001年の単独ライブの模様を収録した作品。これ以降、現在に至るまで、バナナマンの単独ライブはすべてソフト化されています。なかなかにとんでもないですね。ちなみに、バナナマンが初めてリリースしたDVD作品は、2001年の『サルマンとバカジュリエット』という過去の単独ライブ映像やコントのプロモーションビデオなどをまとめたベスト盤なのですが、そちらは購入していないため、目録に含まれていません(2006年にVHSでのみ販売されていた『処女』と『サルマン~』を一枚にまとめたスペシャル版がリリースされていて、そちらは購入)。当時は、よもや『赤えんぴつ』のシリーズが、十数年も続くとは思ってもみなかっただろうな。

ラーメンズの『Rahmens 0001 select』は、過去の単独公演で披露されたコントの中からファン投票によって選ばれたネタを収録したベスト盤です。これをリリースした一ヶ月後に、単独公演四公演(『椿』『鯨』『零の箱式』『雀』)をまとめた四枚組DVD-BOXをリリースしているところに、彼らの戦略性を感じずにはいられませんね。完全に先行シングルのやりくち。ちなみに、私が初めて購入したDVDが、このベスト盤になります。懐かしいな。大学入学を控えた2003年の春、広島県広島市にあるフタバ図書の一階にあるCDショップを散策していたら、ミュージックビデオのコーナーに本作が陳列されていたんですよ。あれはまさしく運命の出会いでありました。

あと、忘れてはならないのが、TDKコアからリリースされていた“笑ビ!”シリーズ。若手芸人のネタと映像をおよそ一時間にまとめて収録したもので、短いながらも高い完成度が魅力的なシリーズでした。またラインナップが素晴らしいですね。『爆笑オンエアバトル』では常連となっていたアンジャッシュ、『はねるのトびら』レギュラーのコント職人・ドランクドラゴン、2000年に『NHK新人演芸大賞』を受賞したエレキコミック。いずれも実力派のコント芸人たちばかりで、彼らの初期のネタがこうしてソフト化されるのは有り難いかぎりであります。……もっとも、後に全組『爆笑オンエアバトル』公式ビデオを出すことになるのですが(アンジャッシュに関してはもう出している)。

その他、注目するところといえば、品川庄司の初のネタDVD『MANZAIドライブ』、アメリカザリガニの映像コント作品『泥沼劇場』あたりでしょうか。『MANZAIドライブ』は同年4月に行われたシークレットライブの模様を収録。まだ吉本興業が“YOSHIMOTO WORKS”を立ち上げるよりも前の作品となります。『泥沼劇場 西日』はアメリカザリガニインターネットラジオキャラアニラジオステーション」で放送していた音声コントシリーズの流れを汲んだもの……らしいのですが、詳細はよく分かってません。そういえば、中古で買ったのに、まだ一度も観ていなかったような気がします。アメザリの漫才は好きなんですけど、コントにそこまで惹かれていないんですよねえ……どうなんだろうな。

2003年に続きます。

すが家しのぶ収集物目録(2001年)

4/18 爆笑オンエアバトル ますだおかだ
5/16 爆笑オンエアバトル ラーメンズ
6/20 爆笑オンエアバトル アンジャッシュ
6/21 「笑いの巣 PRESENTS 君の席1」
8/22 「笑いの巣 PRESENTS 君の席2」
10/24 「笑いの巣 PRESENTS 君の席3」
11/21 中川家ルート33キングコング in ZAIMAN

どうも、すが家しのぶです。

今でこそ「お笑い評論家」などと名乗っている私ですが、文章の仕事をいただくよりも前は、「お笑い芸人DVD収集家」を自称して活動していました。まだ動画サイトが一般的ではなかった時代において、気になる芸人さんたちの映像観たさで、リリースされる作品を片っ端から買い集めた結果、気付けば数百枚にも及ぶコレクションを所有している状態になっていたので、この肩書きに文句を言ってくる人間はいないだろうと思い、このように名乗っていました。面倒臭い話ですね。

