白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「タイタンシネマライブ」(2019年6月15日)

ダニエルズ「コント:宝くじ」
脳みそ夫「ペペロンチー子」
 ゲスト:空気階段「コント:EXILEオーディション」
 ゲスト:アイデンティティ「漫才:野沢雅子に挨拶を」
まんじゅう大帝国「漫才:ゆるキャラ
日本エレキテル連合「コント:朝礼」
 ゲスト:シソンヌ「コント:同居人と」
ウエストランド「漫才:解明されない謎」
 ゲスト:神田松之丞「講談:中村仲蔵
 ゲスト:BOOMER&プリンプリン「ゆうひが丘の総理大臣(令和版)」
爆笑問題「漫才:山里亮太蒼井優の結婚、元KAT-TUN田口の逮捕、丸山穂高議員の失言、原田龍二の不倫騒動」

イオンシネマ高知で観賞。過去のブログ記事によると、最後にタイタンシネマライブを鑑賞したのは2017年10月のことになるらしい。よもや一年以上も期間が空いてしまうとは。当時のメンバーを見てみると、トップリードの名前が。かなり面白いコントをやっていた記憶がある。この直後、あんなに面白いコントをやっていたコンビの片割れが、あんなことをやらかして、コンビを解散してしまうことになろうなどと、当時の私は想像もしなかっただろう(普通はしない)。

今回は神田松之丞が出演するということもあって激しいチケット争奪戦が繰り広げられている……という事前情報を受けていたので、いつもなら当日券をササッと入手していたところを、今回はローソンチケットで前売り券を購入して臨んだ。しかしながら、結果的に高知の劇場はさして埋まらず、他に空席が幾つもあるにも関わらず、前売り券を購入した人たちが無駄に指定席に固められてしまうという哀しい事態に。とはいえ、以前に鑑賞したときのガラガラぶりを思うと、かなりマシな集客数になっていたように思う。シソンヌ、空気階段の影響も大きいのだろうが、ここは松之丞様様といったところだろうか。

オープニングは事務所売り出し中の若手・ダニエルズ。長髪で細身なあさひの女装に定評のあるコンビである。今回も女装して舞台に臨んでいた。ネタは『宝くじ』。宝くじが当選し、舞い上がる夫婦の姿を描いたコントである。二人とも演技力が安定しているだけに、台本によるパフォーマンスがもう少し欲しい気もする。インプラントのくだりは笑った。続けて、お馴染みの脳みそ夫は、全ての登場人物が麺類にちなんでいるコント『ペペロンチー子』。いつもと同様、ことあるごとに台詞に面を絡ませていくバカバカしさがたまらない。一組目のゲスト・空気階段EXILEのメンバーオーディションにやってきたヘンなおじさんのコントを披露。彼らのコントに登場する珍奇な人々はどうしてこうも不思議なパワーを持っているのだろうか。続けて、二組目のゲスト・アイデンティティは、ネタにさせてもらっている野沢雅子の元へいつものモノマネメイクのまま挨拶に行くという漫才コント。野沢雅子の声で失礼な言動を取り続ける田島とそれにしっかりツッコミを入れていく見浦によるいつもの漫才……かと思いきや、終盤でまさかの展開に。あの角度は漫才の発明だ!

初単独ライブを控えているまんじゅう大帝国は、ゆるキャラをテーマに不条理な世界を展開する。途中、某夢の国の住人について触れるくだりがあって、ちょっと冷や冷や。意図的に触れたのか、それとも天然なのか。日本エレキテル連合はとある企業の朝礼風景を描いたコント。ボケらしいボケがあるわけではないのだが、それをコントとして表現するという視点の角度が悪辣とした笑いを誘ってくる。今回、最もヤバかったのは、このコンビだろう。三組目のゲスト・シソンヌは、単独公演でも披露していたコント『同居人の』を披露。ある日、何の相談もなく仕事を辞めて、家に閉じこもり、何も喋らなくなってしまった同居人のとある行動を描いたコントである。伝えようとする意志をもって行動することの大切さを感じさせられるネタなのだが、それと同時に、堪えられない笑いが生み落とされる、この表現力の凄まじさ。とてつもなかった。

そろそろM-1の決勝戦に進出したいウエストランドは、二人がお互いに解明されていない謎について話し合う漫才。爆発力という意味ではイマイチだったかもしれないが、井口の卑屈さ、河本の不敵さ、そして井口の真顔の面白さが引き出されていて、方向性としては良いように思えた。年末に向かって突っ走れ! 四組目のゲスト・神田松之丞はマクラ無しで『中村仲蔵』。役者の血筋ではないために不遇な扱いを受けるも戦い続けた中村仲蔵が『仮名手本忠臣蔵』の五段目に苦心する姿を描いた講談である。冒頭、幼い仲蔵が、役者の仲蔵にすぐさま切り替わる映画的演出にグッと胸を掴まされた。あれは元来の構成なのだろうか。あまりにもドラマチックで、すっかりメロメロになってしまった。それ以降の展開も、まったくテンションを落とすことなく、グググーッと迫力ある高座を見せていた。本来の持ち時間が30分のところを45分も演じてしまった、まさしく熱演であった。そんな松之丞の後を受け取ったのは、もはやゲストと呼ぶには出演頻度が高すぎるBOOMER&プリンプリン。平成の時点で古臭かった質感のコントを、そのまま令和まで持ち込んでいた。彼らの芸もいつかは『中村仲蔵』のように古典になっていくのだろうか。ならんだろうなあ。

そして大トリは爆笑問題南海キャンディーズ山里亮太蒼井優の結婚報道に始まり、ここ最近の時事ネタをこれでもかと漫才にぶち込んでいる。そのいずれもが一級品の面白さ。ただ、最近の爆笑問題は、ネタではない素の状態で二人がやり取りする瞬間が魅力になっている部分も。今回は、田中が太田のボケに「落ち着けよ!」とツッコミ、それに対して太田が「落ち着けよってツッコミはなんだよ」と田中のツッコミとしてのボケに対する優しさの無さに苦言を呈するくだりが笑えた。

エンディングには、予定が詰まっていた空気階段以外の出演者が全員登場。高身長をイジられるシソンヌ、楽屋で自身のラジオを聴きたがっていることを注意される神田松之丞も面白かったが(太田が「ピカソ」の話題を振ったのはアツかった!)、BOOMER&プリンプリンによるおぼん・こぼん情報が最も会場を盛り上げていたように思う。よもや令和の時代におぼん・こぼんがブレイクするとは。……あっ、この場合のブレイクっていうのは売れっ子になるって意味で、決して壊れるという意味では……。

次回は八月末に行われる予定とのこと。また観に行きたいな。