白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「じわじわチャップリン」(2016年5月28日)

  • ゆにばーす31/50】

「夢」。AKBになりたいというはらのビジュアルを前面に押し出した漫才。男女漫才といえば相方の顔をイジることが定番になっているが、若手芸人を中心とした番組でそれをやられると、どうもベーシック過ぎて物足りない。ただ、今回は初登場だったので、単純にはらのキャラクターを紹介しようという魂胆だったのかもしれない。実際、魅力的なキャラクターだった。あのビジュアルなのに足元が妙に可愛いというギャップが面白い(どこ見てんだよ)。とはいえ「整形!」は言い過ぎ。その一線は大事にしてほしい。あと終盤、漫才にドキュメンタリーをぶち込むスタイルは先駆者が強すぎるから、安易にやらないほうがいい。見ている側にとっては、当人の「売れる」「売れない」とか関係無いから。個人的には、なんだか二人のフォルムに親しみが持てる(飛石連休を彷彿とさせるバランス感なんだよなあ……)ので、頑張ってもらいたい。

 

  • マツモトクラブ45/50】

「コンビニ」。コンビニのウザい店員。前半は、「アメリカンドッグ」「ポイントカード」「レシート」「お箸」などのアイテムを用いて、ウザい店員のウザい接客を描いて笑いをもぎ取る。合間に挟み込まれる聞き間違いも良いアクセントだ。過度にコミカライズされたキャラクターは、音声を相手に一人コントを展開するマツモトクラブだからこそ成立させられるものだ。実在しない相手と会話をすることで自らが演じているキャラクターの個性を強調する一人コント師が多い中、マツモトクラブはその逆を行く。接客中に流れるドラム音も良い演出だったな。後半は、マツモトクラブがコンビニのオーナーで、これがシミュレーションだということが発覚、注意はするものの店員のバンド活動を応援しているという設定が明かされ、店員の悪ノリにオーナーも乗っかるというほのぼのとした展開に。前半とは違い、緊張と緩和とバカバカしさによる笑いが生み出されている。彼の魅力を存分に引き出した名演だった。素晴らしい。

 

【ふきだまりコーナー】
エルシャラカーニ、オテンキ、勝又、ザ・パーフェクト、サルゴリラ、新作のハーモニカ、スーパーニュウニュウなすなかにし脳みそ夫、パニーニ、平野ノラ、プリンセス金魚、もう中学生、ラブレターズが登場。「眠い人も目が覚めるギャグ」というお題の元、オテンキ、ラブレターズスーパーニュウニュウがギャグを披露した。……余談だが、オテンキは浅井企画に移籍して初めての出演。居心地はいいのだろうか。その他、元ジューシーズの赤羽と児玉によるコンビ・サルゴリラ、松竹からナベプロに移籍したプリンセス金魚、タイタンからやってきた異色のピン芸人脳みそ夫など、ちょっと気になるところ多し。

 

「遺留品」。被害者宅に残されていた遺留品が、日常的に使われているけれど正式名称が分からないものばかり。情報番組の合間に流れるスキットみたいなコント。小道具が明かされた段階でどういうネタなのかが分かってしまったので、まったく楽しめなかった。……雑学をコントに持ち込んではいけない、とまではいわない。ピン芸人星野卓也が「ありえない駅名」「ありえない競走馬の名前」などのように雑学を用いたパフォーマンスを披露していた例もある。だが、星野はただ雑学を披露していたわけではなく、そこに笑いを起こすための構成や仕掛けを用意していた。しかし、彼らにはそれがない。ただ雑学を披露して、その意外性だけで笑いを取っている。もうリミッター外してはっきり言ってしまうが、こんな安直で無難で将来性の無いコントなんかを合格させてどうするんだ! 普段の私は「観客なんか無責任に目の前のもので笑っていればいいんだ」という姿勢を取っているつもりが、流石に今回はどうかと思ってしまった。

  • イヌコネクション【11/50】

「アルファベット」。アルファベットの形を人文字で作る。正直、先のラフレクランに関しては、まだ芸歴も浅いので仕方がないところもあると思うが、こちらはもう9年目(笑撃戦隊と同期らしい)だというのに何をやっているんだと頭を抱えたくなる。本当ならば、コントが大好きな私がこんなことはいいたくないのだが、コンプライアンスがどーのこーのといわれているようなご時世に、キスをしたくてしたくてたまらない男とキスをしたくない男という構図のコントをやろうと思い至った理由がまったく分からない。キスをするだけなら問題はない。出川哲朗上島竜兵だってやっている(余談だが、あのキスのくだりは、ケンカをするかもしれない緊張感からのキスという緩和があるからこそ笑いが起きている。その後は定番のやりとりとして笑いになる。上手く出来ているなあ)。だが、このコントのように、強引にキスに持ち込まれてはいない。このままでは単なるセクハラである。こういう危ういテーマを描くのであれば、もっと画的にも設定的にも説得力を持たせる必要があるだろう。でも、このコントには、そういった作り込みも見られない。こちらもリミッターを外してはっきりといってしまうが、こんなクソくだらねぇ片手間で作ったようなコントをテレビで流してんじゃねえ!!! ……いや、本当に、『コンビニ』のコントやってたコンビが、なんでこんな地下芸人もやってないようなネタやってんだよ。自分を大切にしてくれよ。

 

【今週のふきだまり芸人】

勝又「しりとり」

平野ノラ「バブリー卒業写真」

 

次回の出場者は、平野ノラ、マツモトクラブ(1週勝ち抜き)、ゆにばーす(1週勝ち抜き)、ラフレクラン(1週勝ち抜き)。平野ノラは「ニコニコ超会議 特別オーディション」でぶっちぎり優勝しての出場。