白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「サンドウィッチマンライブツアー2016」(2017年3月29日)

2016年8月から10月にかけて全国10ヶ所を巡ったライブツアーより、9月17日に開催された札幌公演の模様を収録。

2016年3月26日に開通した北海道新幹線。当時、その開業を報せる広告ポスターにサンドウィッチマンが採用されたことが、少なからず話題となった。それぞれエメラルドグリーンとパープルのコートを着た二人が楽しそうに各地を巡っている姿が、とても微笑ましかったからだ。それはまさに、友人や家族とはまた一線を画す、他の介入を許さない“相方”の距離感が生み出した愛おしい瞬間だった。当人たちもこの広告を気に入ったのか、本編のオープニングは「広告の二人」が担当している。観光地ではしゃいでいる二人は、広告で見せたような親密な距離感を感じさせることはなかったが、実になんとも楽しそうであった。……無論、ライブ本編ではいつものサンドウィッチマンが登場し、いつものようにネタをやっているわけだが。

前回の公演では非常に手堅いネタを披露していたサンドウィッチマンだが、本作でも確実で揺るぎない笑いを見せている。例えば、お見合い写真の撮影にやってきた伊達が、富澤扮する某戦場カメラマン風のカメラマンの言動に翻弄されるオープニングコント『写真館』は、彼ららしさが前面に表れたコントだ。「カメラ」を「キャメラ」と言ったり、写真撮影にタイマー機能を利用したり、ポーズを取っているのになかなかシャッターを下ろさなかったり……悪意を感じさせない天然だからこそ滲み出るタチの悪いボケの連打が非常に面白い。全体を通して悪ふざけが過ぎる印象を受けた『蜂の巣駆除』、M-1優勝前のサディスティックでブラックな笑いを演じていた時代のサンドウィッチマンがほのかに感じられた『保育園』も、それぞれ非常に面白かった。

しかし、やはり漫才の安定感は抜群だ。サンドウィッチマンライブの常連客として知られる小島さんイジりで幕を開ける『漫才(服屋)』は、Tシャツを買いに来た伊達が富澤演じる店員の慇懃無礼な態度に転がされる漫才コント。ちょっとした隙間を埋めるように、次から次へと繰り出されるボケとツッコミの応酬がたまらない。それでいて、「“人間山脈”アンドレ・ザ・ジャイアント仕様じゃねえか!」という一部にしか届かないであろうキラーワードをしれっと潜ませる場面も。大衆向けの漫才を作っているようでいて、こういった個を感じさせるワードを忘れないところが、彼らの良さである。オーラスの『漫才(犬の散歩)』も素晴らしい。犬を散歩させている伊達に富澤演じる通りすがりの人が話しかけてくる……という、自由度の高いシチュエーションであるが故に難しい設定を見事に乗りこなしている。浅く広い笑い、狭く深い笑い、両方を見せてくれた。

これらの本編に加え、特典映像として幕間映像やツアーのメイキング映像などを収録。テレビや映画でお馴染みのスターたちが富澤の出題するご当地クイズで競い合う「スター対抗!日本全国ご当地クイズスペシャル!!」、単独では定番となっている伊達がボケ役を演じるコントシリーズの是非が問われる「本当に必要?男シリーズ徹底討論!」、今回の単独ライブのチラシが某芸人によってパクられたのではないか問題を当事者を迎えて検証する「振り返りトークライブ」など、充実した内容となっている。その中でも驚いたのが、「サンドウィッチマンライブツアー2016 うちわコレクション」。ファンが持参した自作のうちわを振っている姿が、伊達による謎のオリジナルソングとともに淡々と流されていく。このファンからの愛を受け止める懐の広さ、優しさ。毎年、彼らが欠かさず、全国ツアーを敢行している理由が分かったような気がした。

ちなみに、表記されてはいないが、本編ではもう一本だけネタが披露されている。それがどのようなネタなのかは、実際に確認していただきたい。内容については触れられないが……北海道新幹線の広告ポスターが好きだったなら、見て損はないかもしれない。

■本編【61分】

「写真館」「漫才(服屋)」「蜂の巣駆除」「保育園」「漫才(犬の散歩)」

■特典映像【90分】

「スター対抗!日本全国ご当地クイズスペシャル!!」「本当に必要?男シリーズ徹底討論!」「ラジオ(ラジオDJ)」「ラジオ(老舗和菓子店)」「サンドウィッチマンライブツアー2016 うちわコレクション」「振り返りトークライブ」「ツアーメイキング」