白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

喪失感はいつも『懐かしくなってくれない』。

「リサイクルシテネ」という不思議な名の音楽ユニットによる楽曲『懐かしくなってくれない』が良くて、このところずっと聴き続けている。

少し前に、『びじゅチューン!』で知られる井上涼の手掛けたMVをきっかけに知ったのだが、ここ最近は純粋に楽曲の魅力にとりつかれている。軽快でポップなメロディに対して、特別な人を失ってしまった喪失感から生じた怒りと哀しみを直球で言語化している歌詞のコントラストが、過ぎていく時間の中での生の苦しみをまざまざと表現していて、聴くたびに心に刺さるものがあるのだ。

とりわけ、以下のくだりにグッとくる。

誰かが死を庇った
さぞ自慢げに諭しだした
お前にわかるもんか
お前なんかに語れるもんか

なんでもかんでも分かったような顔でタコツボの中でウケるような心地の良い主張が蔓延るインターネットの世界に溶け込んでいる身としては、この大切な人を失ってしまった当事者の「お前にわかるもんか」という、あまりにも人間的な態度には、なにか心を揺さぶられるものがある。

この感覚は、RCサクセションの『ヒッピーに捧ぐ』における、「検視官と市役所は君が死んだなんて言うのさ」のくだりを思い出させる。身近な人の喪失という重大な事象を冷静に対処する人への、苛立ちにも似た感情の露出。

そんな安易な言葉でまとめられて納得できることなんて、容易に出来るわけがないのである。

追記。先日、ペットボトル飲料を飲んでいたら、パッケージに「リサイクルしてね」という一文を見つけた。調べてみると、2021年から順次、コカ・コーラの製品に付けられるようになったロゴとのこと。このユニット名の由来は、おそらくこのロゴからきているのだろう。

ペットボトルのリサイクルはプラスチックの使用量削減のために行われているものだが、彼らは一体何を「リサイクルしてね」と呼び掛けているのだろう。考えてみると、ちょっと深みにはまりそうである。