2017年5月20日に明治安田生命ホールで行われた単独ライブを収録。彼らの単独ライブがソフト化されるのは、2012年2月にリリースされた『タイムマシーン3号 第3回単独ライブ ひまわり畑でつかまえて』以来のこと。また、特典映像として、彼らの代表作である漫才『太らせる』『落語』を収録。
◆本編【128分】
漫才「デブリンピック」
VTR「ラッパーへの道1」
コント「お会計」
VTR「ラッパーへの道2」
漫才「妹」
VTR「昔のネタ帳」
漫才「オーダー・ザ・ライス」
VTR「関の絵」
コント「喫茶店」
VTR「ラッパーへの道3」
漫才「温泉旅館」
◆特典映像【14分】
漫才「太らせる」
漫才「落語」
VTR「ラッパーへの道(番外編)」
タイムマシーン3号といえば漫才のイメージが強い。本編でも四本の漫才が披露されているのだが、むしろネタ作りに対する気合が感じられたのはコントの方だった。「M-1グランプリ」への出場資格を失い、「キングオブコント2016」ファイナリストに選出された後の単独ライブなので、本格的にコントの方面へとシフトを切り替えていこうという算段だったのかもしれない。実際のところ、かなり出来は良かった。ただ、どちらも一つのパターンをとことん掘り下げていくタイプのコントで、構成の上手さが際立ってはいたものの、キングオブコントで披露された『小銭ジャラジャラ』レベルのインパクトは生み出せていなかった。とはいえ、無駄な要素をとことん省き、徹底的に軸の部分だけで勝負してみせようという姿勢は嫌いじゃない。結果、「キングオブコント2017」では準々決勝戦で敗退という憂き目を見たが、諦めることなく今後ともコント作りに取り組んでもらいたい。
本編で披露されている漫才は四本。そのうち二本がデブネタで、残りはしゃべくり漫才と漫才コントが一本ずつ……という布陣になっている。
デブネタに関しては、もはや滑り知らずといっても過言ではない。来たるべきデブばかりの世界に相応しいスポーツの祭典を勝手に創作した『デブリンピック』、提示されたワードに対して欲望を抑えきれずに「ご飯ください!」と声に出してしまった方が負けとなるオリジナルゲームで競う『オーダー・ザ・ライス』、どちらも非常に面白かった。とりわけ『オーダー・ザ・ライス』は、コントと同様に一つのパターンをとことん掘り下げていくタイプのネタではあったのだが、根本の設定が突き抜けてバカバカしかったためか、どういうオチになるのか分かっているのに笑ってしまった。
対して、関が山本に妹のことを紹介するしゃべくり漫才『妹』、温泉旅館の人間を演じる関が山本を案内する漫才コント『温泉旅館』は、どちらも今一つの出来。否、ボケの一つ一つを拾い上げてみると、それらは確かに面白い。しかし、“デブ”という漫才の軸となる要素を削り落としているために、それらがすっかり散らばってしまっている。実に勿体無い。妹の奇行をアトランダムに説明していく『妹』はともかくとして、順を追って展開している筈の『温泉旅館』ですら、そのような印象を受けるというのは……あまり宜しくない状況だ。デブネタという全体を支える屋台骨がしっかりと築かれていなければ、ここまでネタが脆弱になってしまうのか。……以前に彼らの漫才を観たときには、そこまで違和感を覚えなかったのだが。近年、漫才をデブネタに特化した結果、そのような状態になってしまったのだろうか。理由は分からないが、とても驚いた。
これらのネタの合間には、関がラッパーとなってフリースタイルバトルに参戦するまでの行程を撮影した「ラッパーへの道」を中心とした、五本の幕間映像が収められている。この「ラッパーへの道」がとても辛かった。漫才『太らせる』で韻を踏んだボケを連発していることから、タイムマシーン3号はヒップホップ業界からも注目を集めている……と語る山本が、関をフリースタイルバトルに参戦させる映像なのだが、半ばドッキリのような状態でライブ会場へと連れ込まれている関の姿があまりにも不憫で、本番のシーンはまるで直視できなかった。いわゆる“共感性羞恥”である。告白するが、お笑い芸人のDVDを集め始めて十年以上経つ身であるにも関わらず、本作で初めて観ているのが辛くなって一時停止ボタンを連発してしまった。二人が昔のネタ帳を読み返しながら当時の恥ずかしい記録を噛み締める「昔のネタ帳」、そのネタ帳に描かれた関の深い闇が感じられるイラストを集めてみた「関の絵」はとても良かったのだが……私には些か厳しかった。
……と、なにやら文句ばかりを並べ立ててしまったが、以前にリリースされた単独ライブのDVDと比べてみたら、その完成度は格段に良くなっている。当時の彼らはコントで世界観を出そうというガラにもないことをやっていたが、少なくとも本作ではそのような姿勢は見せておらず、自らの力だけで出来る限界点をしっかりと認識できている。それだけでも立派な成長だ。とはいえ、「爆笑オンエアバトル」での活躍を目の当たりにしていた身としては、彼らには更なる高みを目指してもらいたい……という気持ちも無くはない。もっと、もっと上へ行かなくてはならないのだ、このコンビには。