白昼夢の視聴覚室

犬も食わない

リメンバー・インパルス

インパルスを見ない。スズキのオートバイのことではない。板倉俊之と堤下敦によって結成されたお笑いコンビのことである。2017年に堤下が事故を起こしてからというもの、コンビとして活動しているところをめっきり見かけなくなってしまった。理由は分からない。事故以降に何度かコンビでテレビに出演している姿を目にした記憶があるので(『ネタパレ』『水曜日のダウンタウン』)、不仲というわけではないようだ。純粋に需要がないのだろうか。2022年に堤下が二度目の事故を起こしてしまったため、コンビ復活の機会を逃してしまったのか。とにかく、現時点において、インパルスがコンビとして稼働しているところを見かける機会は限りなくゼロに近い状況である。しかも、それが当たり前であるかのように、世間からは捉えられてしまっている感がある。確かに、コンビ活動を停止させてしまった原因を作ったのはどっからどう見ても堤下であり、そんな相方と板倉はコンビとして容易に続けていけるものではないだろうと納得されてしまうのも、致し方のないことなのかもしれない。ただ、個人的に引っ掛かっているのは、この現状がインパルスというコンビの価値そのものを引き下げているのではないか、という疑念である。もう少し明確に言ってしまうと、これだけの不祥事を起こしてしまった堤下のインパルスのコントにおけるツッコミとしての演技力・技術力の高さが、低く見積もられてしまっているような気がしたのである。無論、そんなことはない。インパルスのコントの肝となっているものは、板倉が演じる虚飾にまみれたキャラクターの人間臭いみっともなさであることには違いないが(『取調室』に登場したヨハン・リーベルトが特に知られているところだろうか)、その虚飾を引っぺがしてしまう役割として、堤下は常にツッコミとして適格な温度を保っている。時に、威圧的に振る舞うことで、マンガ的なキャラクターによって隠していた気弱な性格を露呈させる。時に、控えめな態度で純粋な感情をぶつけることで、自分の仕事に対して抱いていたプライドの奥底にある貴賤の気持ちを曝け出させる。バラエティ番組において、平場で剛腕を振り回すように単純で強力なツッコミを吐き出していた堤下だが、ことコントにおいては、板倉の発想を完璧に笑いへと転換させるための唯一無二の協力者として、洗練された丁寧な仕事を見せていたのである。インパルスが、インパルスでなくては、インパルスであるからこそ生み出せる、笑い。そんなインパルスが喪失している現状について、私たちはもっとしみじみ考えるべきなのではないだろうかと思うのだ。