白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「爆笑問題の検索ちゃん 芸人ちゃんネタ祭り 実力派芸人大集合SP」(2020年12月26日)

ミキ「漫才:星座占い」
ミルクボーイ「漫才:叔父」
アルコ&ピース「漫才:監視」
ロバート「コント:鳥越生配信TV」
ロッチ「コント:before」
東京03「コント:前向きな言葉」
ナイツ「漫才:コンプレックス」
中川家「漫才:グルメロケ」
東×土田×古坂大魔王「懐かしショートコント」
友近「検証漫談」
爆笑問題「漫才:学園ラブコメディ」

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

というわけで、新しい年を迎えましたので、やっぱり年末年始の特番をチェックしている今日この頃であります。年末を飾りますのは、やはり『芸人ちゃんネタ祭り』。昨年は「第7世代をぶっ潰せ!」と題し、第7世代を代表するメンバーにお馴染みの面々が立ち向かう構図を採っていましたが、今年はシンプルなネタ番組に立ち返っていたように思います。特筆するとすればアルコ&ピースの参加なのですが、今年は何がきっかけとなったのか、アルピーの二人がネタ番組に出演する頻度が高く、そこもそれほど意外ではありませんでしたね。

ただ、ちょっとネタが凄かったです。例えば、友近の『検証漫談』。友近は昨年の『ヒール講談』、一昨年の『大阪ブロードウェイ』も凄まじかったですが、今年は「どんな洋楽であっても、小倉智昭の「おはようございまーす!」の挨拶が入ってしまえば、途端に朝の情報番組に変えてしまうのか?」という疑問を検証するネタを披露していました。検証したからって何がどうなるわけではないのですが。なんだかあらゆる名曲を陳腐にしてしまうテレビショーを小バカにしているみたいで、たまらなく面白かったです。

あと凄かったのが爆笑問題。お馴染みの時事漫才で2020年を振り返るのかと思いきや、なんと大半を「懐かしい漫画あるある」で埋め尽くしておきながら、後半で怒涛の急展開を見せるという物語性の高いネタを披露。時事漫才で見せていたバカバカしさとはまったく逆の視点と着眼点で魅せるタイプの漫才で、ちょっと驚きました。なんだかラジオに送られたメールを読み上げる太田と、その内容に真正面からツッコミを入れるウーチャカを思い出しましたね。2021年はこのスタイルで行くのか、それとも、『検索ちゃん』というホームだからこそ出来たスタイルなのか。おそらくは後者でしょうが、まだまだ爆笑問題という漫才師が底知れないことをまざまざと見せつけるパフォーマンスでありました。いやー、凄かったな。

2020年の入荷予定(まとめ)+暮れの挨拶

0129「エレ片 光光☆コントの人
0129「ナイツ独演会 エルやエスの必需品
0129「詰め合わせ」(まんじゅう大帝国)
0129「アンタッチャブル柴田の「超ワロタwwww」~もうすぐ世間に知られてしまう超絶おもしろ芸人たち~
0205「bananaman live S
0318「うるとらブギーズ単独ライブ「ultra very special boogie」
0318「小林賢太郎テレビ8・9・10
0325「キュウ「Notion attain sky」
0325「マツモトクラブ「クラシック」
0325「紺野ぶるま10周年記念単独ライブ「新妻、お貸しします。~ぽっきし税抜3000円~」
0414「ジェラベスト~とりあえず10本~
0527「JARU JARU TOWER 2019 ジャルジャルのちじゃら
0603「 M-1グランプリ2019~史上最高681点の衝撃~
0610「第21回東京03単独公演「人間味風」
0624「ハリウッドザコシショウのものまね100連発ライブ!SEASON3
0805「小林賢太郎演劇作品『うるう』
0909「NON STYLE LIVE Re:争論~リソウロン~
0916「トータルテンボス全国漫才ツアー2019「CHATSUMI」
0926「流れ星 単独ライブ 星幻想
1007「まんじゅう大帝国 第一回単独公演「私の番です。たしかにね。」
1021「チョコンヌ2020(通常盤)
1021「さまぁ~ずライブ12 Blu-ray特別版
1125「永野と高城。3 Blu-ray
1202「2020年度版 漫才 爆笑問題のツーショット
1223「アンガールズ単独ライブ「彌猴桃は7304日後に」

