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さあ、水道の蛇口を開け。

『バカリズムライブ「信用」』(2022年11月23日)

2022年4月に草月ホールで開催されたライブの模様を収録。およそ年に一度のペースで開催され続けているバカリズムライブだが、2020年は新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて中止、2021年は緊急事態宣言の延長を受けて無観客での配信公演となってしまった(この模様は『バカリズムライブ「○○」』に収録)ため、本公演はおよそ3年ぶりの有観客状態でのライブとなった。

オープニングを飾るのは、バカリズムが口を使わずに観客の脳に直接語りかけるパフォーマンス『プロローグ』。決して、セリフを覚えるのが面倒臭くなって、事前に録音した音源を再生して、さも観客の脳に直接語りかけているかのように見せかけているわけではない。三年ぶりに観客を入れた状態で開催するライブに向けて、進化したところを見ていただきたいという思いから、一年をかけて身につけた能力である。……演者と観客という色々な意味での信用によって結ばれた関係性を、まるで手のひらの上で転がすかのように器用に笑いへと転換する手練れぶりが、あまりにも見事なオープニングアクトである。また、殆ど口を使うことなく客前でパフォーマンスを披露する姿に、コロナ禍における感染防止対策からの着想を感じさせられた。新型コロナウィルスに踊らされ続けた果てに開催されたライブだからこそ、余計にそう感じてしまったのかもしれない。

本編で演じられているコントは全五本。何もしていないのに幽霊の恨みを買ってしまった男が、その理不尽な態度に怒りを爆発させる『feels like HEAVEN』。妻を亡くし、遠い地で暮らしている息子夫婦の元へ引っ越すため、今週中に仕事を辞める予定の社内清掃員の男性が、誠実で真面目で優しい会社員から「ほしいもの」を尋ねられ……『最後の願い』。学園祭で一緒にバンド演奏を披露した仲間から「東京で一緒にバンドをやらないか?」と誘われた少年が、とある“ひっかかること”について説明する『僕たちの未来』。ちょっと気分が高揚したときに奇妙な現象に見舞われるようになってしまった『いい』。信用できる同僚から奇妙なお願い事をされた男が、その理由を尋ねてみると、その同僚はなんと「実は俺、火星人なのね」と言い出して……『終末の約束』。これらのネタに加えて、オリジナルアニメーションコントが幕間映像として四本収められている。

印象に残っているネタは『最後の願い』。「妻に先立たれて、息子夫婦の元でお世話になろうとしている老清掃員」が、社員に「ややセンシティブでサディスティックなお願いをする」というギャップを描いているコントなのだが、芸人のネタとして昇華されるようなオーソドックスに性的なプレイというには生々しさが感じられ、他のコントに比べてバカリズムの根源的な部分が露出しているような印象を受けた。バカリズムのように計算された笑いに定評がある芸人が、こういう側面をチラッと見せてくれると、なんだかたまらなく危ういものを見せられたような気持ちにさせられる。とても良い。

それはそれとして、地球人にしか見えない宇宙人が登場するくだりだとか(『終末の約束』)、幽霊に対して怒りをぶつけるくだりだとか(『feels like HEAVEN』)、本作には2025年に放送されたバカリズム脚本のテレビドラマ『ホットスポット』との共通点が多い印象を受けた。そういえば、あのドラマも主人公たちと宇宙人の【信用】をテーマにした作品だった。そういった非現実的な存在たちが詰め込まれているバカリズムの思考の引き出しの中には、【信用】と書かれた小箱が入っているのかもしれない。だとしたら、それはとても素敵なことのような気がしないでもない。

・本編(94分)
『プロローグ』「オープニング」『feels like HEAVEN』「数えろ」『最後の願い』「小太郎」『僕たちの未来』「ゼロ」『いい』「天使と悪魔」『終末の約束』「エンディング」