白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

善意で舗装された道の上でラバーガールは高らかに笑う

色々とうんざりする毎日ですね。皆さんはうんざりしていますか?

私は最近、Twitterのタイムラインを流れてくる、新型コロナウィルス関連の情報のまとまりのなさにうんざりしております。なんですかねえ。なんなんですかねえ。パンデミック直後はもうちょっとまとまった情報が出て来ていたイメージがあるのですが、時間が経つにつれて、二つの相反する情報が同時間帯に流れてくるようになってしまいました。

例えば、「あんなの風邪みたいなものだ」といっている人もいれば、「罹患すると後遺症が大変」といっている人もいます。「ワクチンは速やかに打たれるべき」という人もいれば、「ワクチンを打つべきではない」という人もいます。「海外に比べれば日本の感染者数はさざ波レベル」という人もいれば、「この程度でオリンピック中止とか(笑)」という人もいます。おかげで、正しい知識も判断力も持ち合わせていない私の頭の中は、常にこんがらがっち劇場が開幕してしまいます。何が正しいのか、何が間違っているのか。

ただ、そういった情報を撒き散らしている人たちも、なにも私のようなすっとこどっこいな人間を捕まえて、パニック状態に陥らせようという意図はないのでしょう。そこにあるのは恐らく善意。善意ゆえに、皆に知ってもらいたいという気持ちでもって、情報を広めたくなるのです。いわゆるところの「地獄への道は善意で舗装」ですね。とはいえ、誰もが黙ってしまうと、それはそれで情報の精査が行われなくなってしまうので、良くないのですが。どうしたらいいのかしらんね。

この"善意"と"情報"の不穏な関係性から思い出されるコントがあります。

ラバーガールのコント『レビュアー』(『ラバーガールLIVE「大水が出た!」』収録)には、「初めてのお店に行く人に失敗してもらいたくない」という善意から、食べログにレビューを書いている男性(大水)の姿が描かれています。しかし、コントが進むにつれて、そのレビューに隠された驚くべき事実が次々と発覚。そのあまりの行動に、それまで大水が演じる素っ頓狂なキャラクターの言動に笑っていた観客も、思わず静まり返ってしまいます。しかし、冷静に考えてみると、レビューサイトの構造上、そのレビューによって損する人は誰もいないような気もします。それでも、後に残るのは、なんだか不気味な余韻。その善意によって舗装された道は、一体何処に続いているのでしょうかねえ。

2021年6月の入荷予定

16「M-1グランプリ2020~漫才は止まらない!

どうも、すが家しのぶです。ただいま『読む余熱』第二号の原稿を書いておりまして、締切が目前に迫っているにもかかわらず、未だに完成の目途が立たないという状況で、完全に頭を抱えております。それでもなんとかかんとか成立させてしまえるところに、私のプロたる所以があるわけですが……自分で言うこっちゃないですね。自覚的にはまだまだセミプロだし。

というわけで六月ですけども、気になるところはM-1のDVDぐらいですかねえ。やっぱり新型コロナウィルスの影響でなかなかライブが出来ないっていうのが大きいようで、例年に比べてかなり控えめなリリースペースになっております。とはいえ、この問題が解決した後も、今度は配信が主流になりそうな雰囲気も漂っているので、DVDコレクターとしては「どうなりますやら!」ってなところですかねえ。ちなみに、M-1のDVDには、決勝戦と敗者復活戦の映像に加えて、もはやお馴染みの「アナザーストーリー」、そして撮り下ろしとなる「漫才か漫才じゃないか論争へのアンサー漫才」が収録されるそうです。当時、わーわー言ってた人たちは、今でもちゃんと興味を持ち続けているのだろうかしらんね。責任持って買いましょうね。

あと、個人的に気になるところでいえば、『テレビ千鳥』のDVDが出るそうですぞ。

『せっかくだもの。(吉住)』(2021年3月31日)

せっかくだもの。 (DVD)

せっかくだもの。 (DVD)

