白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

私的「2023年のエンタメ」を振り返ってみる

いつもお世話になっております。すがやしのぶです。

例年、この時期は『読む余熱』の原稿を書いていて忙しい状況のあるのですが、既にお察しの通り、今年度はどうやら配信がないということなので、非常にボンヤリとした年の瀬を過ごしております。その影響なのか、『THE SECOND』『キングオブコント』『THE W』『M-1グランプリ』の感想文を書かないまま、年越しを迎えようとしております。「曲がりなりにも“お笑い評論家”を名乗っている人間がそんなことでいいのか?」と、自らの態度について疑問を呈する声が聞こえなくもないですが、いつかやります。多分。きっと。そのうちに。

とはいえ、それにしても何もしないままに2023年の終幕を眺めているのもアレなので、今年一年の記憶を振り返ることにしました。そういうことをやることによって、年末の大掃除にありがちな、大きく状況が改善されたわけではないけれど、とりあえずやったった感を噛み締めようという魂胆であります。「掃除道具を出しただけでエラいじゃん私!もう今日は寝よう!」みたいなヤツです。まあ、そんな真剣にやることでもないので、テキトーに読んでください。年末年始にマジメな文章が書けるバカなんていません。

 

【ラジオ】
今年から放送を開始した番組で現在も聴き続けているのは『SAYONARAシティボーイズ』『Adoのオールナイトニッポン』『あののオールナイトニッポン0』『キュウ 空想の間』『伊集院光のタネ』。フリートークとリスナーとの掛け合いでコーナーを飛ばしまくっているAdo、オープニングトークだけでエンディングまで突っ切ってしまったあの、どちらもパーソナリティとしての底知れなさがたまりません。『空想の間』は、トークはいわゆる若手コンビのラジオという感覚ですが、毎週かける音楽がミスターチルドレンに限定されているのが地味に面白いです。誰か放送リスト作ってくれないかしらん。『伊集院光のタネ』はリスナー投稿メールに特化した番組で、世の中にはいろんな人がいるという当たり前のことを再認識させてくれるのが嬉しいです。

レギュラーで聴いている番組で印象に残っているのは、『オードリーのオールナイトニッポン』での東京ドームからの放送回、『ぺこぱのオールナイトニッポン0』で行われた謎イベント「ザ・アンダーグラウンド」回、『星野源オールナイトニッポン』にゲストとしてフワちゃんと春日クミが登場したスペシャルウィーク回、『アルコ&ピースD.C.GARAGE』でいきなりリスナー募集企画が二週に渡って執り行われた口DJ選手権、『爆笑問題カーボーイ』ジョニー志村ゲスト回、『きつねのこんこんらじお』に中学時代の同級生がやってきてより濃厚な掛け合いが展開された回。特に印象に残っている回が多かったのは『フワちゃんのオールナイトニッポン0』。ANNXからANN0に移行するにあたって暗躍しまくっていた舞台裏を暴露した回、タイの親友・アヤちゃん回、伊集院光降臨回、アンミカ先生フルスロットル回が衝撃でした。苦手な人は苦手だろうけれど、やっぱりフワちゃんのラジオが一番好きかもしれない。

単発系で印象に残っているのは、男性ブランコによる謎のうどんラジオ番組『J-WAVE SPECIAL RADIO UDON』、峯田と山口の二人が最高の選曲を何故か言い争いながらお送りしていた『峯田和伸山口隆オールナイトニッポン0』、朝井リョウのどうしようもない性格の悪さが放送時間内でしっかりと明らかになっていた『朝井リョウ加藤千恵オールナイトニッポン0』、録音じゃなくて生放送でも圧巻の一人喋りを見せつけていた『神田伯山のオールナイトニッポン』、亜空間に放り込まれたような感覚を覚えた『ヨネダ2000のオールナイトニッポンX』、ミラッキ大村とヒャダインが有名アーティストと同じ効能を得られる世間にはあまり知られていないジェネリック楽曲を紹介する特別番組『ジェネ×ジェネ 90s -鳴り響けボクらのJ-POP-』あたり。どうしてもパーソナリティを固定しない日を設けているオールナイトニッポン関係が多くなりますね。

あ、あと、ラジオ番組じゃないですけど、chelmicoオールナイトニッポンPODCASTも楽しいのでオススメです。

 

YouTube
更新されるたびに欠かさずチェックしていたのは『オモコロチャンネル』『バキ童チャンネル』。インターネットカルチャー濃度が高いチャンネルは、共犯的な面白さがクセになるから離れられません。また、どちらのチャンネルも、企画力が異常に高いのが良いですね。今年の『オモコロチャンネル』の個人的ベスト企画は「る」で終わる言葉を山ほど用意した「る攻め」、『バキ童チャンネル』の個人的ベスト企画はピーター博士の元へ春とヒコーキとレンタルぶさいくが訪れる「スウェーデン旅行」。旅行動画は不人気らしいけれど、私は好きです。自由度の高い空間でコントを始める春とヒコーキからしか得られない栄養があると思います(その意味では料理企画も好き)。

