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『M-1グランプリ』ラストイヤーに関する余談。

M-1グランプリ』の出場資格には“結成年数の制限”がある。旧M-1(01年~10年)では【結成から10年以内】、復活後のM-1(15年~)では【結成から15年以内】のユニットにのみ出場資格が与えられている。「いつまでも売れずにくすぶっている芸人が辞めるきっかけにするため」という理由だったように記憶している。この規定のために、結成15年目を迎えたことで、翌年以降には出場資格が剥奪されてしまう漫才師は“ラストイヤー組”と呼ばれている。今回の記事では、そんなラストイヤー組についてまとめてみようと思う。

まずは旧M-1のファイナリストから見ていきたいところなのだが、旧M-1における規定はちょっとややこしいことになっている。まず、01年大会・02年大会の出場資格は、厳密にいうと【結成10年未満】となっている。このため、01年大会のラストイヤーは92年結成組、02年大会のラストイヤーは93年結成組になる。また、03年大会から09年大会までは【4月を基準として結成10年】、10年大会は【5月を基準として結成10年】となっている。そのため、03年大会ファイナリストのアメリカザリガニは1994年1月の結成なので、この年がラストイヤーになる……らしい。ああ、ややこしい。

……と、このように大変に面倒臭いことになっているため、以下のデータはWikipediaに記載されているものをそのまま活用させていただくことにした。もしもデータに間違いが見られた場合は、Wikipediaが悪いということである。そういうことである。そういうことにする。知らん。以下、そういうデータである。

01年:中川家
02年:ますだおかだ
03年:2丁拳銃アメリカザリガニ
04年:アンタッチャブルタカアンドトシ
05年:品川庄司
06年:ライセンス(敗者復活)
07年:トータルテンボス
08年:ザ・パンチ
09年:(不在)
10年:笑い飯パンクブーブー

10年大会はM-1の終了が宣言されていたため、そもそもラストイヤーという概念が存在しないのだが、本来のルール通りであればラストイヤーとなる00年結成の笑い飯と01年結成のパンクブーブーの名前を載せた。それにしても、なかなかにとんでもないメンバーではないだろうか。チャンピオンが五組もいるし、タカアンドトシトータルテンボスのような実力者も名を連ねている。十年の月日によって培われた技量が確かに発揮されたことがよく分かる。

これを踏まえた上で、復活後のM-1におけるラストイヤー組を見てみよう。ちなみに、復活後のM-1における結成年数の基準は1月なので、シンプルに結成年だけで出場資格を確認することが出来る。最初からそうすれば良かったのである。

15年:タイムマシーン3号
16年:(不在)
17年:とろサーモン
18年:ギャロップジャルジャルスーパーマラドーナ
19年:かまいたち
20年:(不在)
21年:ハライチ(敗者復活)
22年:(不在)
23年:(不在)

M-1と同様、なかなかに豪華なラインナップである。……が、当時に比べて、明らかに空白が多い。特にここ最近、ストレートで決勝進出を果たしたラストイヤー組は4大会連続で出てきていないことになる。もっと言ってしまうと、ラストイヤー組で初の決勝進出を果たしたユニットは、5大会連続で現れていないことになる。その門扉があからさまに狭まっている。とはいえ、この時期のラストイヤー組に、有力候補が存在しなかった可能性もある。というわけで、各大会において準決勝進出を果たした、ラストイヤー組もリスト化してみた。

19年:囲碁将棋、天竺鼠
20年:学天即
21年:アルコ&ピース、ハライチ
22年:かもめんたる
23年:ななまがり、ヘンダーソン

いや、濃いいな!けっこう濃いいな!

こうして比較すると、旧M-1には明らかにラストイヤー組を意識した選出がなされていたのに対し、復活後のM-1はさほどそこを意識しなくなってしまったことが分かる。この傾向が表れるようになった19年~20年ごろといえば、お笑い第七世代という言葉が注目を集めるようになった時期である。ひょっとするとM-1という大会が、漫才師としての技術を身につけた漫才師よりも、若くて新しさが感じられる漫才師を求めるようになった結果、こういう傾向が見られるようになったのかもしれない。……もっとも、M-1という大会に求められていたのは、そもそもそういう要素だったような気もするが。

ちなみに、2024年大会におけるラストイヤー組には、「アルミカン」「エル・カブキ」「カゲヤマ」「スパイク」「セルライトスパ」「ダイタク」「デルマパンゲ」「トット」「トム・ブラウン」「モグライダー」「ロングコートダディ」などがいる。今年の大会において、彼らの中の誰かが決勝進出を決めることが出来るのか……要注目である。