そんな私のお笑い芸人DVD収集生活が、今年でニ十周年の節目を迎えることとなりました。2003年当時は大学の入学式を控える純朴な18歳だった私も、今ではすっかりアラフォーです。そこで一度、これを機会に、これまで買い集めてきた作品のラインナップを振り返り、当時の記憶を辿ってみようと思い立った次第です。出来れば、今年のリリースまで続けていきたいと思っていますので、良ければ最後までお付き合いいただけますと幸いです(私が飽きてしまう可能性の方が高いのだけれど)。

というわけで、まずは2001年からということになるわけですが、この年はまだVHS(ビデオテープ)勢力が強かったためか、DVDのリリースがかなり少なめ。リリースされたとしても、VHSとDVDの2パターンを出していて、これからの時代の動向を伺っている感が強かったですね。もっとも、この数の少なさに関しては、そもそも若手芸人に対して、まだまだ世間が興味を抱いていなかったことも大きいように思います。なにせ時代は『M-1グランプリ』前夜でしたからね。

そんな2001年にリリースされたのは、1999年に放送を開始した若手芸人の登竜門番組『爆笑オンエアバトル』、同じく1999年に不定期放送を開始した漫才番組『ZAIMAN』、やはり1999年から2001年にかけて日本テレビ系列で放送されたWebとテレビの複合企画番組『笑いの巣』などといった、テレビ番組の公式ビデオです。

爆笑オンエアバトル』シリーズは、当時の番組の顔ともいえる三組が、これまでに番組内で披露したパフォーマンスを厳選して収録したベスト盤。『爆笑オンエアバトル ますだおかだ』に関しては、私が所有しているソフトの中では最古のものとなります(購入していないだけで、もっと古い作品も存在はしている)。“君の席”はバナナマンラーメンズおぎやはぎの三組による期間限定ユニットで、本編には三組によるコントクリップを収録。彼ら自身のネタとはちょっと違ったパフォーマンスを楽しむことが出来ます。『ZAIMAN』はタイトルに表記されている三組の漫才を二本ずつ収録。既にM-1の予選が始まっていた時期でのリリースなので、この三組の決勝進出を期待してリリースされた側面もあったのではないかしら……と、そんなことを邪推してしまいます。

ちなみに、2001年の私は思春期真っ只中の高校生。元々、テツandトモのことが好きだったのですが(偶然、『家族そろってボキャブラ天国』の最終回スペシャルに彼らが若手枠として出演している姿を目にして、気になっていた)、彼らが『爆笑オンエアバトル』に出場していることを知って、番組を意識的に見始めた頃ですね。これをきっかけに、それまで音楽やアニメに対して抱いていた興味が、急速に若手芸人へとスライドされていきます。

その他、お笑い関係では、「『はねるのトびら』『感じるジャッカル』放送開始」「いつもここからのネタ本『悲しいとき』発売」などがあった年でした。『はねトび』は2002年にソフト化、VHSおよびDVDがべらぼうに売れたと聞いています。レンタルショップに行くと、とんでもない本数が並んでいた記憶がありますね。『感じるジャッカル』は、ホーム・チーム、シャカ、中川家がレギュラー出演していたコント番組で、こちらも2002年にソフト化されています。

2002年に続く。

『第七回キュウ単独公演「最下位」』(2022年12月21日)

2022年8月17日・18日に座・高円寺2で開催された単独公演を収録。

キュウという漫才師の特異性は、考え方の違う者同士のやり取りを“掛け合い”という形で表現し、純然たる個人の気質を笑いへと昇華する「漫才」という手法を採用しておきながら、その人としての有り様を出来る限り排除した上で、自らが志向する笑いの方程式を準との高い状態で愚直に表現するところにある。それ故に、キュウの漫才からは、いわゆるところの人間臭さを感じさせられない。濁点半濁点の移動に一喜一憂したり、言葉の言い回しの違和感に過剰に固執したり、言葉の頭文字でこっそりあいうえお作文を作っていることを見抜いて激昂したり、根本的な問題点に敢えて触れることなく、凡庸な庶民だと気にならないようなところに対して、殊更に反応してみせる。それはなにやら、融通の利かないポンコツロボット同士のやり取りのように見える。未来に向けて、芸人ロボットの製造に乗り出す科学者がいたならば、彼らの漫才を是非とも参考にすべきだろう。

