白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「R-1グランプリ2021」直後の感想。

R-1グランプリ2021』決勝戦を観終えました。

とにもかくにも驚いたのは、番組としてのまとまりのなさ。現場はどのようなことになっていたのでしょうか。点数発表、審査員コメント、敗者コメント、ありとあらゆる賞レースの醍醐味がサクサクッと処理されていて、たまにSNSで話題になる「こっそり中身を減らしていたお菓子」を食べているような感覚でしたね。むしろ当時よりも美味しくなっている気がするのに、味以外の点で物足りなさを感じてしまう残念感。旧『R-1ぐらんぷり』でも、その辺りはちゃんとしていた筈なんだけどなあ。

そもそも今回の『R-1グランプリ』は、いきなり年齢制限があることを宣言した時点でマイナススタートだったじゃないですか。その失墜した信頼をファイナリストと審査員の確かな顔ぶれで僅かに取り返していた筈なんですよね。だからこそ、新鮮なファイナリストのコメントと、こちらも新鮮な審査員たちによる寸評がほしかったのに、そこをカットしちゃったら元も子もないのです。敗者復活の審査員もかつてのR-1王者が担当したっていうのも素晴らしかったのになあ。どうしてこんなことになってしまったのやら。次の大会ではしっかり改善されているといいのですけれども。

それはそうとしてファイナリストですよ。誰も彼も素晴らしかったですね。

敗者復活を勝ち上がってきたにしては構成が完成され過ぎていたマツモトクラブ、上質なナンセンス漫画とリズミカルな掛け合いを融合させたZAZY、あまりにもバカバカしくて下らないコントをいつまでも見続けたかった土屋、フリとオチの構造に自己批評の視点を持ち込んだ森本サイダー、ファンタジーと脅威の落差だけで勝負に挑んだ吉住、渋い着眼点のフリップネタは評価されなかったが平場で確かな爪痕を残していた寺田寛明、確かな理論の中に人間臭さを落とし込んで極上のコメディを見せたかが屋・賀屋、三コマで構成されたショートネタを絶妙なアングルから繋ぎ合わせたkento fukaya、脈々と受け継がれる"不思議少女系コント"の後継者となるか高田ぽる子、特定のワードを何度も何度も何度も何度も繰り返す狂気のリミックスコントを圧倒的な表現力で見せつけたゆりやんレトリィバァ……。若手ばかりが揃えられたことで、それぞれ違った切り口のネタを観ることが出来ました。特にゆりやんの化物ぶりには改めて驚かされましたね。本当にデビュー十年以内なのか。

それにしても、この決勝進出をきっかけにスターダムにのし上がれる人が出てくるのか、気になるところですね。第二のバカリズム、第二の鳥居みゆきは現れるのでしょうか。個人的には寺田寛明がちょっと良さそうな気がしています。ネタの後の振る舞いが、下手するとネタ以上にインパクトを残せていたような。何かきっかけがあればハネそうな気がしますねえ。

一先ず、こちらからは以上です。