2000年2月9日にサウンドインスタジオで行われたスタジオライブを収録。
1998年4月から2000年3月にかけて放送されていた音楽番組「MUSIC HAMMER」でメインパーソナリティを務めていた所ジョージが、番組の企画として半ば強制的に敢行させられたライブの模様が収められている。前半は朋友・坂崎幸之助とのアコースティックギター弾き語りデュオ、後半は井上鑑らプロのミュージシャンを招いてのバンド演奏という構成。当時、番組の公式サイト限定で販売されていたVHSが、この度DVD化されて市販化された次第である。何故に今。
披露されている楽曲は、当時リリースされたアルバム『洗濯脱水』の収録曲を中心に、過去の名曲や新曲が散りばめられている。
特に前半パートにおける吉田拓郎リスペクト(?)曲は聴きごたえがある。『リンゴ』から生まれた『西瓜』、『せんこう花火』から生まれた『打ち上げ花火』、『まにあうかもしれない』から生まれた『まにあわない』などなど……原曲を知っていても、知らなかったとしても、なんだかバカバカしくてニヤケてしまう。その一方で、『後悔してます』『酒と肴と酒と酒』『ご自由にどうぞ』のような、真面目な曲はしっとりと。オジサンが年相応に歌っている姿が、なんだか不思議と愛おしい。
ところで、このライブの音源が二枚組のCDとして2000年3月にリリースされているのだが、そちらには収録されていなかった二人が原曲を口ずさむくだりが、こちらにはバッチリ収められている。この他にも、けっこうな量のカットシーンが見受けられた。よもや『ポテッ!』がピーター・ポール&マリーの『パフ』から来ているとは思わなかった。不老のドラゴンがふくよかな女性に大変身である。どうしてそうなった。
見どころはやはり、所と坂崎の軽妙なやりとりだろうか。テッテ的にテキトーなことを言い続ける所の発言に対して、ツッコミを入れるでもなく、とはいえ乗っかるでもなく、柔らかな物腰で受け止めていく坂崎の絶妙なバランス感がたまらない。お互いに気を使わない地の関係性が伺える。音楽面としては、坂崎のギターテクニックがあまりにもすんごい『泳げたいやき屋のおじさん』が至極。それから、バックバンドを従えての『恋の唄』。坂崎とコーラス参加の篠原ともえのハーモニーが美しい。もとい、バックバンドを従えてからの演奏は、どれもこれも素晴らしい。『ラクダの商人』『僕の犬』『農家の唄』……たった五人のメンバーによる演奏とは思えない重厚さ。
しかし、一番の見どころは……そんなバックバンドによる演奏が終わり、最後は弾き語りによる『春二番』が披露される……前に、所と坂崎がお互いの関係性について語り始め、なんと坂崎の演奏による『bittersweet samba』に載せて、所が提供読みを始めるくだり! これもCDにはないシーンだったので、素直にコーフンしてしまった。
アーティストとして最も豊潤だった時代に、氏の代表曲と軽妙なスタンスを適切に切り取っている本作は、ミュージシャン・所ジョージを知るに最適な入門書といえるだろう。普段のバラエティでは決して見せることのない、所の自然体の奥に潜む作り手としての深みを感じてほしい。