いつもお世話になっております。すが家しのぶです。

新型コロナウィルスの流行に伴い、日常が一気にひっくり返ってしまった感のある2020年ですが、皆様にとってはどのような一年でしたでしょうか。こちらは地方暮らしであることと本業がさほどダメージを受けなかったことがあって、報道で耳にするほどの影響はなかったように思います。ただ、最近は耳にしたことのある施設でクラスターが発生するなど、改めて身近な危機であることを再認識させられている次第です。ノーマスクノーセーフティーライフ。ムラ無くスキ無く限りなく参りたい所存であります。

そんな2020年のラインナップですが、毎年のようにDVDをリリースしていたバカリズムやバイきんぐの不在、キュウやまんじゅう大帝国、紺野ぶるまといった新鋭の台頭などが印象的ですね。この辺り、来年はどうなるのでしょうか。東京03の単独公演やシソンヌライブが敢行されましたが、今年のバナナマンライブは中止になりました。これらの出来事が来年のリリース状況にどのような影響を及ぼすのか……他愛のない話ではありますが、コレクターとしては気にならずにはいられません。

そんな2020年も間もなく終わろうとしております。今、このテキストを打ち込んでいる時点で、時刻は午後十時四十分。残り一時間二十分経てば来年になります。来年はどんな年になるのでしょうか。まったく読めませんね。読めないからこそ、未来は楽しい……とは言いづらい状況をなんとか打破できれば良いのですが。一市民には何も出来ません。ただ自分の身を守るだけです。とにもかくにも2021年です。素敵な一年になりますように。

あ、あと、今更ですが、クイックジャパンにコラムが掲載されました。

クイック・ジャパン153

クイック・ジャパン153

 

もし良ければ、読んでいただけますと幸いです。とある漫才師について紹介しております。面白い漫才師です。絶対に売れると思っています。彼らが売れない世界はあんまり芳しくないです。その足掛かりになっていれば、と。

それでは、また。

「M-1グランプリ2020」敗者復活戦の記録

1.金属バット「彼女」
2.タイムキーパー「幼稚園の先生」
3.コウテイ「それぞれの結婚式」
4.カベポスター「英語」
5.インディアンス「ヤンキー」
6.からし蓮根「ラーメン屋」
7.ぺこぱ「否定しないツッコミ」
8.ランジャタイ「仮装大賞」
9.滝音「好きな映画」
10.キュウ「ヨーグルト」
11.学天即「サプライズパーティ」
12.ゆにばーす「出会い系アプリ」
13.ダイタク「ボーリング」
14.ロングコートダディ「組み立て式の棚」
15.ニッポンの社長「ペット」
欠場:祇園

投票したのは、ハチャメチャな世界観が相変わらずの混沌ぶりだったランジャタイ、じわりじわりと仕掛けが作動する様が心地良かったキュウ、手堅い話芸でしっかりと笑いを取っていた学天即。最後まで迷ったのは、金属バットとコウテイ。特にコウテイは普通に視聴者投票の上位三組に食い込むレベルだと思っていたので、暫定結果があまり高くなかったことにちょっと驚いた。とはいえ、インディアンスの復活は妥当。楽しそうに漫才を披露する二人の姿は、もはやM-1という枠組みの外に飛び出しているように見えた。来年、更に評価される漫才師となってほしい。

最終的な結果はこう。

1.インディアンス
2.ゆにばーす
3.ぺこぱ
4.学天即
5.からし蓮根
6.コウテイ
7.金属バット
8.ダイタク
9.ニッポンの社長
10.ロングコートダディ
11.滝音
12.タイムキーパー
13.キュウ
14.カベポスター
15.ランジャタイ

敗者復活戦の司会進行役だった陣内智則に「復活はない」と言われていた(審査に影響するんだからリアルタイムそういうこと絶対に言っちゃいけないと思うんだけど)ニッポンの社長が、そこそこ票数を集めていたことにちょっと驚く。

