白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

テレビを見よ、自然へ出よう。『ひとりキャンプで食って寝る』

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TVerにて『ひとりキャンプで食って寝る』を視聴。コマーシャルで見かけたときから気になっていたのに、いつの間にやら第一話の放送日が過ぎていて、気が付けば第二話の放送が終わっていた。こんな時にTVerの存在は本当に有難い。ちなみに、注意書きによると、どうやら第一話と第二話は12月末まで配信され続けるらしい。本作は主人公が二人いるので、それぞれにとっての第一話は残しておこうという配慮だろうか。実に有難い。私と同様、気になっているけれどまだ見てないという人は、第三話が放送されるまでにチェックした方が良い。否、チェックすべきだ。とにかく素晴らしかった。

簡単にストーリーを説明しよう。先述の通り、このドラマには二人の主人公が存在する。一人目は大木健人(三浦貴大)。キャンプ地で持参した缶詰を調理して食べて寝る。二人目は七子(夏帆)。キャンプ地で手に入れた山の幸海の幸を調理して食べて寝る。このドラマは、そんな二人のキャンプ地での行動を描いた作品である。今後、ドラマチックな要素が加えられる可能性もあるが、恐らくそのような無粋なことはしないだろう。何故なら、このドラマが軸に描いているのは、徹底して“キャンプ”だからだ。都会の喧騒を離れ、非日常的に過ぎていく緩やかな時間の流れを、本作はとても丁寧に描いている。余計なBGMもない。無駄がない。もとい、無駄しかない。でもそれが良い。それがキャンプだ。わざわざ出かけてテントを建てて野外で飯を食って寝る。それがキャンプだ。そして、だからこそ本作では、アクセントとしての調理が最重要事項となっている。調理から完成、そして食事までの流れを、徹底的に美味そうに見せる。否、絶対に美味い。第一話の導入部分、缶詰のコーンをバターで炒めて、酒のツマミにしているシーンで、私などは早々にノックアウトである。

正直、ちょっと綺麗に描き過ぎているようなところはある。同じキャンプ仲間が燻製したササミを分けてくれるところはまだ理解できるが、居合わせた釣り人夫婦がそんな簡単に受け入れてくれるようなことがあるだろうか。まあ、でも、そういうことが起こり得るのがキャンプである、ともいえる(とはいえ夜中の砂浜でラジオからシュガー・ベイブが流れてくるのは、あまりにも「理想的な美しさ」に満ちていて笑ってしまった)。とにかく良いドラマだ。どういうことになるかは分からないが、最終話まで見守りたい。

ちなみに、大木健人パートは横浜聡子(『世界のフラワーロード』『俳優 亀岡拓次』)、七子パートは冨永昌敬(『パビリオン山椒魚』『素敵なダイナマイトスキャンダル』)が担当している。男性パートを女性の監督が、女性のパートを男性の監督が、それぞれ撮っているというのも、ちょっと面白いかもしれない。

2019年11月の入荷予定

06「7300days」(チョップリン
27「Aマッソのゲラニチョビ マジカル・オオギリー・ツアー〜ディレクターズカット版〜
27「バカリズムライブ「image」
27「ジョビジョバライブ『Let's GO SIX MONKEYS』
27「うしろシティ単独ライブ「人生に、エクスカリバーを。」

どうも菅家です。皆さんは生きてますか。私は死にました。献血ポスターも死にました。それでも血液を求めている人は後を絶ちません。幸いにも赤十字社は死んでいませんから、皆で献血に行きましょう。あと『宇崎ちゃんは遊びたい!』も死んでません。そもそも漫画作品とのコラボとして貼り出されたポスターなのに、くだんの女性が作品内でどのように描かれている人物なのかについて語られないまま、イラストだけが切り取られて、セクハラかそうじゃないかという議論に発展していることは、それはそれで作品に対する侮辱的姿勢といえるのではないかという気がしないでもないです。お互いを尊重し合いながら前に進んでいきたいものです。知らんけど。