  • 発売日: 2021/03/31
  • メディア: DVD
 

女芸人No.1決定戦 THE W』2020年女王、吉住のベストネタを収録。

吉住はプロダクション人力舎に所属するピン芸人である。大学卒業後、スクールJCAに入学。同期にはアンダーパー、土屋、加賀谷秀明(フタリシズカ)などがいる。卒業後、現在はピン芸人として活動しているかわえなつきと"ムテンカナンバー"を結成するも、一年間の活動を経て方向性の違いから解散。新しいコンビを組むために相方を探している最中、舞台に上がるために作っていたピンのネタがテレビスタッフの目に留まったことをきっかけに、ピン芸人としての活動を開始する。2018年に『女芸人No.1決定戦 THE W』初の決勝進出、2020年に優勝を果たす。本作には、そんな吉住がこれまでに演じてきたネタの中から、『THE W』で優勝を勝ち取った『思い立ったが吉日』『女審判』を含めた選りすぐりのコントが九本収録されている。

どのネタも非常によく出来ているのだが、やはり『女審判』が圧倒的に面白い。野球の試合が長引いて約束の時間に遅れてしまい、仕事着のままやって来た女審判が彼氏から別れ話を切り出される。とにかく審判員の恰好が良い。絶妙にダサい。野球中継などで目にすることの多い服装ではあるが、日常風景の中に投げ込まれると、これほどまでにダサくなってしまうのか。また、そのダサい服装が、吉住によく似合っているからたまらない。ダサいのに似合っている。似合っているのにダサい。自分らしいファッションとはなんぞや?と考えざるを得ない。それらビジュアル面の良さを踏まえた上で、きちんとネタそのものも面白い。男女の別れ話にいちいち飛び込んでくる野球の要素が生み出す違和感がなんともたまらない。彼氏の話を聞くときの中腰のポーズも最高だ。なんか分からんが面白い。しかし、冷静になって考えてみると、「男中心の世界で仕事をこなしている彼女に対して芽生える男の嫉妬」という今の時世では批判の声もあがりそうな視点を、"女審判"という強烈なキャラクターを前面に押し出すことで、よりキャッチーで大衆性の強い笑いに昇華するという、なかなかにとんでもないことをやっているコントなのである。実に上手い。

また、個人的には、『時をかける女』が印象的。高三の春、放課後に土手で野球をしている三人の男女の風景が、とある事実の発覚と同時にまったく別の意味合いのものへと変貌してしまう。正直、衝撃の事実そのものはそこまで意外性のあるものではないのだが、その事実がもたらす余韻を最後まで引っ張るのが絶妙に上手い。また、衝撃の事実を単なるギミックとして片付けることなく、その事実を黙っていたことの気まずさも描いているところがとても良かった。

この他、とある料理を作ってしまう依存症になってしまった主婦の告白を描いた『依存症』、段ボールで作った彼氏とイチャついているところを父親に目撃されてしまう『たっちゃん』、与党議員の女と野党議員の男が秘めたる恋を繰り広げる『許されざる恋』が面白かった。一人コントの女性芸人といえば友近が思い浮かんでくるが、吉住のそれは友近よりも女性であることに重きを置いた視点のコントを演じていて、ポリティカル・コレクトネスの時代において、更なる注目を集めることになりそうである。ならんでもええけど。

これら本編に加えて、特典映像として『思い立ったが吉日』『女審判』の初披露映像、副音声として作家のポテンシャル聡・同期の鈴木コウジロウを加えた三人でのコメンタリーを収録。これを見れば(聞けば)、芸人・吉住の考え方をより理解できるようになる……かもしれない。

【本編】(37分)
「動物のはなし」「思い立ったが吉日」「女審判」「依存症」「アイプチ」「たっちゃん」「許されざる恋」「祠」「時をかける女」

【特典映像】(10分)
「思い立ったが吉日」「女審判」初披露ver.

【音声特典】
吉住・ポテンシャル聡・鈴木コウジロウの副音声コメンタリー

ネクライトーキー『明日にだって』とナインティナインの一年。


ナインティナインのオールナイトニッポン』の放送が再開されてから、間もなく一年が経とうとしている。その間、ナインティナイン自身にも、所属する吉本興業にも、また彼らを取り巻く周辺の人々にも、様々な変化が巻き起こった。そして気付けば、どうしてナインティナインが復活するに至ったのか、なんとなく忘れてしまっていた。忘れるべきではないだろう。だが固執することでもないだろう。その後、岡村隆史の考えがどのように変化したのかは、番組の熱心なリスナーではない私には到底分からないことだが、たまに気まぐれに番組でのトークを聴いてみると、当時のような重苦しいトーンは消滅したように感じられる。それを恋しいと思うリスナーもいるのだろうが、今の方が安心感はある気がする。気がする、だけなのかもしれないけれど。

