白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

ショートコント群雄割拠の時代を思い出してみる。

ショートコントを専門にしている芸人の存在が、もはや忘れ去られようとしている気がする。昔はけっこういたのだ。例えば、かつてホリプロコムに所属していた、江戸むらさき。私服のようなラフな格好で繰り広げられるキレ味鋭いオチのショートコントの中には、未だに忘れられないものも少なくない。私と同世代の人の中には、ガチャガチャに入っているスーパーボールを目にするたびに、彼らのことを思い出している人もいるのではないだろうか。当時のショートコント界隈は、江戸むらさきを中心に発展していたような印象がある。無言で舞台袖からホワイトボードを引っ張り出してきて、そのまま舞台袖へと移動させるパフォーマンスが衝撃的だったモジモジハンターアメリカンバイクに成り切った相方に対して「あれ?鍛治君じゃない?」と、急に現実へと引き戻すオチが多くの人の心に突き刺さったさくらんぼブービー、「ジャンガジャンガ」のブリッジ(ネタとネタを繋ぐギャグのようなもの)が印象的なアンガールズなどは、その代表格といえるだろう。今やコント師としての評価も高いアンガールズだが、コント中に巻き起こる混沌をオチとして採用したショートコントの衝撃は凄まじいものだった。衝撃といえば、関西圏からやってきたイシバシハザマの『イシバシハザマのおかしな話』も衝撃的だった。『野球拳』のメロディを絡めながら展開するショートコントは当然のように面白かったのだが、最後の最後に披露されるショートコント内に登場したキャラクターたちのカーテンコールがたまらなかった。軽やかな印象を与えるショートコントというスタイルに一石を投じる手法だったのではないだろうか。現在、彼らが築き上げてきたショートコントの牙城は、怪奇!YesどんぐりRPGの三人に引き継がれているように思う。彼ら自身はギャガーを自称しているが、ギャグが発動するまでの丁寧なフリや演技は、かつてのショートコントのそれそのものしか見えないからだ。その血脈を絶やさないように、どうか未来へとショートコントを繋いでもらいたい……いや、そんな大袈裟にするような話でもないが……。