白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

賞レースの「ヤラセ」の声について思うこと。

M-1グランプリ』や『キングオブコント』のように大規模な賞レースの結果を受けて、「ヤラセだ!」と声高に叫ぶ人たちがいる。正直なところ、内部の人間でもない限り、賞レースの結果が「ヤラセか」「ヤラセじゃないか」を知ることは出来ないので、その正否について一般人が断言できるものではない。だからこそ、そういった声が鳴り止むことはないのだろう。しかし、それにしても、彼らがいうところの「ヤラセ」とは、果たして誰にとっての「ヤラセ」なのか、私にはよく分からない。大手事務所が売り出したい芸人に箔をつけるために優勝させているのだ、という理屈を目にしたことはある。だが、賞レースで優勝した芸人が必ずしもメディアやライブ界隈で活躍しているとは限らない実情を考えると、あまり説得力がない。売れっ子のバーターとしてテレビバラエティ番組に出演させたり、ネタ番組に積極的に起用してもらったりした方が、効果的でコスパも良いだろう。思うに、優勝した芸人のネタを笑うことが出来なかった自分自身を認めたくないがために、優勝そのものを「ヤラセ」として拒否したい気持ちが湧き立つのではないだろうか。そして、それはつまり、賞レースの結果を非常に重大なものとして受け止めてしまっていることの裏返しともいえる。無論、そんなことはない。プロの芸人であろうと、ズブの素人であろうと、審査員が人間である以上は、どうしても個人の好みが審査に反映されてしまうものである。その個人の感覚の差異を埋めるために、複数人による審査が行われているのだが、それでも決して完璧とはいえない。だから、優勝した芸人のネタを「そんなに面白くない」と感じてしまうのも、致し方の無いことなのである。……と、そんな風に自分が考えられるようになったのは、きっと『爆笑オンエアバトル』の観客審査に一喜一憂する時代を経験したおかげだろう。あの番組、観客による投票審査というシステム上、少なくともヤラセは絶対に起こらないからなあ……。ちなみに、今年の『R-1グランプリ』で優勝した街裏ぴんくに対しても、「ヤラセだ!」という声があがったらしいのだが、トゥインクル・コーポレーションにそんな力なんてないよ!