令和元年の視聴覚室

平静を装いながら突き進め。

「山里亮太の140 高知公演」(2019年6月1日)

今年もまた山里亮太が高知にやってくる。

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昨年の六月、友人夫婦とともに鑑賞した「山里亮太の140」が今年も高知県で開催されるというので、今回も観に行くこととなった。当時の会場は高知市にある【高知県立県民文化ホール】(500席)だったが、今回の会場は【須崎市立市民文化会館】(964席)。須崎市といえば、つい先日、ゆるキャラ絡みの騒動を巻き起こした町として知られている。恐らくは何の意図も含みも無かったのだろうが、結果として胡散臭い煙の立つ場所を嗅ぎ付けてしまうところに、山里亮太の異常な嗅覚の鋭さに感じ入らざるを得ない。

会場も変わればメンバーも変わる。先述した通り、前回の公演は友人夫婦とともに鑑賞したのだが、今回はなんと母と鑑賞することになってしまった。実は母は山里亮太のことが大好きで、私が友人夫婦とともに彼のトークライブを鑑賞したことも羨ましいと思っていたらしい。母がマイケル・ジャクソンやクィーンのファンだったことは知っていたが、ある意味、それらのポップスターとは真逆の存在である山里亮太のことをそれほど好んでいたとは知らなかった。……尤も、母がどれほど山里亮太の本質を認識しているのかは、私もよく分からないのだが。あのワルい山里の面白さを理解することが出来るのか、些か心配ではあった。

ライブ当日の六月一日、午前十時半ごろに自宅を出発する。移動手段はお馴染みの愛車。一度は高知まで電車で移動したみたい気持ちもあるのだが、なかなか踏み出せない。山中を駆け抜ける電車から見える景色はきっと素晴らしいだろう。最寄りのインターチェンジから高知県須崎市に在る道の駅“かわうその里すさき”へと向かう。移動時間はおよそ一時間半。長いといえば長く、短いといえば短い。据わりの悪い長さだが、道中における母との雑談は思っていたよりも白熱し、さして長さを感じることはなかった。

正午を過ぎたころ、最初の目的地である“かわうその里すさき”に到着。すっかり空っぽになってしまった胃袋を満たすべく、二階の“レストランとれた亭”に駆け込む。名前のセンスは荒々しいが、注文した鍋焼きラーメンちりめんセット(1,200円)はとても美味しかった。まさかラーメンの中に牛モツが入っていようとは……。

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食後、一階のお土産物のコーナーを物色し、手ぬぐいタオルを二本ほど購入する。それぞれラムネとかき氷をテーマにしたデザインで、鮮やかな青からは涼しげな印象を与えられる。これからの季節に最適といえるだろう。

午後一時ごろ、かわうその里すさきを出発。そのまま何処にも立ち寄ることなく、トークライブの会場である須崎市立市民文化会館へと向かう。時間的な余裕は十二分にあったのだが、どれほどの規模の駐車場が設備されているのか分からなかったので、早めに到着しておこうと判断した次第である。ナビの指示通りに車を走らせて、出発からおよそ十分後に到着。驚くべきことに、開演時刻までまだ一時間以上も余裕があるにもかかわらず、既に駐車場にはみっちりと車が詰め込まれていた。その中で、まだ辛うじて空いていたスペースを見つけ出し、無事に停車。もしも開演直前にやってきていたとしたら、駐車場を求めて近辺を探索する羽目になっていただろう。

周辺の車を見ると、車内に留まっている人がやけに多い。近隣に退屈を凌げるような施設が存在しないのだろう。とはいえ、見知らぬ土地に身を置きながら、車内でじっと時計の針が開場時刻である午後二時を差すのを待ち続けるというのも、あまりに芸がない。そこで、ひとまず車を降りて、会場へと向かうことに。会場そのものは駐車場の目の前に建っているのだが、間に土讃線の線路が引かれているため、わざわざ遠回りをする必要がある。どうも利便性が良くない。回り道をして、会場の中へ突入する。すると、目の前にはロビーのような狭い空間があり、そこで沢山の人たちが雑談を交わし合っていた。まさしく吹き溜まりである。恐らくは、彼らの多くが山里亮太トークライブを目的に集まり、その開場時刻を今か今かと待ち構えているのだろう。

これからライブが行われる大ホールへと通じる入口は封鎖されていたので、それ以外の施設で時間を潰すことに……したのは良いのだが、とにもかくにも何もない。テレビもなければ図書館の類もない。辛うじて、大会議室という空間で雑貨バーゲンが行われていたので、そこで売られているものを物色してみたのだが、それでもまだまだ開場時刻はやってこない。何処かのなんとかいうお店の閉店セールを兼ねていたためか、売られている品物はやたらめったに安かったのだが、こんなところで要らないサングラスや双眼鏡やアウトドアチェアを購入しても仕方がない。荷物が増えるだけだ。ただ、ひたすらに、開場時刻を待ち続ける。

