白昼夢の視聴覚室

犬も食わない

視力について考える。

メガネを外す。先ほどまではっきりとメリハリのついていた世界が、ぼんやりとした世界に変貌する。人も、物も、景色も、すべての輪郭があやふやだ。その光景は、ある意味ではパラレルワールドのようでもある。いつも見慣れている日常的な世界とは、ちょっとだけ違った世界。そんな錯覚を覚えるからなのか、メガネを外している状態の自分は、いつもよりも無責任でテキトーな行動を取ろうとする傾向にある。例えば、メガネを外した状態で入浴する大浴場のようなところで、掛け湯をせずに湯船につかろうとしたり、周囲の人間のことを考えずに洗い場でアクロバットにシャワーを使おうとしたりしてしまう。無論、常識のある大人として、そのような行為に打って出ることはないのだが、そのタカが外れそうになることは少なくない。冗談で言っているわけではない。人は情報の八割を資格から得ていると聞いたことがある。だとすれば、自分の見えている世界が変化を遂げることで、その思考も無意識に変化してしまっている可能性は、決して否定できないだろう。だから、何が言いたいのかというと、メガネが汚れていたり、傷が入っていたりしているときには、なるべく早めに修理した方がいいかもしれないという話である。その僅かな視界の歪みが、心に影響を及ぼしているかもしれない……って、なんか意図せずしてニセ科学みたいな話になってきたな。まあ、そんなことを個人的に思っているという話なので、あんまり鵜呑みにしないでください。かしこ。