そんなこととは無関係に、ふと「そういえば『ナインティナインのオールナイトニッポン』になったことで、番組のエンディングテーマも変わったけれど、あれってどんな歌詞なんだろうな」と思い、歌詞を読んでみたところ、なんだか当時の彼らの状況そのもののようで、こういう曲を見つけてくるスタッフの有能さに舌を巻いたのだった。歌っているのはネクライトーキーというバンドで、曲名は『明日にだって』。

かきむしって 踏ん張ったって
諦めが悪いなって 笑われるのさ

そんな歌い出しで始まる『明日にだって』では、ただただ手探りで前へと向かおうと足掻きもがく様が描かれている。ただ、そこに綴られている言葉には、何かを掴めたような描写は見受けられない。それはまさに、自らの発言によって窮地に追いやられ、試行錯誤する岡村隆史の姿そのもののように感じられてならない。

かきむしって 熱を上げて
これだけは譲れないと守ってきた
明日にだって 明日があって
諦めの悪い僕らが笑うのさ

あれから一年が過ぎようとしている。もう一年なんだ。でも、まだ一年なんだ。そして一年が過ぎてからも、明日は忘れずやってくる。昨日を無かったことにしない明日がやってくる。いつかはその場を譲る日が来るのだろうけれど、まだしばらく、もうしばらくは、諦めの悪い彼らが居座り続けそうである。ワーワー。

2021年5月の入荷予定

05「第一回キュウ単独公演「キュウの新ことわざ辞典」
05「第二回キュウ単独公演「時空無きモノ」
19「第22回東京03単独公演「ヤな塩梅」
19「空気階段 単独ライブ「anna」

どうも、すが家しのぶです。ブログの更新が完全に滞っているために、アクセス数が日に日に減少し続けている今日この頃であります。更新する気持ちはあるんですけども、それが結果に結びつかないという状況のため、どっかのタイミングで心身ともに湧き上がってきたら、更新することがあるのではないか……と思っております。まあ、実際のところ、どうなるか分かったもんじゃないですが。自分で自分をなだめながらやっていくしかありません。はい。

それはそれとして今月のリリース予定は以上のラインナップとなります。

個人的にラーメンズ・シソンヌの公演を始めて見たときと同じぐらいの衝撃度だったキュウの単独公演の模様を収録した二作品は、既にHMVなどで取り扱われているものと同じ内容のようです。動画配信サイトなどでも視聴できますが、手元にソフトを置いておきたいコレクター気質の方は手に取ってみても良いかもしれません。ハマるかもしれません。

東京03は昨年の単独公演の模様を収録したものです。待ちに待ったソフト化、手に入れた日にすぐさま鑑賞したいところです。空気階段は今年二月に行われた単独ライブの模様を収めたものです。こちらはまた異常にリリースが早いですね。特典には冠番組空気階段の踊り場』の記録映像が収録されるそうです。空気階段にとっては本作が初の単独名義でのソフトなので、売上次第で今後も公演がソフト化されるかどうか決まるのではないかと思われます。ファンなら買いましょう。私も買います(ファンではないけれど)。

この他、さまぁ~ずの人気トーク番組『さまぁ~ず×さまぁ~ず』の最終回までの模様を収めたDVD-BOXや、謎のユニットKOUGU維新によるミュージカルを収録した『最初で最後のミュージカル KOUGU維新±0 ~聖夜ヲ廻ル大工陣~』などのリリースが予定されております。

頑張れ思春期、負けるな記憶力。

どうも、すが家です。

突然ですが、皆さんの記憶力ってどうですか。

私はどうも最近、思い出そうとして思い出せないことがやたらと増えてきまして、それが「肝心のワードが出てこない」というよりも「肝心のワードに辿り着くまでの前段階で必要なワードが出てこない」事態に陥ることが多く、そんな自分に戦々恐々としている今日この頃であります。例えば、「三四郎」の話をしようとしているのに、「マセキ芸能社」がもう出てこない、といった感じでしょうか。下手すると「出川哲朗」も出てきません。そして以下のようになってしまいます。