2021年1月の入荷予定

0122「となりのシムラ
0122「ロッチ単独ライブ「銀座ロッチ」

どうも、すが家しのぶです。有難いことに原稿依頼が続いておりまして、実生活もブログ更新も後回しに原稿作業に追われている毎日を過ごしております。とはいえ、これは私の実力によるものというよりも、ただ単にM-1の影響力増加に伴い、お笑い関係の記事の需要が高まっているだけなのだろうと思っております。不景気と反比例して膨らんでいくM-1バブル、いつハジケてしまうのでしょうか。ドキドキしますね。なるべくハジケずに長続きしてもらいたいものですが。

対して、お笑いのDVDリリース状況はと申しますと、こちらはなにやら寂しいことになっています。新型コロナウィルスの流行に伴い、芸人さんのライブやイベントがことごとく中止になってしまった今年。映像の素材がなければリリースされるDVDもないわけで、これはもう致し方の無いことなのですけれども。とはいえ、東京03やシソンヌらのように、万全を期してライブを敢行した芸人さんも少なからず存在します。彼らのソフトがリリースされるのを待つばかりであります。

ロッチもそんな芸人の一組といえるでしょう。22日にリリースされる『銀座ロッチ』は、今年10月に行われた単独ライブの模様を収録したものです。オール新作コントを銘打っておりますが、近年の彼らの代表作『試着室』の2020年バージョンも披露されたとのことで、一体どのような変化が加えられているのか、今から楽しみでなりません。副音声コメンタリーも付いているそうですよ。ちなみに、代表作を再演して収録したベスト盤ではない、ロッチの単独ライブがソフト化されるのは、2013年4月にリリースされた『ロッチ単独ライブ「♡」(ハート)』以来、およそ八年ぶり。

同じく22日にリリースされる『となりのシムラ』は、2014年から2016年にかけて全六回に渡りNHKで放送されたコント番組『となりのシムラ』を完全収録したものです。様々なキャラクターを演じてきた志村けんが、何処にでもいるような普通のおじさんになってコントを演じています。ゲスト俳優陣も、片平なぎさ西田敏行石野真子小林聡美と豪華メンバーが勢ぞろい。特に第五回放送はドリフのメンバーである高木ブーが出演し、大きな話題となりました。今年3月に亡くなられた日本の喜劇王による熟練の笑い、是非ご覧ください。なお、特典として、『スタジオパークからこんにちは』でのインタビューの模様が収録されるそうです。

今年もいよいよ終わりが見えてきました。来年はどうなるか分かったものではありませんが、今よりもきっと素晴らしい一年になることを願っております。いざ行け、遥か希望の丘を越えて

「M-1グランプリ2020」優勝者決定!

1.【敗者復活】インディアンス(625点)
2.東京ホテイソン(617点)
3.ニューヨーク(642点)
4.見取り図(648点/2票)
5.おいでやすこが(658点/2票)
6.マヂカルラブリー(649点/3票)
7.オズワルド(642点)
8.アキナ(622点)
9.錦鯉(643点)
10.ウエストランド(622点)

どうも、すが家しのぶです。今年の『M-1グランプリ』も面白かったですね。感覚的には楽しかったというべきなのかもしれませんね。多種多様なスタイルの漫才師が一斉に極上のネタを披露してくれるわけですから、これはもはや漫才の一大テーマパークといっても過言ではありません。……そうでもないですかね。一夜明けて、まだまだテンションが上がりきっている状態なもので、どうも冷静なテキストを書ける状態ではないのです。ご容赦頂きたい。

どのコンビも大変に面白かったですが、アキナウエストランドはちょっとリズムをつかみ切れてなかったように感じられたのが少し残念でしたね。本来、もっと面白いし、もっとウケるタイプの漫才師だと思いますので。来年以降の活躍に期待したいところです。逆に、リズムは掴めていたのに、順番の影響で点数が伸びなかったインディアンス東京ホテイソン、こちらも来年のリベンジに期待したいところ(インディアンスに関しては、前回大会での漫才がイマイチだったので、むしろ雪辱を果たしたといえるのかも)。雪辱といえばニューヨーク、今回はちゃんと松本人志に評価されて良かったですねえ。ネタも彼らの性格の悪さが滲み出たもので最高でした。

