白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「にちようチャップリン」(2018年5月27日)

  • オテンキ【86点】

「コント:小ボケヒーロー」。木の高いところにある枝に風船を引っ掛けてしまった少年の元へ、小ボケまくるヒーローがやってくる。オテンキの代表作『小ボケ先生』からの流れを感じさせるコントだが、フィクション性の高い設定が故に、持ち味である“小ボケ感”が薄まっている。その結果、小ボケどうこうというより、単純に役立たずなヒーローもののコントに落ち着いていて、面白かったけれども少し物足りない。GO演じる少年が割れた風船で満足しちゃうくだりが好き。

  • ジャンゴ【82点】

イカ」。昔ながらのロックンローラー風の二人が、世の中の気に入らない人たちに凍ったイカで喉をドゥーン。意識しているのかどうか分からないが、ギター演奏+歌担当とコミカル+動き担当の二人組があるあるネタを披露するスタイルはテツandトモの『なんでだろう』を踏襲していて、決して新しくはないのだが、この路線に光を見出そうとするコンビが出てきたことは興味深い。『なんでだろう』レベルのキラーワードを見出すことが出来れば一気に売れそう。スリムクラブ内間のくだりは笑った。理不尽で笑わせられるのは強い。

「コント:コールセンター」。光回線の工事の後、ネットに繋がらないのでコールセンターに電話したところ、担当者が本日付で辞めるので「めちゃくちゃやってやろうと思って」いる人で……。『キングオブコント』決勝の舞台でも披露されていたコント。相手の状況が窺い知れない電話だけのやり取りがもたらす不安を上手く取り入れている。ヘッドセットを変に付けるという冗談が相手に伝わっていないくだりなど、よく出来ている。ただ、シチュエーションにあまりにも忠実で、「めちゃくちゃやってやろうと思って」と導入で言っていた割にはきちんと作り込まれ過ぎていたようにも思う。要するに、もうちょっとめちゃくちゃになっているところが見たかった。

  • インポッシブル【60点】

「コント:ケンタ」。いじめられっ子のケンタは、いじめっ子を見返すために通りすがりのボクサーからボクシングを習い始める。ドラマや映画の世界で起こりそうなシチュエーションを忠実に再現しながら、最後の最後で大胆に裏切ってしまうスタイルのコント。こういう一つの展開だけで笑いを引っ張り出す手法は、起爆力に定評のあるインポッシブルだからこそ出来ることだろう。とはいえ、ケンタがいじめっ子をやり返すくだりは、もうちょっと色々と見たかったような。

「漫才:スーパー」。妹の美穂さんが経営するスーパーマーケットを、姉の江里子さんが買い物にやってくる。自分たちの見られ方を理解しているからこそ出来るテーマ、ネタ運びには一種の安心感が。それでいて、ツッコミとしてクロスチョップを食らわせたり、長渕剛のパロディソングを歌ったりして、イメージとのギャップを生み出す笑いも散りばめている。そのバランス感が丁度良い。買い物かごを駕籠屋に置き換えてノリボケするくだりが好き。

「コント:万引き」。コンビニで万引きしてスタッフルームに連れてこられた高校生が、そのことを知らずにやってきた夜勤のバイト店員と出くわして……。好き。こういうコントが本当に好きだ。余計な説明がないまま話が進行する自然な導入もさることながら、はっきりと片方がボケで片方がツッコミという役割分担になっていないところも良い。たいの演技力の高さも見事。「こういう人っているよなあ」というキャラクターを違和感なく見事に演じ切っている。ネタの中枢となっている“立ち読みおじさん”なるキャラクターも素晴らしい。オチも好き。「『こち亀』か! 長ぇぞぉ~」の絶妙な温度。売れてほしい。

  • ニューヨーク【66点】

「漫才:正解」。屋敷が経験した腹が立つ出来事に対するリアクションの正解を嶋佐が示してみせる。『痛快TV スカッとジャパン』でやっているようなことに、ニューヨークの持ち味である偏見を微かにまぶしているようなネタ。ただ、偏見がやや弱くて、ただ『スカッとジャパン』をなぞっているだけのような後味が残ってしまっている。もうちょっと、なんとかなったような気もする。嶋佐がネタから逃げ出すオチは好き。

1位の阿佐ヶ谷姉妹やさしいズが勝ち上がり。

【次回の出場者】

アイロンヘッド

石出奈々子

EXIT

なすなかにし

バンビーノ

四千頭身

ラフレクラン