本作においても、キュウはそんな機械的な漫才を主に演じている。「秘密基地」の話をしている清水に対して、ぴろが「秘密の基地」というように、不要な「の」を付け足しながら対応する『秘密基地』。子どものころ、転校することが多かったために、自己紹介をするのが上手になったというぴろの自己紹介が、あらゆる地方の方言が融合した不可思議で意味不明な言葉と化していることが発覚する『自己紹介』。発言の中で続々と濁点が増殖する『冬』。何処を切っても奇妙な面白味に満ち満ちた、キュウの世界が構築されている。ちなみに、聞くところによると、『自己紹介』のネタは『M-1グランプリ2022』準決勝戦のステージで披露されて、爆笑をかっさらったらしい。M-1グランプリの予選のように、芸人に対して優しい観客が多い現場だと、このネタがウケる状況は確かに想像できる。もし、『自己紹介』のネタを決勝の舞台にかけていたら、結果はどうなっていたのだろう……という、もしもの世界を想像せずにはいられない。ちょっと皮肉の込められたオチも、M-1の観客にはきっとウケたのではないだろうか。

特に私が笑ったのは『地元の遊び』という漫才である。清水が子どものころ、地元で流行っていた「グッドバッドゲーム」のことをぴろも知っていたため、久しぶりにやってみることに。そのルールは、片方が「ボランティア」「募金」「警察官」などのような言葉をアトランダムに繰り出し、もう片方がそれを「グッド」と「バッド」に仕分けるというもの。しばらくの間、仕分ける側となって「グッドバッドゲーム」を楽しんでいた清水だったが、やがて出題側のぴろがゲームの本質的な面白さを理解していないことに腹を立て始めて……。先にも書いたように、キュウの漫才からは人間臭さを感じさせないものだが、だからといって、キュウの漫才は誰がやっても面白くなるというものではない。人畜無害のような雰囲気を醸し出しているぴろ、自己主張の強い見た目の清水誠であるからこそ、引き出せる面白さを明確に引き出している。特に、この『地元の遊び』は、清水がいなければ成立しないネタだろう。グッドバッドゲームをスタートさせるときに、あのなんともいえない表情の面白さがあるからこそ、終盤の畳み掛けが成立する。このネタに関しては、YouTube上で公開されているので、本編を鑑賞する上での参考にしてみても良いかもしれない。

本編に収録されている漫才だけを見ても、キュウというコンビの魅力は存分に伝わることだろう。だが、本作において、最も見るべきは、本公演全体に仕組まれた仕掛けである。通常、漫才師の単独ライブは、漫才のネタとそれらを接続する滑稽な幕間映像によって構成されている。それぞれのネタは独立したもので、これといって共通項が設けられていることもない。ところが、キュウの単独公演は、そういった従来の漫才師の単独ライブとはまったく違ったアプローチを試みている。毎公演ごとに、それぞれの漫才において、ライブ全体を包括する仕掛けが施されているのである。本作にもやはり仕掛けがある。この内容について語ってしまうと、完全なるネタバレになってしまうので、本文で具体的に触れることは出来ない。ただ、どうしても感想を書く上で触れておきたい気持ちが駆り立てられるのは、その内容が、彼ららしからぬ感動を呼び起こすものであったからだ。別に泣けるようなものではない。なんなら少し陳腐にも感じられる。それでも、このほんのりエモーショナルな路線にキュウが乗り出したことに、私は衝撃を覚えずにはいられない。ポンコツロボット同士にエモさが加わったら、それはもはや『ウォーリー』(2008年公開のアニメーション映画)である。今後、キュウがその視点を完全に手に入れてしまったら、それはもう最強漫才師なのかもしれない。