ちゃんと面白いネタをやったのに、なんだかややこしい宿題を提出されてしまったオズワルドもご苦労様でした。審査結果がけっこう割れてしまっていたので、そこをどのように修正するかが今後の課題なのかもしれません。ああややこしい。同じく点数が割れた錦鯉、ネタをブラッシュアップすれば更に高みを目指せそうな気もしますが、変わらない良さを守ってほしいような気もします。難しいところですよねえ。

おいでやすこが、マヂカルラブリー、見取り図の三組については、またそのうちに。

ちなみに。毎年やっているM-1の感想文ですが、今回は次号の『読む余熱』の方で書くことになると思いますので、ブログでの公開はありません。たぶん。きっと。無いんじゃないかな。分からないですけど。まあ、もし良かったら、『読む余熱』をご購読いただけると幸いです。

あと、もはや需要はないかもしれませんが、QJ Webさんに記事が掲載されましたので、こちらもよろしくお願いします。

ではでは。

「M-1グランプリ2020」準々決勝敗退者で面白かった人たち。

どうも、すが家しのぶです。

今年も例年通り、『M-1グランプリ』の準々決勝戦で惜しくも敗退した芸人たちの中から、面白そうなところをピックアップして紹介する記事を書こうと思っていたのですが、『読む余熱』配信以後、原稿依頼がいくつか舞い込んできまして、多忙であります(うれしい悲鳴をあげている)。というわけで、ちょっといつものようにじっくり紹介する時間がなさそうなので、今年はサクッと触れていきたいと思います。

ちなみに、準々決勝戦の配信動画はネタ順に視聴しました。準決勝進出者のネタは配信されていないので、そちらについて触れることはありません。

 

大阪・東京の予選を通して、一番インパクトがあったのはドンデコルテ


「おっぱいとおしり、どっちが好き?」という品の無いテーマに対し、超がつくほど実直に「おっぱいが好きな理由」「おしりが好きな理由」を熱弁する姿が、たまらなく笑えました。傾向としては、チュートリアルさや香に近いと思うのですが、熱量は先の二組に決して劣らないものではないかと。このコンビは、いずれ確実に決勝進出を決めるだろうと思っているのですが、その気持ちがより確信に近付きました。(2019年結成/吉本興業所属)

 

ネタのクオリティはそこまででもないけど、妙に印象に残っているのが隣人


貧しい老夫婦が拾ったテレビ用のゴツいカメラを使ってグルメレポーターのフリをして定食屋でタダ飯を食おうとする……と、設定はかなりハチャメチャですし、漫才にしては動きがアクロバット過ぎるんですが、「そうなろうとしていないけれど結果的にそうなってしまった状態」の作り方が絶妙で、なんだか記憶に残ります。普段はコントをやっているらしいですよ。(2013年結成/吉本興業所属)

 

妙に記憶に残る、という意味ではなにわスワンキーズも凄かった。


「みどりのおじさんになりたい」という設定の異様さもさることながら、そんなおじさんと対面する小学生を演じる二人が絶妙ですよね。特に、立ち位置左のガタイがやけに良いこじまラテがちょっとマセた話し方の小学生そのもので、バチッと脳味噌に突き刺さります。当然のことながら、ネタも面白いです。リズミカルな会話と同じようなやり取りの繰り返しがグルーヴ感を生み出しています。(2013年結成/吉本興業所属)

 

なんとなく評判を小耳に挟んで、実際にメチャメチャ面白かったのはカナメストーン


以前はもっとダウナーなボケにツッコミが引っ張られている印象があったのですが、今回のネタではツッコミのキャラクターも濃厚に。結果、バランスが丁度良くなって、よくよく見ると不気味なのにキャッチーな漫才へと昇華されております。「なぁ~にが手でやったM-1だぁ~!?」のくだり、最高でしたねえ。(2010年結成/マセキ芸能社所属)

 

最後に、久しぶりに観て、やっぱスゴいなーっと思ったスリムクラブ


伝説の『M-1グランプリ2010』から十年、当時も今も変わることなく維持され続けているスリムクラブの世界、やっぱりたまらないものがありますね。静寂がもたらすサスペンスのような緊張感、それを破壊する絶対に的中するキラーワードの数々。おならのくだりなんか、意味分からなさすぎて最高でしたね。「猫は生きている……!」。(2005年結成/吉本興業所属)

 

以下、準々決勝戦のネタの記録になります。 

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「M-1グランプリ2020」ファイナリスト決定!