 「あのー、ほら。今、金曜のオールナイトニッポンで三時台を担当してる、あのー、あの事務所所属の。あの事務所。ほらー、あのー……ヤバいよヤバいよの人が所属してる。あのコントの人と親友の。あのカンフーと炒飯が好きな。カンフーのあの俳優……あの俳優なんてったっけ?」

もはや地獄絵図です。

というわけで、自分の記憶力と向き合うためのゲームを考えてみました。

その名も「ゴチャゴチャ言わんと思春期の頃に聴きまくっていたCDアルバムの収録曲を全曲思い出すんやゲーム」です。内容はそのままです。思春期の頃に聴きまくっていたアルバムの収録曲を思い出すことで、記憶力を刺激するわけです。……実際のところ、このゲームが記憶力に効果を与えるかどうかは分かりません。でも、なんか上手くいったら、「まだまだ俺の記憶力も捨てたもんじゃないな!」と誇れそうな気がします。気のせいかもしれませんが。

ちょっと試しにやってみましょう。

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「R-1グランプリ2021」(2021年3月7日)

【司会者】
霜降り明星粗品せいや
広瀬アリス

【審査員】
陣内智則
友近
ホリ
古坂大魔王
野田クリスタルマヂカルラブリー
川島明麒麟
ハリウッドザコシショウ
+R-1Twitter投票

 ※現在【Finalステージ】かが屋 賀屋まで

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「R-1グランプリ2021」直後の感想。

R-1グランプリ2021』決勝戦を観終えました。

とにもかくにも驚いたのは、番組としてのまとまりのなさ。現場はどのようなことになっていたのでしょうか。点数発表、審査員コメント、敗者コメント、ありとあらゆる賞レースの醍醐味がサクサクッと処理されていて、たまにSNSで話題になる「こっそり中身を減らしていたお菓子」を食べているような感覚でしたね。むしろ当時よりも美味しくなっている気がするのに、味以外の点で物足りなさを感じてしまう残念感。旧『R-1ぐらんぷり』でも、その辺りはちゃんとしていた筈なんだけどなあ。

そもそも今回の『R-1グランプリ』は、いきなり年齢制限があることを宣言した時点でマイナススタートだったじゃないですか。その失墜した信頼をファイナリストと審査員の確かな顔ぶれで僅かに取り返していた筈なんですよね。だからこそ、新鮮なファイナリストのコメントと、こちらも新鮮な審査員たちによる寸評がほしかったのに、そこをカットしちゃったら元も子もないのです。敗者復活の審査員もかつてのR-1王者が担当したっていうのも素晴らしかったのになあ。どうしてこんなことになってしまったのやら。次の大会ではしっかり改善されているといいのですけれども。

それはそうとしてファイナリストですよ。誰も彼も素晴らしかったですね。

敗者復活を勝ち上がってきたにしては構成が完成され過ぎていたマツモトクラブ、上質なナンセンス漫画とリズミカルな掛け合いを融合させたZAZY、あまりにもバカバカしくて下らないコントをいつまでも見続けたかった土屋、フリとオチの構造に自己批評の視点を持ち込んだ森本サイダー、ファンタジーと脅威の落差だけで勝負に挑んだ吉住、渋い着眼点のフリップネタは評価されなかったが平場で確かな爪痕を残していた寺田寛明、確かな理論の中に人間臭さを落とし込んで極上のコメディを見せたかが屋・賀屋、三コマで構成されたショートネタを絶妙なアングルから繋ぎ合わせたkento fukaya、脈々と受け継がれる"不思議少女系コント"の後継者となるか高田ぽる子、特定のワードを何度も何度も何度も何度も繰り返す狂気のリミックスコントを圧倒的な表現力で見せつけたゆりやんレトリィバァ……。若手ばかりが揃えられたことで、それぞれ違った切り口のネタを観ることが出来ました。特にゆりやんの化物ぶりには改めて驚かされましたね。本当にデビュー十年以内なのか。

それにしても、この決勝進出をきっかけにスターダムにのし上がれる人が出てくるのか、気になるところですね。第二のバカリズム、第二の鳥居みゆきは現れるのでしょうか。個人的には寺田寛明がちょっと良さそうな気がしています。ネタの後の振る舞いが、下手するとネタ以上にインパクトを残せていたような。何かきっかけがあればハネそうな気がしますねえ。

一先ず、こちらからは以上です。