白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「こそこそチャップリン」(2016年1月30日)

「なんでも太らす」。関が世の中のありとあらゆるものを太らせていく。『M-1グランプリ2015』で披露した漫才のフォーマットはそのままに、内容を一新。ことわざ、歴史上の出来事、古典落語の『じゅげむ』などをどんどん太らせていく。元の言葉と似たような言い回しのデブ関連ワードに置き換えていくスタイルは、漫才中に触れられているジョイマンよりも『ボキャブラ天国』のそれを彷彿と。当時、キャブラーの一人だった土田は、どんな気持ちで彼らのネタを見つめていたのだろう。「デブ、デバー、デッド」「口は禍の元→グミはわがはいのもの」「邪馬台国卑弥呼→やわらかい肉とHere we go!」などが印象的。

 

  • 馬鹿よ貴方は【08】

「白雪姫」。女王に扮した新道が平井を鏡に見立ててコントを始めるのだが……。童話という分かりやすいテーマのネタを持ってきたところに、彼らなりの観客に対する配慮を感じた。ただ、いきなりコントに突入していたため、ちょっとネタの世界に入り込みにくくなってしまっていた。そこはセオリー通りに「白雪姫をやりたい」というやりとりがあれば、もうちょっと観客もコントに集中できたのでは。肝心のネタは相変わらずダウナーで、「友達はどうやって作るか知ってるか? ……金と嘘だよ」「下水道に這いつくばるゴミムシ」「ちょっと競馬行ってくる」など、ちょっと淀んだボケがたまらない。その後で「お茶でも入れようか」と妙に優しくなるところも、またたまらない。

 

【ふきだまりのコーナー】

相席スタート、アンバランス、勝又、サッチ、シンボルタワー、平野ノラ、大福、マツモトクラブ、ラブレターズなすなかにし、小杉まりもが登場。前回ちょっとウケたので今回しゃしゃり出て逆に土田から引かれてしまった「ラブレターズ」、肩掛けバッグのようなサイズのケータイで千代の富士と話していた「平野ノラ」をクローズアップ。

 

  • パパスママス18

「怪盗」。宝を盗んだ怪盗がヘリから刑事に決め台詞を送ろうとするのだが、プロペラの音で声がまったく届かない……。設定そのものはありきたり。かつて、あばれヌンチャクが『立てこもり』の設定で、似たようなコントをやっていたのを思い出す。オチも同じような感じじゃなかったか。全体的にはとても手堅い作りで、コントとしての面白味はイマイチだったけれど、中盤の「LINE」のくだりで上手く現代性を出せていて、そこが少し評価に繋がったように思えた。あと、元公務員・日高の声、四柳のアホっぽい雰囲気、それぞれに伸びしろがありそうな雰囲気。これからの活躍に期待したい。

 

「分かりやすい漫才」。2週勝ち抜き。ツッコミの後にボケが来るスタイルの漫才第三弾。今回は『桃太郎』の粗筋へと繰り出されたツッコミにボケで返す。正直、ネタのクオリティだけを見ると、今回は過去最悪だったのではないかと思う。ボケの本数は少ないし、流れに違和感が残っていたし。ただ、今回初めて具体的な設定を提示したことで、漫才として一本筋の通った内容になっていたことは評価しなくてはならないだろう。今はまだ未完成の段階だが、このフォーマットが更なる発展を遂げて、いずれ完成形として世の中に送り出される日が来るだろうことを、今回の漫才は示唆していた。内容だけを見ると、ちゃんと面白かったしね。「おばあさんは、川へ……生きるか死ぬか究極の選択をしに」とか、流木から生まれたのに名前が桃太郎とか、笑えた。成長次第では、今年のM-1決勝あるんじゃないか。

 

次回の出場は、相席スタート、勝又、大福、タイムマシーン3号(1週勝ち抜き)。