アキナ(2012年結成)
マヂカルラブリー(2007年結成)
見取り図(2007年結成)
【初】錦鯉(2012年結成)
ニューヨーク(2010年結成)
【初】おいでやすこが(2019年結成)
オズワルド(2014年結成)
【初】東京ホテイソン(2015年結成)
【初】ウエストランド(2008年結成)

とにかくウエストランドである。ウエストランドしか見えない。

正直、錦鯉や東京ホテイソンは、その芸風や過去の予選での評価から、遠くない未来に決勝進出を決めるだろうと思っていた。だが、ウエストランドの場合は、まったく事情が違っている。非モテの妬み嫉み僻みに端を発した怒りの笑いは、どうしても見る人間を選んでしまう。ターゲットが狭まってしまう。それでも、いつか決勝に行ける日が来るのではないだろうか……と思っているうちに、気付けば幾年月が経過してしまい、その期待の感情も何処かに消えてしまった。仕方のない話である。M-1の場でこの芸風が受け入れられるのならば、とっくの昔に決勝進出を果たしていた筈なのだ。それがまさかまさかの決勝進出である。夢にも思わなかった光景である。

本来ならば、ピン芸人同士のユニットであるおいでやすこがの決勝進出、変化球スタイルの漫才師であるマヂカルラブリーの返り咲き、ぺこぱ・からし蓮根のまさかの敗退など、もっと語るべきところがあるはずなのだが、タイタン贔屓の私としては、もうウエストランドのことしか見えないのである。これで敗者復活をキュウが制したら、もう喜びのあまりにショック死してしまうかもしれない。生きるけど。

今はただ、ウエストランドの漫才がゴールデンタイムで放送され、そしてきっと物議を醸すことになるだろうことを想像しながら、当日を楽しみにするばかりである。おめでとう!

元凶。

小林賢太郎が引退である。

あくまでも出演者として引退するだけで、裏方としての活動は今後も続けていくそうだ。なるほど、それならば……と、容易に受け入れるのは難しい。何故ならば、私が愛した小林賢太郎のコント世界において、パフォーマーとしての小林賢太郎の存在は決して欠かせないものだったからだ。今後、それを見ることは出来なくなってしまうのかと思うと、ただただ寂しくて仕方がない。ラーメンズの復活、カジャラの最新公演、それらに対する期待が泡となって消えてしまったことも哀しいが、なにより、小林賢太郎という稀有なパフォーマーが舞台に立つことを止めてしまったことが、とにかく寂しい。あの控え目な態度で目立ちたがりな男を舞台で見ることは出来ないのか……。

今の私がいるのは、間違いなく小林賢太郎の存在があったからだ。学生時代、ラーメンズにドはまりして、単独公演のDVDをかき集めようとしなければ、芸人DVD収集を趣味にすることはなかっただろう。芸人DVD収集を趣味にしなければ、それらのレビューを書くブログも始めなかっただろう。ブログを始めなければ、ゴシップ誌やフリーペーパー、電子雑誌でコラムを手掛けることもなかっただろう。故に、小林賢太郎は、今の私を作り上げた元凶である。その元凶が居なくなってしまうというのは、なにやら故郷が無くなってしまうような感覚である。

とはいえ、演劇公演においても、裏方に回っていた筈なのに、いつの間にか表舞台で主演みたいなことをやっていたような男である。引退だのと言っておきながら、しれっと戻ってくる可能性も否めない。なんかこう、三谷幸喜みたいな出方をしそうな気もしている。なので、まあ、さして期待しない程度に、ただほのかに期待したりなんかしながら、今後も生活していこうと思う。

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