白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

サヨナラバイアスはもうすぐ君を迎えに来て

他人の感想をきっかけにして新しいエンターテインメント作品に触れるとき、それをどのように感じたかを言語化する際には、少なからず注意が必要である。他人の意見を認知している時点で、自らの中に、そのエンタメに対する先入観が発生してしまっているからだ。それは感想の内容にかかわらず起こる。ポジティブな感想を見た後でも、「言われている通りに面白かった!」となる可能性もあれば、「言われているほどは面白くなかった」となる可能性もある。いずれにせよ、他人の感想を軸にした感想になってしまう。無論、それをただ個人的な感想として、心の奥底にそっと仕舞っているのであれば、さして問題はない。問題なのは、自分の感想が他人の感想に影響されて生じたバイアスによって偏向していることに無自覚なまま、それが絶対的に正しいと思い込んで発信してしまうところにある。否、厳密にいえば、それもまた個人の自由ではあるのだが、ことSNSにおいては、影響力のある人間の感想に影響された人々が、そのバイアスに無自覚なままエンタメに触れることで「これこそが正しい」と思考を停止させ、時には炎上にまで発展してしまうところに問題がある。こうなると、「これこそが真実である!これ以外の意見は間違っている!」という排他的な状態にもなりかねない。……なので、他人の感想に触れるときには、常に「理解できるところもあるけれど、果たしてその通りなのだろうかしらん」と、自分自身の軸を意識した上で読んだ方が良いのだろう。私の場合、めちゃめちゃ他人の感想に影響されてしまうので、他の人が書いたM-1キングオブコントの感想は、自分の感想を書き終えてからじゃないと読めないのだけれども。それもまた自衛である。……だから、SNSからも本来ならば距離を置くべきなのだろう、とは思うのだけれど(他人の実況ツイートもまたバイアスになりうる)。難しいやねえ。