午後一時四十分ごろ、予定よりも早めに開場。その頃には、ロビーに集まる人の数が随分と増えていたので、このまま窮屈な場所に客を押し込んだままにしておくのは申し訳ないという判断だろう。有難い。チケットをもぎってもらい、大ホールのある二階へと通じる階段を上がると、そこにもロビーのような広々とした空間が存在していた。その一角に長机が設置され、そこで山里の近著が売られていた。『天才はあきらめた』と『あのコの夢を見たんです。』である。サイン本であるという。

天才はあきらめた (朝日文庫)

天才はあきらめた (朝日文庫)

 

どちらも持っていなかったので、一冊ずつ購入する。いずれかの本を持参していると、公演後の撮影会に参加できるとの触れ込みであった。性根がミーハーな私には非常に有難い話なのだが、前回のライブの公演時間が二時間四十分だったことを思うと、その後から始められる撮影会への参加を希望する観客たちの列に参加できるほどの体力が残されているのか、些か不安も感じていた。

購入した本を片手にホール内へ。洒脱ではないが古びてもいない、きちんと落ち着いた雰囲気の漂う客席がとても良い。舞台のモニターには、海外のオシャレな街を歩いている山里亮太のイラストが映し出されている。誰だお前は。全席指定である。私の席は一階の八列目にあった。端っこではないが真ん中でもない、丁度良い席である。そこに座り、後はじっくりと開演時刻を待つ。待っている最中、母に「スマホの電源は切るの?」と聞かれる。「そりゃ切るよ」と返すと「飛行機モードでもいい?」と更に返される。「いや、アラームが作動する可能性もあるし、切った方がいいよ」と説明すると、ようやく電源を切る準備を始めた。舞台観賞に慣れていないと、そういう認識になってしまうものなのだろうか?

午後二時、開演。

モニターにカウントダウンを告げる映像が映し出される。カウントされると同時に、様々なタッチで描かれた山里亮太のイラストが飛び出していく。幾つかのイラストには見覚えがある。過去にTwitterアイコンに使われていたイラストだろうか。カウントがゼロになると、彼のホームグラウンドである冠番組南海キャンディーズ 山里亮太の不毛な議論』のオープニングテーマが流れ始める。SUEMITSU & THE SUEMITSUの『Soul Accident』だ。元来、テレビドラマのために作られた曲だが、今やすっかり山里亮太のテーマとなっている。曲が盛り上がってきたところで、山里が客席後方の入り口から登場。パリッと決めたスーツ姿で、観客たちの合間をゆっくりと降りてくる。その姿はまさしくスターそのものだ。丁度、私の席から手の届く距離だったので、山里が近付いてきたときにそっと手を伸ばしてみた。一瞬、触れた。とてつもなく冷たかった。

そしてゆっくりと舞台に上がってきた山里。ご満悦の表情だ。軽い挨拶を済ませ、まずはライブの趣旨を説明……するよりも先に、彼の高知県に対する思い入れの深さを語り始める。前回の公演でも高知に対する思いを語っていたが、「今年に入って六度目の高知」と聞いたときには、流石に耳を疑った。単純計算すると、月に一度のペースで高知を訪れていることになる。どれほど高知を愛しているのか。前回と同様、今回も高知には前日入り。市場で呑み、高知の空気を実感して、本日に至ったのだという。私は別に高知県民ではないが、高知に対しては思い入れがあるので、こういう話を聞かされるととても嬉しい。

そして、話はライブの趣旨へ……至る前に、地方で仕入れたとある情報について……話していた筈なのだが……何故か記憶が……他にも何か話していたが……何の話をしていたか……思い出せない。そういえば、オープニングトークで山里が「皆さんはあそこの出口を出た瞬間に全ての記憶を失う魔法にかけられている」と話していたような気がする。さては、このあやふやな記憶も、その魔法によるものか。魔法……魔法と夢……何かを思い出しそうな気がしたが、やはり思い出せない。ただ、普段から山里が書き残している地獄のメモ帳を公開していたような記憶がある。内容はまったく覚えていないが、なかなかにとんでもない話をしていたような気がする。

気が付くとライブは終了。時刻を確認すると、既に午後五時二十分を回っていた。およそ三時間にも及ぶ白熱したトークライブだった、ということなのだろう。内容をまるで覚えていないが。母も笑っていたような気がする。内容はまるで覚えていないが。