そんなことより11月のリリース作品ですが、やはり注目すべきはチョップリンによる久々の単独作品でしょうね。チョップリン名義のDVDがリリースされるのは、2007年に発売された『ライヴ「中年」』以来、およそ十二年ぶりのこと。……こうなると、むしろ何故に今になってリリースされるのかという疑問が浮かんできますが、気にしない気にしない。ちなみに私はこのライブを生で観賞しています。工場のコントが素晴らしいので、是非ともご覧下さい。その他、気になるところでいうと、なんだか色んなことがあったような気がしないでもないAマッソのネット番組のDVDでしょうか。なんやかんやと批判もあったでしょうが、予定通りに発売されるようです。思うところはあるようなないような感じですが、ひとまず楽しみですね。

……おおっと、菅家しのぶという名のお笑い公論エクスプレス、そろそろ蘇生の時刻がきたようです。

『俺たちはどう生きるか』(大竹まこと)

俺たちはどう生きるか (集英社新書)

俺たちはどう生きるか (集英社新書)

 

ここ数週間、本を読む時間を設けている。読もうと決意したわけではない。本を読むことが出来る時間が偶発的に発生したのである。というわけで、読まずに放置していた本を読みまくっている。先日は大竹まことの本を読んだ。タイトルは『俺たちはどう生きるか』。どこかで聞いたようなタイトルだが、内容は至ってシンプルなエッセイである。大竹が思ったこと、感じたこと、経験したことを、その声で実際に語っているかのような文体で綴られている。正直、文章としては、決して上手いとはいえない。だが、その文章からは、大竹まことという一人の人間の生き様が滲み出ている。

内容に関しては、まったく一貫性がない。ただ、全体を通して、とてつもなく感じさせられるものがある。それは「心配」だ。七十歳で古希を迎えた大竹が、その人生において感じたことや専門家の言葉から学んだことなどを、若い人たちに向けて発している。その言葉には、若者たちを心配する気持ちで溢れている。ただ、自らの老いを弁えているからこそ、強い言葉を押しつけようとはしない。自分の気持ちを淡々と述べるだけである。だが、そのスタンスがまた、大竹の確かな老いを表しているようで、シティボーイズのコントを楽しんでいた身としては、些か複雑な気持ちにもさせられる。なんだか明日にも死んでしまいそうで、大変にこわいのだ。

自身の思い出を綴っている文も多い。シティボーイズが如何にして結成されたのかは漠然と認識していたが、それまで大竹が何をどのようにして生きてきたのかをまるで知らなかったので、これは興味深く読んだ。なんでも、劇団の養成所に入る前には、ドサ回りのコメディアンとして全国のキャバレーを回っていたそうだ。この他にも、風間杜夫のこと、高校の同級生たちのこと、十七歳で亡くなった友人のこと……それらの話が走馬灯のように語られている。これが最後にするつもりなのか。それともまた老人として語る日が来るのだろうか。

 すまん。若者よ。君たちに伝える言葉をこの年よりは持っていなかった。
 ぐだぐだと回り道を、それも迷いながら生きてきた男の駄文である。
 こんなものは読まずに、女性(男性)でも口説いていたほうがよかろう。
 諸君、さらばじゃ。ありがとう。

当時と変わらぬ美味しさのままに『時効警察はじめました』

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コンビニエンスストアの菓子パンでさえ一方的に“改善”されてしまう時代に、何の因果か十年ぶりに復活を遂げてしまったシリーズ最新作『時効警察はじめました』は、その第一話で今後も当時と変わらない味を提供してくれることを約束してくれた。とにかく無駄に無駄がない。矛盾しているが他に言いようがない。

例えば、お馴染みの面々が無駄話に無駄に無駄を重ねているところへ物語の主人公・霧山修一朗が現れ、食堂の冷蔵庫にうっかりドッキリ勘違いして保存されていた十年前に時効を迎えた事件の遺留品を託されて登場、熊本課長によって無事に時効案件として処理されるまでをスムーズなのに無駄の多いオープニングには度肝を抜いた。これぞ『時効警察』、これぞ三木聡イズム。無論、肝心の本編もまた素晴らしい。当時の事件関係者として登場するのは、第一被害者の娘であり第二被害者の妻でもあった小雪演じる新興宗教の教祖と、そんな教祖に並々ならぬ思いを寄せている六角精児演じる信者。美しく怪しげな小雪と純朴のようで胡散臭い六角のコントラストがたまらない。とりわけ、お互いに高校生を演じている小雪の着替えシーンを六角が覗くシーンには、鳥肌の立つ思いが。

