白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「令和2年度 NHK新人お笑い大賞」(2020年11月1日)

【Aグループ】
吉住「銀行強盗」
THIS IS パン「女の子を自宅でおもてなし」
フタリシズカ「アイドルのオーディション」
令和ロマン「ナンパ」

【Bグループ】
チェリー大作戦「試験」
カベポスター「ワールドカップと誕生日」
さや香「人体の不思議」
ねこ屋敷「ちんすこう」

【決勝】
令和ロマン「ケータイ屋」
さや香「一番好きな寿司ネタ」

夕刻、何もすることがなく、テレビを眺めながらぼんやりとしていたら、偶然にも放送時間を迎えたのでそのまま視聴。司会は、フットボールアワー中川安奈NHKアナウンサー)。審査員は、西川きよし渡辺正行久本雅美立川志らく、二谷裕真(NHK制作局第5制作ユニット(音楽・芸能)ジャンル長)。

Aグループは全体的に低調。はっきりとしたボケを見せないリアリティ重視の一人コントが不穏な後味を残した吉住。ボケとツッコミのポテンシャルの高さにまだ少し内容が追いついていないように感じられたTHIS IS パン。設定が上手いのに終盤で「リコーダーとボイパを同時に披露する」という大道芸的なボケをぶち込むことで視点をブレさせてしまったフタリシズカ。それぞれ、決して悪くはないのだが、いずれも爆発力に欠け、なかなか盛り上がらない。そんな状況下で登場した令和ロマンが、無感情に淡々と進行する喋りだからこそボケのセンスが強烈な印象を残す漫才を披露。満場一致で決戦戦へと駒を進める。

ここでようやく場が温まったのか、Bグループは大いにグルーヴ。「試験中に歌い出したヤツが現れたが、試験を受けている学生全員がマスクをしているため、犯人が誰なのかまったく分からない」という設定があまりにも時代にマッチし過ぎていたチェリー大作戦。ワールドカップと誕生日と手品、一見するとまったく無関係な要素を不思議に組み合わせて、最終的に洗練されたホラーテイストのコントへと落とし込んだカベポスター。石井の話に新山が過剰に食いつく様が狂気性を帯びていたさや香。『エンタの神様』的な歌ネタかと思いきや、絶妙なあるあるを過剰なメッセージで歌い上げることで、独特の空気を形成させていたねこ屋敷。どのコンビも非常に面白かったのだが、僅差でさや香が予選を制する。

勝戦は令和ロマンとさや香による直接対決。まずは令和ロマン。予選と同様、淡々とした会話の中で、激しくセンスが燃え上がる漫才を披露する。確かに面白いのだが、あまりにもつかみどころがなくて、ちょっと記憶に残りにくいネタかな……と思っていたところで、突如として菅総理を絡めたボケをぶち込み、グッと全体を引き締める。対するさや香は、石井の一番好きな寿司ネタが芽ネギであることに、新山が困惑し続ける漫才。これもまた面白いのだが、新山の言い分に対する共感の度合いが強くて、一本目に比べて狂気性に欠ける。さや香の漫才は、新山の意見が「ちょっと理解できるけど、そんな考えなくてもええようなことを煮詰める」ぐらいの方が、その激しい演技を活かしきれるような気がする。

静の漫才と動の漫才によるぶつかり合いを制したのは令和ロマン。この勢いでM-1初決勝進出も狙うことだろう。おめでとさんでしたー。