白昼夢の視聴覚室

犬も食わない

「M-1グランプリ2023」直後の感想。

まとまった感想も追って公開すると思いますが、一先ず。

 

【ファーストステージ】

・令和ロマン
実力があるコンビという認識はあったけれど、初の決勝進出で、ここまでM-1にハマる漫才を持ってこれたのには驚いた。

 

・シシガシラ(敗者復活)
もっと独自の切り口でハゲネタを展開させる漫才を持っていることは過去の準々決勝で知っているので、ここはシンプルに彼らがやりたいネタを持ってきたということなのだろう。

 

さや香
昨年のスタイルと同じタイプのネタで仕掛けてきたところに、『鳥人』と同じスタイルのネタで優勝をもぎ取った2010年の笑い飯を彷彿と。

 

・カベポスター
去年のネタよりも底意地の悪さが滲み出ていて、より人間的な面白さが乗っかってきた気がするけれど、きちっとした構成からはどうしても台本が見えてしまっている。台本が見える上で……というのが欲しい(そういう意味では彼らのライバルはキュウなのかもしれない)。

 

マユリカ
とにかく中谷がかかっていた印象。漫才全体が盛り上がっていなかったのに、ボケの要所要所で爆笑が巻き起こっていたところに、彼らのボケの独自性の高さを改めて。

 

・ヤ―レンズ
全体的に令和ロマンの漫才に飲まれてしまっている中で繰り出された楢原の軽妙なキャラクターが、適度にハマッたように感じた。以前のM-1であれば、むしろ彼らこそが空気に飲まれていたような気がする。

 

真空ジェシカ
過去二回の決勝で披露した漫才に比べて、いきなりエンジン全開な世界観で始まったので、ちょっと面喰ってしまった。それでも精度の高いボケは健在で、一気に引き込まれた。

 

ダンビラムーチョ
漫才において版権ネタは評価されにくいという傾向をガン無視したネタ選びに唖然としてしまって、あまり記憶に残っていない。後でちゃんと見直そう。

 

・くらげ
「とてつもない量のワードを羅列している様子が面白い」のではなく、「とてつもない量のワードの中から、クスリと笑えるワードを目立つように抽出して笑いを起こす」手法を取っていて、とても渋い戦い方をしているなと感じた。とはいえ、山場を期待しているところでネタが終わってしまった感もあり、低得点も仕方がないのかなと。

 

モグライダー
ともしげの好調が主に言及されていたけれど、先のダンビラムーチョが歌い上げるネタを演じていた影響が地味に出ていたような気もする。あと、敗者復活戦から立て続けに漫才を見続けてきた後で、彼らのアドリブ混じりの掛け合いを楽しむタイプの漫才を見る心の余裕がこちらから失われてしまっていたような気もする。

 

【最終決戦】

・令和ロマン
何年か前の準々決勝で披露していた『町工場ドラマ』を、少しばかり改変したネタで勝負。もっとドラマとして展開していたイメージがあったため、かなり序盤でネタが終わってしまったことに肩透かし。ただ、町工場の作業のくだりや、吉本興業の関係者の登場のくだりなど、彼らなりにパンチラインを増やした結果として、そういう形に収まったのだろう。

 

・ヤ―レンズ
昨年の敗者復活戦で披露していた『ラーメン屋』で勝負。当時は楢原のキャラクター改変に引っかかってしまったこともあってか、あまり面白いと感じられなかったのだが、キャラの濃度を抑えたのか、こちらがキャラに慣れてしまったのか、その軽やかな面白さと卓越したワードセンスをきちんと堪能することが出来た。

 

さや香
完全に呆気に取られてしまって、記憶にない。ああいう意味の分からない主張を延々と繰り広げるタイプのネタは、他にもっと得意としている人たちがいるので、そっちのコンビの方がどうにもこうにも思い出されて仕方がなかった(特にデルマパンゲ)。

 

【結果】
令和ロマンとヤーレンズの一騎打ちになるだろうことは予測していたが、ここまで切迫した戦いになるとは思っていなかったので、ここ数年で一番興奮した結果発表だったかもしれない。令和ロマンはいずれ優勝するだろうとは思っていたが、初の決勝進出で優勝をもぎ取ってしまうとは思ってもみなかった。くるまが「来年もM-1に出る」と言っていたが、本当に出場して、決勝の場をしっかりとかき回すような存在になってくれるとちょっと面白いかもしれない。とにもかくにも優勝おめでとう!