白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「じわじわチャップリン」(2017年3月4日)

レースクイーン漫談」。ORIE扮するレースクイーンによる漫談。あるシチュエーションを想起させるショートコントを披露し、実はそのシチュエーションは……と、意外性のあるオチに落とすことで笑いを生み出すシステム。ただ、それよりも重きを置いているのは、一連のネタをやり終えた後に流れる『TRUTH』(フジテレビ「F1グランプリ」のテーマ曲に採用されたことで知られる楽曲)に合わせた動きと、その直後に発せられる観客のリアクションを受けての一言である。かつて、彼女と同じ事務所の先輩であるダンディ坂野も似たような構成のネタを披露していたので、なにかしらかの影響を受けているのかもしれない。ただ、「ゲッツ!」の異常なキレ味が笑いを生み出していたダンディに対し、ORIEの動きはあまりにもキレ味が悪く、ショートコントのオチとして上手く機能していない。そのため、全体的に締まりの悪さが目立ち、良い印象を与えない。ただ、逆にいえば、動きのキレさえ改善されれば、一気に面白くなる可能性もあると思う。頑張ってもらいたい。

 

  • インディアンス40

「幸せな家庭」。そろそろ結婚したいという木村がイメージしている「理想の結婚生活」を再現するために、相方の田渕を家族に見立てようとするのだが、田渕はまったく言うことを聞いてくれない。従来の漫才で行われるやりとりの間に、田渕が意味を持たないボケをこれでもかと詰め込んでいくスタイルの漫才。次から次へと畳み掛けられるボケは確かに笑えるのだが、その一方で、漫才ならではの掛け合いがおざなりになっているような印象も受ける。ボケがあまりにも過剰過ぎるため、やや食傷気味になってしまう瞬間がある。現行のスタイルを突き詰めていくことも大事なのだろうが、根本を忘れないように気を付けていただきたい。個人的にも一番笑ったのは漫才の流れの中にある「元気な元気な看護士ですよーっ!」だった。こういう純粋なボケでも十分に笑わせられる地力があるんだから。

 

【ふきだまりコーナー】

平野ノラ、アイロンヘッド、インポッシブル、Aマッソ、えんにちORIE、末吉くん、てんしとあくまトンツカタンネルソンズ、ハナコ、ハリウッドザコシショウ、バッドナイス、ペンギンズ、マツモトクラブが登場。「門出を祝うギャグ」というテーマの元、末吉くん、ネルソンズがギャグを披露した。末吉くん、あの恰好をしているからてっきり平泉成をやるものだとばかり思っていたのだが、まさかのオリジナルギャグだった。

 

「元カノ」。一週勝ち抜き。初めて訪れた彼氏の家には、元カノから貰ったというモノで溢れていて……。かつての恋人から貰ったモノを「使えるから」という理由で使い続けている彼氏、元カノから貰ったモノを捨てずに使い続けている彼氏のことが「信じられない」と思う彼女、それぞれの感覚のズレを大胆に掘り下げたコント。本来ならば意見の相違として処理されても仕方がないところだが、元カノの情報が明らかになるにつれて、彼氏の異常性が滲み出てくる。この構成が絶妙に上手い。とはいえ、彼氏自身には悪気がないことが、終盤の「あんた今までさ、汗水垂らして、苦労して、自分の力だけで手に入れたものはないの!?」という質問に対する純朴過ぎる回答に表れている。この振り上げた拳の行き場の無さが、また上手い。シチュエーションコントとしては、ある種の完成形に達しているといえるだろう。ボケとツッコミの関係性がいつもと逆っていうのも、上手いんだよな……。

 

「口が軽い女」。一週勝ち抜き。会社の同僚が落ち込んでいるので、何か事情を知っているかもしれない後輩を呑みに誘ってみたところ、その後輩がとんでもない情報通で、知っていることをベラベラ話し始める。設定を重視するのであれば、後輩の情報通ぶりを笑いに転化していくところなのだろうが、このネタではそれよりもむしろ二人の過剰なほどに強調された演技が笑いどころとなっている。ライブで見ていたのであれば、その迫力を体感することで強引に笑わせられるのかもしれないが、テレビを通じてだと、温度差が明確に表れてしまうので些か厳しい。ただ、後輩が「あたしは、自分のこと嫌いです」という台詞で落とす展開に、ほのかなセンスは感じられた。あの流れから、このオチは、ちょっと想像していなかった。こういう部分をもうちょっと出していけば、もっと良くなるんじゃないか。

 

【今週のふきだまり芸人】

平野ノラ「バブリーな芸能人の宣材写真モノマネ」

ペンギンズ「兄貴と漫才」

 

次回は、3月18日放送でチャンピオン大会。アイデンティティ、しゃもじ、うしろシティ、マツモトクラブ、オジンオズボーン、イヌコネクション、ラフレクラン、プラス・マイナスが出場する。……あれ、ラフレクラン……?