令和時代のお笑い公論

笑いの粗熱が冷めるまで

「バカリズムライブ「〇〇」」(2021年11月24日)

2021年5月14日・15日に草月ホールより無観客配信された公演を収録。

当初、公演は5月13日から16日にかけて開催される予定だったのだが、新型コロナウィルスの感染拡大防止を目的に発令された緊急事態宣言を受け、無観客状態での配信公園へと切り替えられた。もっとも、バカリズムは前年にもコロナ禍の影響を受けて毎年の恒例となっていた単独公演を中止、バカリズムがプレゼン形式でネタを繰り広げるスタイルの公演「バカリズム案」の有料オンライン配信を行った経験があるため、この事態もある程度は想定できていたのかもしれない。

ライブは『プロローグ』で幕を開ける。まだ役に入っていない、いわゆる素の状態にあるバカリズムが、これから始まるライブについてストーリーテラーのように語り掛けるパートである。とはいえ、そこはやはりバカリズムなので、いわゆる語りだけでは終わらない。奇妙な公演タイトルの話を始めたかと思えば、公演で演じるコントを書き上げるまでの期間の話に繋げて、いつしか「作家としてのバカリズム」と「演者としてのバカリズム」が分裂し、それぞれのバカリズムが言い争いを始めてしまう。このシチュエーションは、おそらく『ドラえもん』の名作エピソード「ドラえもんだらけ」に着想を得たものだろう(てんとう虫コミックス5巻収録)。藤子・F・不二雄好きにはちょっと嬉しいパフォーマンスに、すぐさま心を奪われてしまった。

『プロローグ』が終わると、後はひたすらにコントが続く。とあるクラスの担任が副担任の策略に気付いてしまう『〇〇先生』、会社の上司が思わぬ提案を切り出し始める『手のひらを〇〇に』、ケンカの日々を過ごしていた不良が謎の男の誘いに乗せられてジムへと連れて行かれる『10オンスの〇〇』などなど、バカリズムらしい鋭い着眼点のネタが展開されている。時折、芸能界のなにかしらかに対する不満が滲み出ているあたりに、売れっ子芸人となって久しいバカリズムの中で蓄積されている苛立ちのようなものが感じられた。ひょっとすると、このコロナ禍において、多くの人が無意識のうちにストレスを溜め込んでしまっているように、バカリズムの中でも同様のことが起きているのかもしれない。

とりわけ、そのあまりの切り口の鋭さに、一瞬笑うことを忘れてしまいそうになったのは『海の上の〇〇』。五年間付き合っていた彼氏と別れた女性が、自分の気持ちを区切りをつけるために一人旅へ。旅先で小型の観光船に乗り込んだところ、イルカの大群に遭遇。当初、奇跡的な出会いに興奮していた女性だったが、いつまでも船に並走して泳ぎ続けるイルカに、だんだんと飽き始めて……。イルカと女性の関係性は明らかに別の何かを置き換えたもので、その正体について勘付いたときの「うわーっ」な感じは過去最高。オチの角度も、その置き換えたものを想像した上で捉えるとなかなかにキツく、ドキリとさせられた。おっかねえ!

・本編(93分)
「プロローグ」「オープニング」「○○先生」「勇者の紋章」「海の上の○○」「NAINAINAI!」「手のひらを○○に」「麺屋 桂木」「10オンスの○○」「勇者の紋章Ⅱ」「○○な男」「マルマルショッピング」「1○○」「エンディング」