ホールからロビーに出ると、ちょうど撮影会の参加者が並ばされ始めていたところだったので、慌てて後ろに並ぶ。四人で横並びになった、太めの列だ。幸い、前から五列目ほどのところに入り込むことが出来た。列の先には簡単な仕切りが作られている。恐らくは、あの裏で撮影してもらえるのだろう。カバンの中から本を取り出し、スマホのカメラアプリを起動させ、じっと待つ。しばらくして、後ろを振り返ると、そこにはとんでもない人数が列を成していた。早めに並んでおいて良かった。

再び、前を向いて待ち続けていると、後ろの方がザワザワとどよめき始める。振り返ってみると、そこにはスタッフに案内されながら、ファンへと慈愛の目を向ける山里の姿が。やはりスターにしか見えない。案の定、山里は仕切りの裏に入った。そして列が動き始める。やがて自分の番がくる。仕切りの裏に入ると、そこには先程まで舞台上で何かを喋っていた山里亮太が。スタッフにスマホを渡して、ツーショットを撮ってもらう。その際、言わなくてもいいのに、ついつい「リトルトゥース(※『オードリーのオールナイトニッポン』リスナーの通称)です」と言ってしまい、「ありゃー」とリアクションしていただく。はぁ、有難い。私の後には母が撮影してもらっていた。「アレの母です」と言っていた。親子して言わなくていいことを言っている。血筋か。

目的を果たした我々は、すぐさま車に乗り込んで、本日の宿“ホテルタウン錦川”がある高知市へと移動する。およそ一時間かけて、午後六時四十五分ごろにホテルと提携している駐車場へ到着。荷物を下ろし、ホテルまで徒歩で移動して、午後六時五十分ごろチェックイン。早めに予約しておいたからだとはいえ、ビジネスホテルで一泊3,400円という金額は破格である。少し体を休ませたところで、ホテルを出て夜の街へと繰り出す。目指すは無論、山里もライブ前日に訪れていたという“ひろめ市場”である。

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しかし、時刻が午後七時という最繁時ということもあって、座れる席が何処にもない(ひろめ市場は様々な店が屋台のように連なった商店街で、適当な席に座って各店舗から酒や料理を調達するという酔いどれ版フードコートとでも呼ぶべきシステムを取っている)。しばらく中を歩いてみたが、まったく空く様子が見られなかったので、ひとまず外の店で軽めに呑むことに。そこで向かったのは、前回も訪れた“土佐のいごっそう 亀次”である。鰹のタタキで知られる明神丸の姉妹店で、味は確かなのだが、いつも空いている。人気がないのだろうか。心配だ。この日も鰹のタタキを注文、塩で頂いたところ、大変に美味しかった。その他、土佐巻(鰹のタタキの巻き寿司)、四万十鶏の唐揚げなどを、ハイボール片手に頂く。

三十分ほど経ったところで店を出て、再度ひろめ市場へ。すると、入口から入ってすぐのところにあるテーブルが、まさに空いたばかりの状態になっている。なんという好機。すぐさま二人で席を陣取り、すぐ近くの店舗“本池澤”で酒を注文する。つまみは“吉岡精肉店”の唐揚げである。山賊風味、バジル風味、カレー風味と多種多様な味付けの唐揚げがとても美味しい。しかし、屋外では落ち着いて呑めないためなのか、なかなか酔えない。仕方がないので適当に切り上げる。最後に、ひろめ市場の入り口にあるラーメン屋“神”でシメに黒こげラーメンを食べる。美味しかった。

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午後九時四十分、ホテルに戻る。翌日のスケジュールを考慮して、すぐさま風呂に入って床に就く……つもりだったのだが、うっかり無料公開されている『ワンパンマン』を読みふけってしまい、ついつい夜更かししてしまう。

午前三時ごろ就寝。

明けて六月二日、午前八時半ごろ起床。

身支度を済ませて、午前九時半ごろチェックアウト。外は雨。車に乗り込みながら、母と「昨日が雨じゃなくて良かったね」と話し合う。そのまま南国へ向かい、うなぎ料理の店として名高い“かいだ屋”へ。開店時刻は午前十一時だが、店舗には一時間前の午前十時に到着。なにせ待たされるということなので、早めに来る必要性があるのだ。ここで番号が書かれた伝票を受け取る。番号順に料理が出すことで、注文の流れを平等にしようという算段なのだろう。そのまま車内に戻り、そこで一時間待ち続ける。午前十一時、予定通りに店が開く。適当な席に座り、うな重の特上を注文。4,630円。なかなかの金額だ。四十五分後、料理が届く。食べる。サクサクとしていて、それでいてジューシーな鰻の身がたまらなく美味しい。

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食後、三十分ほどかけて、“道の駅南国 風良里”へ移動。お土産物を購入する。また、個人的に、ご飯に載せると美味しそうなアイテムを幾つか買い求める。これでまた食生活が豊かになりそうだ。

午後二時半、帰宅。お疲れさまでした。