白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

『R-1グランプリ2024』ファーストステージ:真輝志

『青春のナレーション』。青春ドラマの第一話にありがちな主人公のこれからを予見するナレーションに対して、真輝志演じる物語の主人公(高校の新入生)がツッコミを入れるメタ視点の一人コント。音声がボケ役を担い、演者がツッコミ役に徹するという意味では、そのスタイルは陣内智則のコントに近い。ただ、漫才的な笑いを主体に等身大の役を演じている陣内のコントに対し、今回の真輝志のコントは青春ドラマの主人公という役柄を崩していない。そう考えると、むしろ音声とともにひとつのドラマを紡ぎ出すピン芸人、マツモトクラブのそれに近いのかもしれない。ネタの構成は完全に正攻法。「草野球のベスト16」→「原曲キーで歌えるようになる」→「挫折して2万で売る」とネタのフォーマットを観客に理解させながら内容を徐々にグレードダウンさせていき、しっかりと笑いを取ったところで「軟式ラグビー」の一言できっちりとオチをつける。それからは「英語の勉強」「クラスメートの物語」「ナレーションがバグる」と前半とはまた違った角度の笑いを見せることで、幅の広さを見せつける。そして最後は再び本題へと戻り、ドラマとして見事な着地を見せる。一つのボケを軸としたコントとしては、教則本のような構成だったといえるだろう。ちょっとだけ気になったのは、終盤のナレーション以降のくだり。あのナレーションによってハッピーエンドが約束された後に、おそらくラグビーボールを投げ返すワンシーンを見せるのは、ドラマとしてもコントとしても一つの正解ではあったのだろうとは思う。ただ、笑いのプロたちが厳しい目で審査する決勝戦の場において、更に展開を裏切るような笑いを取りに行った方が良かったのではないか?とも思った。そこまで考えた上での、あのオチだったのだろうけれども。あと、これは意外と大事な要素のような気がするのだけれど、設定の新鮮味に対して偏見の矛先としての「軟式ラグビー」というチョイスは、あまりにも使い古され過ぎているような。割とコントのメインになる部分なので、あそこにも意外性のある部活動を嵌め込んでもらいたかった。