今年になって登録したチャンネルでは、『カミナリの記録映像』『ヘアピンまみれ』の二強。『カミナリの記録映像』はテレビゲーム関連の企画がウケる傾向にあるようですが、個人的には二人の男臭さ全開の立ち振る舞いがそもそもたまらないんですよね。タバコは吸うし、酒は飲むし、風俗やモザイク消しのようなエロネタもやるけれど、「敢えてやったったる」みたいな見せつけるような感じがないのがとてもいいです。個人的な今年のベストはスーパータケウチ閉店回でした。対して『ヘアピンまみれ』はとにもかくにも異常な創作性がたまりません。「ビブラスラップ」「麦わら帽子」「パピルス」「恐竜の鳴き声」を自作するという意味の分からないことをやり倒しています。それも生半可な工作レベルではなく、きちんと資料をさらって、理にかなった材料を用意して、きちんと外に出せるレベルにまで作り上げて完成させています。シンプルに技術力が高い。VTuverということで侮っている人もいるかもしれませんが、是非とも一度は見ていただきたいチャンネルです。麦わら帽子回はマジで必見ですよ。

VTuverといえば、今年も『Aoi ch.』の企画力はスゴかったですね。「体内時計で年越し」「虫で出汁をとる」「ChatGPTと料理のレシピ対決」「中華鍋とフライパンでチャーハンの味比べ」「実家の二層式洗濯機とお別れ」「どん兵衛のお揚げを完全再現したい」「古本の落書きガチャ」「日本最古のカレーレシピ再現」「30時間かけてガチのコンソメスープを作る」などなど、VTuberのチャンネルとは思えないほどに渋い企画が目白押し。古本の落書きガチャなんて、もう中年の趣味の領域じゃないですかね。

この他、印象に残っているところでは、『ふっくらすずめクラブ』の「寝起きで飲み会」「親のおもしろ画像」「ネイル守り王」、『散歩するアンドロイド』の「最長片道切符の旅」、『山崎おしるこチャンネル』の「ビーチコーミング」あたりでしょうか。ふっくらすずめクラブは、モンゴルナイフを中心としたメイク動画が強いコンテンツとして成長しているようですが、個人的には生活に根付いた企画が好きなので、そちらも大事にしていってもらいたいところです。

 

【漫画】
今年から買い始めた漫画で「これは当たりだ!」と思ったのは、『税金で買った本』『やまさん ~山小屋三姉妹~』『午後9時15分の演劇論』『ずっと青春ぽいですよ』。特に『税金で買った本』は、不特定多数の人を受け入れる施設として身近だけれど内情はまったくわからない図書館について、素朴な疑問を覚える主人公を通じて丁寧に説明されている情報性の高さに加えて、いろんな人と関わり合いになるからこそ生じる摩擦を極論で解決せずに「あなたはどう思いますか?」と読者に問いかけるようにまとめている話も多く、漫画としての表現の厚みを感じさせられます。

読み続けていて、今年になって完結した作品は『ハコヅメ ~交番女子の逆襲~』『全部ぶっ壊す』『おしかけツインテール』『潮が舞い子が舞い』『君は放課後インソムニア』『ダンジョン飯』『隣のお姉さんが好き』『くまみこ』『厄いよ!アラクシュミ』。いずれの作品も非常に面白かったんですが、オチのつけかたが見事だったのは、やっぱりダンジョン飯。ストレスをまったく感じさせない丁寧なストーリー展開を、最後の最後までやりきっていました。本当に見事としか言いようがありません。あと『よふかしのうた』がもうすぐ最終回なんですよねえ。こちらの最終回はどうなってしまうのか……。

この他、まだ単行本が出ていないところで、個人的に気になっているのは以下の作品。

 

【音楽】
今年、一番聴いたアルバムは、おそらくさだまさしのライブアルバム『さだまさしコンサートツアー2022~孤悲~』。2022年にリリースされたオリジナルアルバム『孤悲』を引っ提げたライブツアーの模様を収録したアルバムなのですが、選曲もトークもとても良いんですよね。『パンプキン・パイとシナモン・ティー』『道化師のソネット』『療養所』と名曲が続く並びも素晴らしいんですが、とにかく『鷽替え』が最高なので、その前フリのトーク太宰府天満宮の鷽替え神事』からの流れて聴いていただきたいです。四角四面なインターネットの世界観に染まった身には、この日本人というものの根源的な有り様を歌ったような歌詞がたまらんのですよ。

楽曲単体では、MC TANIGUCHI『こんなボート』、東京スカパラダイスオーケストラ『Free Free Free』、大瀧詠一NIAGARA ROCK'N’ ROLL ONDO』、青柳拓次『まわし飲み』、スピッツ『未来未来』、米津玄師『地球儀』、リサイクルシテネ『懐かしくなってくれない』あたりをよく聴きました。『地球儀』は何度聴いても泣きそうになります。映画を抜きにして大名曲だと思います。

今年はこんな感じでした。……テレビバラエティ関係は他の人がやっているのを読んでください。今年は本当にテレビを見ずにYouTubeばっかり見ていたので、あんまり蓄積されているものがないんですよ。相変わらずDVDもあんまり観ていないです。来年はもうちょっと観るようにしたいものです。

それでは皆さん、よいお年を。