芸人がネタを書き役者が演じるバラエティ特番第二弾。
ネタを提供したのは、岩井勇気(ハライチ)、森田哲矢(さらば青春の光)、塙宣之(ナイツ)、ニッチェの四組。ネタを演じたのは、迫田孝也・池田鉄洋、前川泰之・木村了、不破万作・渡辺哲、西尾まり・松井玲奈の八名。二人の役者がユニットを結成し、コンビとしてネタを披露していた。MCは山崎弘也(アンタッチャブル)とバカリズム。ちなみに、第一弾は今年の1月5日に放送、石田明(NON STYLE)、小峠英二(バイきんぐ)、富澤たけし(サンドウィッチマン)、ライスがネタを提供していたらしい。
何年も会っていない友人のタナベに森の中に呼び出された男(池田)が、劇団四季を思わせる全身タイツの猫男(迫田)と遭遇、近況と願望を奇妙なメロディの曲に載せて聞かされる。法則性を認識させてから少しずつ崩していくスタイルは、まさにハライチの漫才そのもの。ただ、もしも迫田が演じている猫男を岩井が演じてみせたとしても、ここまで一定のリズムを保つことは出来なかっただろうし、なにより岩井が猫男に扮しているという背景が主張し過ぎて、ネタの本来の面白さは伝わらないだろう。「当人には出来ないタイプのネタを役者に演じてもらう」という、企画の魅力をきちんと反映したタイプのネタだった。
カフェで原稿を書いている小説家のヒガシノショウゴ(前川)の隣の席にやってきた彼のファンだという男(木村)が、さっき買ったばかりだというヒガシノの小説を速読で次々に読破していく。さらば青春の光の持ちネタ『速読』を思わせる設定だが、内容がまったく違っていたので驚いた。さらばの『速読』は、友人から本当に速読できるのかどうかを疑われている男が、官能小説を速読させられるという下ネタ寄りのコントだった。だが、ここで演じられているコントでは、自身が書き上げてきた小説を速読であっさりと読まれてしまう小説家の複雑な心境が笑いに昇華されている。使っている道具は同じなのに、ここまでまったく違った味わいのコントを完成させてしまう森田の技術力の高さに感心した。
ベテラン役者の二人によるしゃべくり漫才。二人の経歴を取り入れた内容になっていて、如何にもテレビの企画のためにこしらえた漫才という印象を受けた。しかし、それ以上に気になったのは、二人のリズム感の悪さ。いつまで経ってもしっくりこない。ただ、これは二人の演技に問題があるというよりも、むしろ、ナイツの情報をギチギチに詰め込んだ漫才が、如何に彼らの技術でもって成立しているかという証明であるように思う。もしも、他の漫才師が、例えば間をじっくりと使うようなタイプの漫才師がネタを書いていたとすれば、もうちょっとなんとかなっていたかもしれない。こういったズレもまた、企画の魅力である。
遠足が楽しみ過ぎて、三日前から眠れない娘(西尾)に戸惑いを隠せない母親(松井)のコント。事前のVTRで、江上が「マンパワーでなぎ倒していくタイプのコントしか書かない」と語っていたので、どのようなネタが作られたのだろうかと期待していたら、想像していたよりもずっとニッチェのコントだったのでビックリした。西尾が演じる娘も、松井が演じる母親も、キャラクターや言葉遣い、台詞のイントネーションから舞台上での動き方に至るまで、完全にニッチェのコントそのものだ。もはやトレースと言っても過言ではない。それは逆にいえば、ニッチェの個性的なビジュアルが無くても、彼女たちのコントは成立するということになる。それはそれで興味深い事実だ。ニッチェのコントの肝は、むしろ強烈な演技にあるのかもしれない。
番組内では観客投票を実施、ハライチ岩井×迫田孝也・池田鉄洋のユニット「鹿児島学園」が優勝した。……どうでもいいけど、【優勝 鹿児島学園】というテロップの甲子園っぽさが、ちょっと面白かった。
なお、「笑×演」は四月からレギュラー放送を開始するらしい。見るかどうかは知らん。