それでも本作はあくまでも『時効警察』。隙あらばナンセンスが牙をむく。嘘をつくと蚊に刺されるし、刑事はトレンチコートを着ながらグラウンドを走り回るし、必然性があるとはいえEAST END×YURIの話題が唐突にぶち込まれ、何の脈絡もなく「一休さん」へのディスが繰り広げられる。何がなんだか分からない。でもそこが嬉しい。有難い。今回、過去に脚本を担当した、園子温ケラリーノ・サンドロヴィッチは不参加らしいが、きっと安心のクオリティを見せてくれるに違いないので、これからも期待して視聴!を、よろしくお願いします。

追記。第二話の福田雄一脚本パートを見て、思わずずっこけてしまった。やはり、このドラマのトーンを維持するのは、些か難しいのかもしれない。

人生の『前線』に立つということ


私が思春期まっしぐらの学生だった頃に比べて、音楽番組がすっかり少なくなってしまったこともあってか、今や最新の音楽を知るためのメインツールが深夜ラジオになってしまった。バカバカしい芸人たちの会話の合間にそっと流れる最新の音楽は、時に私の心をグッと掴みかかってくる。最近、amazon music unlimitedに登録したので、ちょっと気になるミュージシャンがいれば、すぐさま楽曲をチェックできる。おかげで、ラジオだと一部しか聴くことの出来ない曲をきちんとフルで確認できるし、興味が深まれば他の楽曲にも手を伸ばすことが出来る。しみじみと凄い時代である。以前なら、レンタルショップの公式サイトで在庫を調べ上げて、直に店舗へ音盤の獲得に向かっていた。今はちょっとクリックするだけで合法的に幾らでも聴き放題だ。

最近、ラジオ番組で耳にして、毎日のように聴いているのがヒグチアイの『前線』である。以前にもラジオで流れていた『猛暑です』も素晴らしい楽曲で頭にタイトルが焼き付いていたのだが、今回の楽曲はその衝撃を更に上回ってきた。なにせ冒頭の歌詞がいきなり凄い。【深夜3時 ファミレスのドリンクバーは優しい】。この微塵も無駄のない言葉で、即座に状況を想像させると同時に、歌詞の当事者の心境を色々と妄想させられる。そこから歌詞は更に言葉を適切に連ね、より明確な画をリスナーに提示する。その光景に見覚えのある人は、きっとメディア業界には少なくないのだろう。ここ数週間のうちに、この曲を様々なラジオ番組で耳にした。分かるのだろう、その孤独を。分かるのだろう、そのやるせなさを。そして、サビの最後の歌詞に、深く頷くのだろう。【逃げるな 逃げなければ その場所が前線だ】。逃げなかった人たちにも、逃げてしまった人たちにも、その歌詞は突き刺さる。

だが、二番の歌詞で、その自問自答の渦の中で狭められた視界は一気に広がっていく。自分とは違う道を選んでしまった人を見て、自分の選んだ道は果たして正しいのかどうか、思い悩む。そして、ありきたりではあるけれども、紆余曲折の果てに辿り着いた結論の凄味。それは救いであり、許しであり、と同時に「逃げるな」とストレートに呼び掛けてくる。さて、今の私は、私自身の前線を進んでいるのだろうか? それとも心の声に背いて前線から逃げ出しているのだろうか? 間もなく三十五歳、未だに立たず、こんな感じで。

『ザ・ギース コントセレクション「Pretty Best」』(2019年4月24日)

ザ・ギース コントセレクション「Pretty Best」 [DVD]

ザ・ギース コントセレクション「Pretty Best」 [DVD]

 

