白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「8月22日の彼女 第2回単独ライブ「兎角、椿は群れたがる」」

「8月22日の彼女 第2回単独ライブ「兎角、椿は群れたがる」」を配信で観る。

8月22日の彼女は、FANと千代園るるによって2022年に結成されたお笑いコンビである。芸能事務所には所属しておらず、フリーで活動している。

およそ半年前に開催された前回の公演では、ネタを書いているFANのエロティシズムが大きく反映されているような、陰鬱とした世界観と倒錯した性嗜好を感じさせられるコントが主に演じられていたが、今回はその傾向が薄まり、良い意味でのメジャー感が出始めたような印象を受けた。

もっとも、それはあくまで前半だけに言えることであって、後半で一気に煮詰まった感情が溢れ出ていたようにも感じられたのだが。ある目的によって始められてしまった文通のやり取りがホラー小説のような余韻を残す『文通』、ファーストフード店で隣の席に座った女性からぐいぐい詰め寄られていた男の哀しい顛末を描いた『つまらない人生』、卵に恋をしている男が卵と別れる前に取った行動とは?『卵と恋』の畳み掛けは、流石にこちらの消費カロリーが高すぎる。特に『文通』の衝撃はかなりのものだった。破天荒な展開なのに腹に落ちる、あの異常なバランス感は筆舌に尽くしがたい。

それらの中でも、グッと私の心臓に突き刺さったのは、『麗人』というネタ。恋人がいないという男に友人が紹介してくれた女性が、アニメやマンガの世界から飛び出したような男装の麗人だった……というコントなのだが、このキャラクターがたまらなく良い。基本的には善人なのに、キャラクターが濃厚すぎて相手から引かれてしまうところも良いし、それが否定されることなく受け入れられていく展開もたまらない。しかし、なにより、オチが最高。最高としかいいようがないぐらいに最高だった。

あまりにも最高だったので、思わず配信チケットと合わせて購入したパンフレットを確認したところ、このネタだけは千代園るるが書いていると知って、驚いてしまった。前回の公演で千代園が手掛けたコント『みーくん大好き』もまた、キャラクターの良さが前面に押し出されたコントだったからだ。実はキャラクターメイキングがとんでもなく上手な人なのかもしれない。……かなり無責任なことをいうけれど、FANと千代園がそれぞれ役割分担して一つのネタを仕上げたら、スゴいネタが生まれるのではないだろうか。相乗効果を起こしてくれそうな気がするのだが。

前回の公演よりも分かりやすく、それでいて表現の濃度は変わらず高く、確かな前進を感じさせてくれた今回の公演。次回の公演がどのような方向性に発展していくのか、今から楽しみである。