これら本編に加えて、特典として二人による副音声コメンタリーを収録。本編で演じられている漫才に対する客観的な感想や、ネタの誕生秘話や演じる上での苦労などが語られている。彼らのネタに興味がある人は是非。

・本編【61分】

「秘密基地」「自己紹介」「昔のアイツ」「夏祭り」「冬」「地元の遊び」「川」「好きな教科」

・音声特典

キュウの副音声コメンタリー

「男性ブランコ×サンシャイン水族館「トワイライト水族館」」(2022年12月9日)

進化の過程において、今現在は地上で生きることを選択している私たちにとって、海は畏敬の存在である。地上の者にとって、表面的にしか捉えることの出来ない海は、まったくもって得体が知れない。一見すると、穏やかで何も起きていなさそうな海の中には、奇妙奇天烈なデザインの深海生物だの、地上の常識を遥かに凌駕する巨大な生命体だのが、縦横無尽に泳ぎ回っているのである。もっとも、昨今は科学の進歩によって、海中の事情も多分に知れるようになったようだが、それでも一般市民にとって、深層心理の奥底で、海はまだまだ底知れない場所として刻み込まれている。そんな海の生命体を気軽に鑑賞できる水族館もまた、なにやら不可思議な空気に包み込まれている。そして確かに、それぞれの水槽の中では、確かにひとつひとつの海が広がっている。ただ日頃は、家族連れやカップルの雑踏によって、それらがかき消されているに過ぎない。そこには海が、幻想が広がっている。

男性ブランコサンシャイン水族館を舞台に敢行したオンラインコントライブ「トワイライト水族館」は、そんな水族館の幻想を多分に引き出した映像作品である。人気のない水族館へとやってきた男(浦井)が、受付の男(平井)に案内されるがまま館内を歩き回る様子を描いた本作は、どこか現実味のない雰囲気に包み込まれている。男はどうして水族館へとやってきたのか。受付の男は何者なのか。どうして他に客は一人もいないのか。すべてが曖昧なまま、二人は様々な水槽を眺めて回る。それはまるで、見知らぬ国へとやってきて、知らない街を巡り歩く、未知なる旅のように移り変わっていく。さながら、浦井は旅人で、平井は奇妙な案内人だ。そこで繰り広げられる、ちょっとヘンテコな会話の数々。ゆるやかに生じる笑いの波動は、それもまた幻想の中へと消えていく。……本作のタイトルに使われている「トワイライト」とは「夕暮れ」を意味する言葉である。古来より、「夕暮れ」は「逢う魔が時」と呼ばれ、「怪しいものに出会いそうな時間」とされていた。そのことを考慮すると、この非現実的な空気感にも、まったく合点がいくというものである。

これらメインのストーリーに加えて、本編ではまったく別の方を向いている映像コントも多く演じられている。水族館内のニュースをキャスターとプロの魚師が報じる『おさかなNEWS』、カクレクマノミの帽子をかぶった二人が舞台裏でかくれんぼに繰り出す『カクレんぼ』、二人があんまり動かない三体のウツボにアテレコする『ウツボ三兄弟』などなど……その中でも、平井が作詞を担当し、トニーフランクが歌唱する『ペンギンのうた』は秀逸。YouTubeでも配信されているので、是非ともご覧いただきたい。あまりにも愛おしく、それでいて心強い。佐藤雅彦風味。

冒頭で「海は畏敬の存在である」と書いた。海は甚大な災害を招く畏れの存在である。ただ、同時に、海は何にも代えられない敬いの存在でもある。進化の過程において、地上で生きることを選択している私たちも、かつては海に抱かれていた。だからなのかは分からないが、広大な海を眺めていると、心が癒されるような感覚を覚えることがある。この感覚に似たものを、男性ブランコのコントにも感じることがある。例えば、本編において、浦井演じる男の心の中にあったしこりのようなものが、ゆっくりとほどけてなくなっていき、ラストシーンを迎える展開に、そういうものを感じる。ありきたりな表現になるが、その正体はきっと「優しさ」なのだろう。ありきたりではあるが、だからこそ、おざなりにしてはいけないものである。

