白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「エレ片コントライブ ~コントの人9~」(2016年2月3日)

2015年2月から3月にかけて全国六都市で開催されたコントライブを収録。

トゥインクル・コーポレーション所属のお笑いコンビ・エレキコミックラーメンズ片桐仁によるユニット“エレ片”が、年に一度のペースで開催しているコントライブ「コントの人」の第九弾である。過去、本来の活動母体とは別に結成されたお笑いユニットは数多く存在しただろうが、全国ツアーを展開するほどにまで規模を拡大した例はなかったのではないだろうか。……面倒臭いから調べないけど。福岡・西鉄ホールでのユニット結成から早10年、思えば遠くへ来たものである。

そんな節目ともいうべき年に開催されたライブだが、披露されているコントは全体的に控え目な印象を受ける。自ら海に飛び込んだ今立の命を救ってくれた謎の関西人が、あらゆる漢字を解体して「人」という字につなげる話をするのだが、まったく心に響かない『たき火』、「空気さえ出来ていればファミレスの中でチ○コを出しても笑いになる」と豪語する先輩だが、ある人物の登場で態度を一変させる『空気』、撮影スタジオの楽屋にて、やつい扮する読者モデルが他の読モの悪口を吹き込んでいく『毒モ』など、彼らならではのバカバカしさと人の悪さが混ざり合っているコントがとても面白いのだが、なんとなく物足りなさを覚える。思うに、前作『エレ片コントライブ ~コントの人8~』に比べて、いまいち盛り上がりに欠けているように感じたためだろう。『ねじまきミドリ』や『カフェ女子』、『全肯定人間』の衝撃は凄まじいものがあったからなあ……あれを超えるネタはなかなか難しい。

とはいえ、ハマったネタもあった。『再婚』がそれだ。母ひとり子ひとりで生きている女性を好きになった今立が、彼女との結婚を息子のいちろう君に認めてもらおうと話を切り出そうとすると、先に「いらっしゃい、お父さん!」と声をかけられてしまう……というコントである。「息子に母親との結婚を認めてもらう」というドラマなどでありがちなシチュエーションに逆転の要素を盛り込んだインパクトもさることながら、戸惑っている今立に「(お父さんだと認めることを)もう少し寝かせましょうか?」と提案するという次の展開も絶妙で、実に魅力的だ。しかも、息子がこんなにも手慣れたリアクションを取ってしまう理由がちゃんと存在し、それもまた笑えるからたまらない。むしろ、そこからがこのコントの本題ともいえるのだが……これ以上はネタバレになるので書けない。各自で確認を。

そんなエレ片「コントの人」は今年も開催される予定である。2月19日から始まる草月ホールでの公演を皮切りに、大阪、福岡、岡山、北海道、宮城、愛知と全国を回るツアーを展開する予定だ。私も岡山公演を鑑賞する予定である。正直、本作のクオリティはイマイチだったが、きっと今回はその物足りなさをさっぱりと忘れさせるようなコントを見せてくれるに違いない。なお、エレ片は今回で「コントの人」を終了する予定らしい。しばらく見ることが出来ないかもしれない三人の雄姿(?)をお見逃しなく。

ちなみに、特典映像には2月28日・草月ホールでのコウメ太夫とのアフタートークの模様が収められている。スタッフと上手く意思疎通が取れず、観客が入っているにも関わらず、まるでリハーサル中のようなやりとりが繰り広げられるグズグズ感は、もはや芸の有無を超越したコウメ太夫という存在のどうしようもなさを感じさせる。恐らく、ある種の人間が見れば、腹が爆発するのではないだろうか。空前絶後のお笑いリトマス試験紙、一度試してみては。 

■本編【71分】

PS4」「オープニング」「たき火」「空気」「毒モ」「再婚」「ギリーに首ったけ」「エンディング」

 

■特典映像【10分】

「アフタートーク ゲスト:コウメ太夫