白昼夢の視聴覚室

犬も食わない

ラーメンズ「映画好きのふたり」(003/100)

洋画好きな二人がちょっとしたやりとりをきっかけに狭い部屋の中で映画ごっこ。『爆笑オンエアバトル』第二回チャンピオン大会の決勝戦で披露されたコントである。結果は自身最低記録の201キロバトル。笑いどころの掴みにくいネタなので、どう楽しめばいいのか観客も理解し辛かったのだろう。

このコントの肝は、日常と非日常の切り替わりにある。アパートの部屋という日常的な空間の中で雑談を重ねていた二人が、ふとしたきっかけで映画のワンシーンを再現し始める。その瞬間、これまで日常的に描かれていた空間は、あっという間に非日常的な空間に変貌を遂げてしまう。舞台衣装や小道具を使わずに、二人の身体だけでシチュエーションを表現するという手法を取っているからこそ成立する表現方法だといえるだろう。

興味深いのは、前半と後半で見せている部分が違っている点である。

前半部分で見せているのは、日常的な空間で非日常的なやりとりを繰り広げることで生じるギャップの面白さだ。二人が演じているのは人質を取り戻しに行く西部劇(?)のシチュエーションなのに、登場するアイテムは「醤油入れ」「体温計」「耳かき」「ロケット鉛筆」とまるで冴えない。しかし、二人は臆することなく、あくまでも映画ならではの大袈裟な演技によって会話を重ねていく。このギャップが面白い。

対して、後半部分で見せているのは、“映画ごっこ”という制約を持たない遊びならではの自由度の高い展開である。映画についてのやりとりを経て、二人が最初に選んだシチュエーションは「麻薬中毒患者」だった筈なのに、すぐさま「エイリアンに身体を乗っ取られてしまった大統領を救った男」に切り替わる。更に、いくつかのまったく別々の映画を彷彿とさせるようなさせないような言葉のやりとりを交わし、最後に流れる音楽は明らかに某有名映画のアレ……色んな映画のイイところだけを切り取ったMAD映像のように、二人の映画ごっこは自由な展開を迎える。この閉鎖的な空間だからこそ可能な無制限の表現がバカバカしく……それでいて愛おしい。何故か。思うに、後半での二人のやりとりから、二人が作品に対する共通したイメージを持っていることを感じさせられるためだろう。こういう友達が身近にいると、人生は何倍も楽しくなる。

これほどまでに、日常の中で非日常を繰り広げていた二人が、最後の最後でド日常的な事件に打ちのめされ、ひっくり返ってしまうオチもたまらない。そうそう、録画した番組の上からうっかり別の番組を録画することって、あるよねえ……と書こうとしたところで、気が付いた。当時はビデオテープで録画することが当たり前だったから、このオチは成立したのである。だが、HDDで録画するようになった今、このオチはもはや旧時代の遺物でしかない。今、こういうことは、起こり得ないのである。意図せずして17年という月日の長さを噛み締めてしまった。ううむ……。

ちなみに、先述の『爆笑オンエアバトル』第二回チャンピオンには、あの立川談志が特別審査員として参加しており、ラーメンズはこのコントで「審査員特別賞」を受け取っている。