最後に余談だが、本作を鑑賞して最も驚かされたのは、実はトニーフランクの歌唱だった。正統派のようでいて、さりげに複雑なラインのメロディを歌い上げている。エンディングテーマの後半の崩しかたなど、聴いていて戦慄が走るような衝撃を覚えた。転調なのか、下手なのか、とにもかくにも覚束ないのに、不思議と洗練されている。なんだこれは!

1月9日まで見逃し配信有り。

「新春!お笑い名人寄席」(2023年1月2日)

テツandトモ「なんでだろう」
U字工事「焼き鳥屋」
サンドウィッチマン「弔辞」
ナイツ「寿限無
錦鯉「選挙演説」
ぺこぱ「おむつ替え」
 王道芸人!サンド軍 vs 個性派芸人!ナイツ軍
東京ホテイソン「歴史の授業」(サンド軍)
ウエストランド「あるなしクイズ」(ナイツ軍)
三四郎「弟子志願」(ナイツ軍)
わらふぢなるお「海外」(サンド軍)
ロケット団×成田悠輔「四字熟語」(ナイツ軍)
お見送り芸人しんいち「僕の好きなもの」(サンド軍)
マギー司郎×桜井日奈子「手品コラボ」(サンド軍)
おぼん・こぼん×阿佐ヶ谷姉妹「ジャズコラボ」(ナイツ軍)
 秘蔵映像「ケーシー高峰
美人大喜利「桃花&渡邉美穂&ニコル&野呂&フワちゃん」(司会:春風亭小朝
神田伯山「和田平助
 秘蔵映像「ダチョウ倶楽部
浅草銭湯ロケ「三四郎×かねきよ勝利×ダチョウ倶楽部×大盛真歩×雪平莉左」
 秘蔵映像「三遊亭円楽」~林家三平「円楽師匠の思い出」
爆笑問題「時事漫才~外国版『はじめてのおつかい』」

浅草演芸ホール収録。司会・進行は東貴博と角谷暁子(テレビ東京アナウンサー)。ゲストに大盛真歩(AKB48)、桜井日奈子、成田悠輔、野呂佳代藤田ニコル、フワちゃん、雪平莉左、渡邉美穂

塙が喉をやられてしまって漫才の進行にほんのり支障をきたしていたナイツ、たまに松陰寺が思想を覗かせていてちょっとハラハラさせられたぺこぱ、塙ほどではないにしても喉をやられていたウエストランド、出演者イジりに徹底していたお見送り芸人しんいち、圧巻のパフォーマンスで客を飲み込んでいた神田伯山、他の出演者に比べて圧倒的にネタがカットされていた林家三平(一度、先代のギャグを捨てた方が良いのではないだろうか?)など、色々と見どころのあった今回の放送。フリー部分とネタ部分でボケとツッコミが入れ替わるサンドウィッチマンも面白かったな。

その中でも、圧倒的だったのは、トリを飾った爆笑問題。お馴染みの時事ネタ漫才を経由して、繰り広げられた海外版の『はじめてのおつかい』がかなり衝撃的な内容で、ずっと面白かった。『はじめてのおつかい』のフォーマットはそのままなのだけれど、密売人からコカインを手に入れるまでの道程を描いていて、シンプルな構造だからこそ、毒の強さがよりいっそう強調されていて、たまらなく面白かった。毒の強い笑いを生み落とす後輩たちの出演が多かったために、ちょっといつもよりも強めの毒を仕込んできたのかもしれない。見事な名人芸ぶりだった。だから好きさ、爆笑問題

年始のご挨拶。

あけましておめでとうございます。すが家しのぶです。

 

