白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

マシンガンズとDVDの話。

既報の通り、2023年8月2日にリリースされる『マシンガンズ「怒」』は、2008年12月に発売されたDVDの再編集版である。

一応、“ベスト盤”と銘打って紹介されていることが多い本作だが、収録されているネタの少なさや異常に低い価格設定を見ても分かるように、一般的な傑作撰とは少し異なった謂れの作品である。というのも、これは当時、リーズナブルな価格で芸人のネタを楽しめる“笑魂(short contents)シリーズ”の一枚として、発売されたものだからだ。時代は「爆笑レッドカーペット」に代表されるショートネタの全盛期。注目度の高い芸人が次々に登場する時代だったからこそ、採用された手法といえるだろう。

ちなみに、“笑魂シリーズ”としてDVDをリリースした芸人は、以下の通り。

・2007年6月
超新塾「ロックンロール劇場」
360°モンキーズ「マニア向け」
我が家「3LDK」

 

・2007年7月
ザブングル「逆ギレ」
にしおかすみこ「あたしだよ!!」
クールポコ「THE男」

 

・2008年1月
5番6番「18番」
エレファントジョン「立川より愛を込めて」
やまもとまさみやまもとまさみのひとりコント」
髭男爵ルネッサンス ~逆に聞こう、何がおもしろい?~」
パッション屋良パッション屋良の情熱講座」

 

・2008年7月
オジンオズボーン「やんちゃ漫才」
ぼれろ「ビギナーズ♪ラック」
狩野英孝狩野英孝の生まれつきイケメンです」
あきげん「キャラメルポップコーン」
慶「合言葉はチュリッス」

 

・2008年12月
マシンガンズ「怒(ど)」
禅「ばか処」
ロッチ「バナナチェリー」
ダブルダッチ「とんだりはねたりダブルダッチ ~漫才したりコントしたりラジバンダリ~」
ナイツ「ナイツのヤホーで調べました」

 

・2009年11月
いとうあさこ「天真爛漫 ~一度おさわがせします~」
ゆりありく「私につっこんでくだサル?」
ビークル38「んな、アホな…」
テンゲン「今日もキレてます!!」
ザ・ゴールデンゴールデン「GOLDEN A GO!GO!」

 

・2010年12月
パンダユナイテッド「ハッピーパンダボックス」
今泉「言ってみてぇ~っ!!」
エルシャラカーニ「穴を掘る人」
トップリード「トップリードのコント集」
ピーマンズスタンダード「PS ヒゲとメガネとシャツとネクタイ」

 

・2011年1月
コア「さんパチ!!」
西村深村「村おこし」
かもめんたる「ネズミと亀」
瞬間メタル「拳から龍が出よったわぁぁぁ!!」
いまぶーむ「いまぶーむのいーとこ ~元なすなかにし~」

 

・2011年4月
笑撃戦隊「ヒーローショー」
ケチン・ダ・コチン「THE BEATBANG!」
デンジャラス「このバカタレが!」
アルコ&ピース「東京スケッチ」
梅小鉢「うめびより」

今でも最前線で活躍している売れっ子から、すっかり名前を聞かなくなってしまった芸人、解散・引退してしまった芸人と、様々な芸人たちが名を連ねていて、隔世の感を覚えずにはいられない。

とはいえ、彼らは他の芸人と同様、ショートネタ芸人として十把一絡げに売り出されていたわけではない。

というのも、彼らは2007年から2009年にかけて放送されていた関東ローカルの深夜番組「エンタの味方!」において、第二期生としてレギュラー出演していたからだ。ちなみに、第一期生のメンバーは「ハマカーン」「流れ星」「キャン×キャン」、第二期生のメンバーは「髭男爵」「三拍子」「マシンガンズ」だった。……正直、番組の内容については今となってはよく分からないが(Wikipediaの記事を読んでみてもよく分からない)、それでも若手芸人がメインを務める番組のレギュラーに選ばれる程度には注目されていたのだろう。

ちなみに、2008年10月に番組の公式ビデオ『マシンガンズ in エンタの味方! 爆笑ネタ10連発』がリリースされている。笑魂シリーズよりも一足早い。2009年には番組公式ビデオ第二弾『マシンガンズ in エンタの味方! 爆笑ネタ10連発 ファイナル』をリリースされている。めちゃめちゃネタあるじゃん。同じく2009年に磁石・ハマカーンとともにシチュエーションコント番組『デジタルコメディラボ「カフェ・ド・トリコ」』に出演、こちらもDVD化されているのだが現在は入手困難らしい。

おそらく、2007年にM-1準決勝進出を果たしたことで、ショートネタブームに先んじて注目を集めるようになっていたのだろう。事務所としても、これからの活躍を見越して仕事を取っていたに違いない。それがよもや、それから十五年も地下に潜り続けることになろうとは、当時の関係者も思ってはいなかっただろう。

以上のことを踏まえて、『マシンガンズ「怒」』を鑑賞してみたら、よりいっそう深みを感じることになるのではないかと思う。まあ、知らなくても楽しめるだろうけれども。