白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

最強のベスト盤。

お笑い芸人の代表作を一枚にまとめているベスト盤の中で、最も完成されている作品といえば、今も昔も『おぎやはぎ Best Live「Jack Pot」』(2004年12月発売)である。過去に行われた単独ライブの中から厳選されたネタを再演するライブの模様が収録されているのだが、【副音声コメンタリー】【マルチアングル機能】【ドランクドラゴンアルファルファとのユニット“東京ヌード”によるコントの再演】など、非常に充実した機能と特典が搭載されている。中でも【マルチアングル機能】は優れモノだ。DVD鑑賞用に編集された【3アングル編集バージョン】と、単一カメラによる舞台映像の【フルサイズバージョン】の2パターンを選択が出来るため、編集された映像では見られなかった演者の動きをチェックすることを可能にしている。個人的には、もっと芸人のライブ映像作品で取り入れられるべき機能だと思っているのだが、残念ながら本作以外の作品では一度もお目にかかったことがない。予算の問題なのだろうか。

そんなベスト盤としては大変に完成されている本作なのだが、肝心の内容はというと、かなりクセの強いものになっている。例えば、おぎやはぎといえば漫才師のイメージが強いが、本作に収録されているネタはすべてコント。『M-1グランプリ』決勝で披露していたような漫才を期待しながら鑑賞すると、肩透かしを食らうことになるだろう。また、コントの内容も、ゲイやロリコン教師のような、やや観る人を選んだテーマになっている。ことによると「まったく笑えなかった」という感想を抱かれるかもしれない。とはいえ、今やテレビを主戦場としているおぎやはぎが、かつて若手だった時代に単独ライブでどのようなネタを披露していたのかを観ることが出来るという意味では、大変に意義のある作品といえるだろう。根本的にやっていることは今も昔も変わらないし……。