皆さんは大晦日をどのように過ごされましたか? 私は『ゲームセンターCX』のDVD-BOXをのんべんだらりと眺めておりました。見る、というよりも、眺める、という鑑賞方法が似合っている作品なのであります。個人的には「ジョイメカファイト」の回が妙にコーフンしましたね。ロボットのキャラクター同士による格闘ゲームなんですけれど、キャラクターデザインのちょっと間の抜けた可愛さに反して、なかなかにスリリングなバトルを繰り広げるあたりがたまりませんでした。

晦日当日は「メタルギアソリッド」のプレイを見ていたのですが、面白いですねえ。有野課長のゲームプレイも良かったのですが、単純にストーリーがそそられて、紅白も見ずに引き込まれてしまいました。

 

あとは、例年通りに『孤独のグルメ』の年末スペシャルドラマを見て(毎年、ゴローさんが雑に扱われていて、なんだかとってもかわいそう)、続けざまに『2355・0655 年越しをご一緒にスペシャル』を見ながら新年を迎えました。「年越しをご一緒に」っていう言い回しがステキですよね。今年、卯年の歌を担当していたのがおいでやすこがで、それにもちょっとコーフンしました。こういう番組にユニットで呼ばれてると、もはや一介の即席ユニットではなくて立派な一組のコンビなんだなって再認識させられます。

 

翌朝は、年明け直後の『東京ポッド許可局』をradikoのタイムフリーで聴きました。「東京ポッド許可局的音楽の日」と題し、昨年番組内で放送した楽曲を振り返る内容で、ビールのコマーシャルで起用されていた楽曲を楽しむビールミュージック、ちょっと危ない山本小鉄歌謡、アスリートたちの熱唱を振り返るアスリート歌謡などが流れました。年始に相応しいゴキゲンな企画でありました。いいですねえ、ご陽気ですねえ。

 

こちらはそんな感じのマイウェイな年末年始でございました。

 

せっかくの新年なので、今年の抱負を提示してみようと思います。今年の抱負は「ゴキゲンに過ごす」です。昨年は、とにもかくにもピリピリした一年だったので、今年はもうちょっと心を軽やかにして、気楽に過ごせるようにしたいと思います。まあ、コロナウィルスに対する各位の認識のズレとか、経済不安だとか、政治不信とか、その他もろもろ問題はありますけれど、それはそれとして、これはこれとして、参りたいと思います。DVDのレビューももうちょっと増やせたらいいですね。昨年は15作品しか触れられなかったので……せめて、その倍ぐらいはいきたいな。

 

それでは、今年もどうぞよろしくお願いします。

2023年1月のリリース予定+2022年のリリース記録

11「LIVE STAND 22-23 TOKYO
11「LIVE STAND 22-23 OSAKA

どうも、すが家しのぶです。今年もお疲れさまでした。

皆さんにとって2022年はどういう年でしたか? 私にとって2022年は、まあまあ最悪の年でした。ブログが炎上して、コロナに感染して、ブログの方向性やコロナへの対策の意見の相違から人間不信に陥って、自暴自棄になって、アルコールを大量摂取した挙句に肝機能の数値が爆上がりという、なんだか地獄のような一年でしたね。2023年は、もうちょっと肩の力を抜いて、すべてのものを焼き払う絨毯爆撃のように生きていこうと思います。どんな生き方やねん。

それはさておき2023年のリリース予定ですが、今のところ、『LIVE STAND』のDVDぐらいしか見当たりません。年末にDVDリリースラッシュが巻き起こっていたので、そっちで出し尽くした感が否めませんね。ただ、この『LIVE STAND』のDVDも、ネタと企画がぎっちり詰め込まれた、かなりボリューム感溢れる内容になっているようなので、それなりに見応えはありそうです。でも、それならせっかくだから、二枚組とかにしてほしかったような……?

以下、大晦日なので、2022年にリリースされた作品をまとめてみました。買い逃しなどありましたら、忘れずお買い求めを。

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