2019年1月28日に座・高円寺2で行われた結成15周年記念ベストネタライブを収録。

ザ・ギースは高佐一慈尾関高文によって2004年に結成された。当初は事務所に所属せず、フリーとして活動。オリエンタルラジオバッドボーイズ、ハリセンボンらが参加したオーディションバラエティ番組「ゲンセキ」に一般募集として出演している。その後、シティボーイズの事務所として知られるASH&Dコーポレーションに所属。2010年の公演『シティボーイズミックス presents 10月突然大豆のごとく』には、ラバーガールプロダクション人力舎)とともにゲスト出演を果たしている。日本一のコント王を決定する「キングオブコント」には第一回大会から参戦。2019年現在、三度の決勝進出を果たしている。

本作に収録されているのは、そんなザ・ギースが2015年から2018年にかけて行ってきた単独ライブより、選りすぐりのネタを再演した十本のコントである。ザ・ギースの映像作品がリリースされるのは、結成10周年に行われたベストライブを収録した『ザ・ギース コントセレクション「ニューオールド」』以来、およそ四年半ぶり。実力派芸人たちの単独公演が定期的にソフト化されている現状を思うと、この期間の長さは些か寂しいものがある。売れないのだろうか。売れなくても、存在を認知されるために出し続けるという手段もあるのではないか、とも思うのだが、それは流石に能天気か。

オープニングを飾るコントは『相方』。ピクニックに出かけた先で、尾関が高佐にこれまで黙っていたことを告白する。ザ・ギースの二人が揃ってピクニックに出掛けるというシチュエーションが既にちょっと面白いのだが、そこからの展開の運び方が如何にもザ・ギースらしい。コント師としての自らをコントの中で演じるという若干の反則感漂う設定も、またオープニングコントならではの軽やかさを感じさせられる。とても丁度良い。

これ以降のコントも、彼らが得意とするナンセンスな笑いが繰り広げられている。融資しようと考えている相手が本当に信頼できる人間かどうかを延々と試し続ける『合格』、医者ではなくミュージカル俳優になりたいという生徒の真意を確かめるために担任教師が現実の厳しさを(ミュージカルで)指南する『進路相談ミュージカル』、会社の一大事に慌ててやってきた同僚が謎の動物に襲われて明らかにゾンビ化し始めている『ワーク・オブ・ザ・デッド』など、二人の確かな演技力に裏打ちされた至高の悪ふざけを堪能することが出来る。

その一方で、暗転したままの舞台で行われる不思議な面接風景を描いた『暗闇面接』、ホテルのラウンジでお見合いしている相手の女性が自らの特技である瞬発力をアピールするために某筋肉番付で知られているアレを披露する『ショットガンの女』のように、舞台としての特異性を活かしたコントも。正直、仕掛けの面白さ以上の笑いは生み出せていなかったように思うが、この意欲的な姿勢は買いたい。

個人的に、印象に残っているのは『道程』と『ストロベリーチェリーナイト』。『道程』は、スーパーマーケットでお菓子を万引きした学生が、店員に連れられて向かったバックヤードへと向かうのだが、その異常に長い道のりを描いたコントである。淡々と舞台を歩き回る二人に色々な効果音が付け足され、こちらの好奇心を適度に刺激してくれる。オチの無茶苦茶なのに妙にしっくりくる塩梅も素晴らしい。対して『ストロベリーチェリーナイト』は、人生初のセックスを経験して浮かれている男の元へ童貞の化身がやってくるコントである。下世話の極致ともいえるような設定なのに、妙に感動的なオチで締めくくる……と思っていたところで、更に意外な展開がやってくるところが見事。あのオチは読めなかった。

ちなみに、彼らが「キングオブコント」決勝のステージで披露した、二本のコントはそれぞれ未収録(『ビフォーアフター』と『サイコメトリー』)。但し、2018年大会の二本目で披露する予定だったコント『エレベーターピッチ』は収録されている。最上階にある社長室へと向かうエレベーターを待っている間だけ、出資のためのプレゼンを許されたサラリーマンに思わぬ困難が待ち受ける。的確に笑いどころを作り込んでいるあたりに、本気で勝ちを狙いに来たことを感じさせる逸品だ。

これらの本編に加え、特典映像としてライブ終了後のエンドトークを収録。ライブ中に起きたことを二人がさらっと振り返っている。あのコントのあのシーンに謎のスローモーショーン編集が……!

