白昼夢の視聴覚室

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「マシンガンズ「怒 ~再編集版~」(2023年7月26日)

『THE SECOND ~漫才トーナメント~』準優勝の結果を受けてリリースされた、2008年発売作品の再編集版。当時の漫才ネタ6本に加えて、2023年5月8日に撮影された「太田プロライブ月笑2023」での漫才とトークが特典映像として収録されている。新たに撮影した映像を特典扱いにすることで映像配信の方に入れさせないようにしているあたりに、商売っ気を感じずにはいられない。ちなみに、当時のリリース時に収録されていた、幕間映像と特典映像は未収録。

本編で演じられているネタは、主にボヤキ漫才。世の中に対して二人が抱いている不平不満を、舞台上でこれでもかとぶちまける。ただ、マシンガンズの漫才にはツッコミが存在しない(ボヤキに対してブレーキをかける役割を担う人間がいない)ので、ネタの内容は適度に観客の共感を得られる「あるあるネタ」のラインに留まっている。ボヤキ漫才というスタイルを世に広めた人生幸朗・生恵幸子であれ、2022年のM-1王者・ウエストランドであれ、ボヤキ漫才は共感と理不尽が混在しているからこそ爆発力が高まるものである。マシンガンズの漫才には、それが足りない。

ただ、それ故に、マシンガンズの漫才は「立ち話をしている二人の男が下らない話題で盛り上がっている」という、漫才の根本ともいえるようなシチュエーションを自然に生み出すことに成功している、ともいえる。漫才中、滝沢が無茶苦茶なことを口走り、それに対して西堀が思わず吹き出してしまうようなくだりが二人の間で定番化しているが、それが通用するのも、そんなマシンガンズの芸風だからこそだろう。

ネタの内容も安定して面白い。交際している女性が取りがちな言動に対して牙を剥く『女』、バイト先の居酒屋での従業員や客の態度に怒りを爆発させる『居酒屋』、合コンで知り合った女性をホテルへと誘導するまでのシチュエーションを自虐的に笑いながら叫び続ける『合コン』など、時の流れに左右されにくい普遍的なテーマの中で、それぞれのツッコミがバシッとハマったり、二人のユニゾンツッコミがズバッと決まったりした瞬間は、なかなかたまらないものがあった。特に『合コン』は、ややコンプラ的に怪しい場面も見受けられたが、二人の人間性が剥き出しになったようなネタなので、必見である。

ただ、やはり15年も前の作品ということで、時の流れを感じさせられるくだりも、チラホラと。『ファン』における「爆笑オンエアバトルのジャッジペーパー」、『ニュース』における「選挙権」「ジェロ」「崖っぷち犬」、『携帯電話』における「分厚い説明書」「赤外線」などは、今の10代には伝わりづらいネタだろう。また、基本的には売れてない・人気がないことを前提にネタを進めているので、昨今の“自撮りおじさん”ぶりを知っていると、ちょっと苦笑いが止まらないかもしれない。

特典映像の漫才は、『最近の出来事』というざっくばらんなタイトルだけあって、「『THE SECOND』決勝進出を受けてのネットの反響」「嫁から言われたこと」「同窓会」などなど、かなりアトランダムな話題が繰り広げられたもの。一つの話題に特化しないショートネタの数珠繋ぎのような漫才だったが、それでもテーマごとに爆笑を生み出しているあたりは流石。ネタの後は、MCのダーリンハニーを交えた四人でのトーク。かなり素直に『THE SECOND』という大会に対する心境を吐露していて、短いながらも見応えのある映像だった。

総合的に見て、それなりに満足感を得られる作品ではあった本作だが、『THE SECOND』以降のマシンガンズの愛されぶりを思うと、これはこれとして、また別に新作のリリースをお願いしたいところではある。おそらく、今のマシンガンズが求められているのは、それぞれの人間臭い側面の掘り下げだと思うので、芸人仲間たちとの飲み会の様子や、芸人仲間や関係者による証言を集めたような映像作品でも、需要があると思うのだけれども。

・本編【31分】
「女」「居酒屋」「ファン」「ニュース」「携帯電話」「合コン」

・特典映像【11分】
「最近の出来事」(「太田プロライブ月笑2023/5月ROUND」より)