令和時代のお笑い公論

心が腐る、その前に。

『ニッチェ「プリンアラモード」』(2019年4月24日)

プリンアラモード [DVD]

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マセキユース所属の女性コンビ、ニッチェの代表作をスタジオ収録したベスト盤。彼女たちが単独名義でDVDをリリースするのは、2013年8月に発売された『ニッチェ第2回単独ライブ「アイスキャンデー」』以来、およそ六年ぶり。本作には、それ以降に演じられた十本のネタが収められている。

当時のニッチェは、お遊戯で本意気の演技を見せつける幼稚園児……のような、江上の過剰な演技の持つ可笑しみを引き出せるように特化したコントを主に演じていた。だが、本編では、その演技力の可笑しみを面白味のある設定にしっかりと絡めたコントが演じられている。その姿勢には、既存の芸風に捉われず、更なる一歩を踏み出そうという意欲が感じられる……が、その結果として、既存のコント師を思わせる芸風になってしまっている。正直なところ、本末転倒の感が否めない。

例えば、身分を隠した敏腕女社長が新人社員の振りをして末端で働いていた事実を現場での上司に明かす『女社長』は、そのドラマのような切り口と二人のちぐはぐとした関係性が、東京03のコントを彷彿とさせる。女社長を角田、上司を飯塚が演じても、そのまま成立してしまえるだろう。本日開店のカフェに強盗が入ったために、店員がやさぐれた対応を取ってしまう『カフェ』はバイきんぐを思わせる。……そもそも似たような設定のコントをやっていたように思う。そして、いずれのコントにおいても、ニッチェは彼らの芸風に太刀打ちできていない。

彼らは基本的に自らの個性をしっかりと把握し、そのキャラクターをコントの世界に乗せている。だが、ニッチェの場合、二人が台本を上手く乗りこなせていない。台本が身の丈に合っていないのである。無論、ニッチェは実力派のコント師だ。その演技力から生み出される笑いは、一定のラインを超えている。だが、ニッチェの実力を思うと、より高いレベルのものを期待したくなる。少なくとも、当時の彼女たちには、それを感じさせるような将来性があった。

そんな中、彼女たちの魅力とバシッと噛み合っているように感じたネタが、「彼氏のお母さんが忍者」という設定だけで最後まで押し切っている『彼氏のお母さん』と、父親を失った娘たちが遺産を巡ってドロドロの骨肉の争いを繰り広げる『遺産相続』。シリアスとバカバカしさのバランスの良さに加え、江上の猛烈なキャラクター、それを受け止める近藤の癖の無さが絶妙だ。とはいえ、これもまだ彼女たちの魅力を発揮しきれていないように思う。更なる一歩へ踏み込むための核となる要素が、欲しい。

(個人的には、前述の『アイスキャンデー』でやっていたコント『ケイコちゃんとクミコおねいちゃん』における、スポブラとブラジャーの感覚の差異を切り取る視点は、女性ならではの着眼点で非常に興味深いと思っていたのだが、そういう類いのコントはもうやらないのだろうか。本編でいえば『偏見』がそうなのかもしれないが、あれは少し弱い気もするし……)

・本編【56分】
「彼氏のお母さん」「女社長」「検尿」「偏見」「友達の妹」「漫才(女優江上の演技力)」「遺産相続」「やる男先輩」「逃げてきた花嫁」「カフェ」