・本編【71分】
「相方」「合格」「進路相談ミュージカル」「暗闇面接」「ショットガンの女」「道程」「ストロベリーチェリーナイト」「ワーク・オブ・ザ・デッド」「エレベーターピッチ」「バーにて」

・特典映像【2分】
「エンドトーク

『ニッチェ「プリンアラモード」』(2019年4月24日)

プリンアラモード [DVD]

プリンアラモード [DVD]

 

マセキユース所属の女性コンビ、ニッチェの代表作をスタジオ収録したベスト盤。彼女たちが単独名義でDVDをリリースするのは、2013年8月に発売された『ニッチェ第2回単独ライブ「アイスキャンデー」』以来、およそ六年ぶり。本作には、それ以降に演じられた十本のネタが収められている。

当時のニッチェは、お遊戯で本意気の演技を見せつける幼稚園児……のような、江上の過剰な演技の持つ可笑しみを引き出せるように特化したコントを主に演じていた。だが、本編では、その演技力の可笑しみを面白味のある設定にしっかりと絡めたコントが演じられている。その姿勢には、既存の芸風に捉われず、更なる一歩を踏み出そうという意欲が感じられる……が、その結果として、既存のコント師を思わせる芸風になってしまっている。正直なところ、本末転倒の感が否めない。

例えば、身分を隠した敏腕女社長が新人社員の振りをして末端で働いていた事実を現場での上司に明かす『女社長』は、そのドラマのような切り口と二人のちぐはぐとした関係性が、東京03のコントを彷彿とさせる。女社長を角田、上司を飯塚が演じても、そのまま成立してしまえるだろう。本日開店のカフェに強盗が入ったために、店員がやさぐれた対応を取ってしまう『カフェ』はバイきんぐを思わせる。……そもそも似たような設定のコントをやっていたように思う。そして、いずれのコントにおいても、ニッチェは彼らの芸風に太刀打ちできていない。

彼らは基本的に自らの個性をしっかりと把握し、そのキャラクターをコントの世界に乗せている。だが、ニッチェの場合、二人が台本を上手く乗りこなせていない。台本が身の丈に合っていないのである。無論、ニッチェは実力派のコント師だ。その演技力から生み出される笑いは、一定のラインを超えている。だが、ニッチェの実力を思うと、より高いレベルのものを期待したくなる。少なくとも、当時の彼女たちには、それを感じさせるような将来性があった。

そんな中、彼女たちの魅力とバシッと噛み合っているように感じたネタが、「彼氏のお母さんが忍者」という設定だけで最後まで押し切っている『彼氏のお母さん』と、父親を失った娘たちが遺産を巡ってドロドロの骨肉の争いを繰り広げる『遺産相続』。シリアスとバカバカしさのバランスの良さに加え、江上の猛烈なキャラクター、それを受け止める近藤の癖の無さが絶妙だ。とはいえ、これもまだ彼女たちの魅力を発揮しきれていないように思う。更なる一歩へ踏み込むための核となる要素が、欲しい。

(個人的には、前述の『アイスキャンデー』でやっていたコント『ケイコちゃんとクミコおねいちゃん』における、スポブラとブラジャーの感覚の差異を切り取る視点は、女性ならではの着眼点で非常に興味深いと思っていたのだが、そういう類いのコントはもうやらないのだろうか。本編でいえば『偏見』がそうなのかもしれないが、あれは少し弱い気もするし……)

・本編【56分】
「彼氏のお母さん」「女社長」「検尿」「偏見」「友達の妹」「漫才(女優江上の演技力)」「遺産相続」「やる男先輩」「逃げてきた花嫁」「カフェ」

「キングオブコント2019」(2019年9月21日)

・総合司会
浜田雅功ダウンタウン
葵わかな

・審査員
設楽統(バナナマン
日村勇紀バナナマン
三村マサカズ(さまぁ~ず)
大竹一樹(さまぁ~ず)
松本人志ダウンタウン

・大会アンバサダー
小峠英二(バイきんぐ)
西村瑞樹(バイきんぐ)

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